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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 00:35:45.12 ID:ISLZlb1Q0


勇者「ついにここまで来た……魔王!今日がお前の命日だ!!」

勇者「この海の向こうにある孤島が魔王城みたいだ。場所を特定するのに大分時間がかかってしまったな」

勇者「迷いの森を抜ける途中で仲間とはぐれてしまったが……いつ合流できるかもわからない、魔王城で会えることを期待しよう」

勇者「よしっ!!魔王城に乗り込むぞ!!」


勇者「くっ!なんておぞましい妖気なんだ!こんな恐ろしい城は見たことがない。さすがは魔を統べる者の住まう地か」

勇者「ん、結界が張ってあるな?しかしこんなもの、勇者の力をもってすれば」


パキンッ


勇者「造作もな……

??「あ、魔王様ー。勇者来たみたいですよー」

勇者「!? ど、どこからともなく声が!?」

??「やっぱり勇者は結界とけちゃうみたいだねー、いま迎えに行くからそこで待っててね」

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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 00:38:17.03 ID:ISLZlb1Q0


勇者「なっ……貴様は何者だ!?なれなれしい口をきくな!」

魔女「どーも魔女です。魔王様お待ちなんでさっさと大広間に転移魔法しちゃお!」

勇者「は……はあ!?」

ヒュン

勇者「うわ!」

魔女「連れてきましたよー魔王様ー」

勇者「ま……魔王!!俺は貴様を倒しにきた、勇者だ!
   貴様に苦しめられてきた人々のために、今日俺はお前を討つ!!覚悟しろ!!」

勇者「……?おい、魔王の姿が見えないが……?」

幼女「ここにおろう」

勇者「…………?」

幼女「待ちくたびれたぞ勇者。ようこそ我が城へ」

勇者「……?」

 

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3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 00:39:33.49 ID:ISLZlb1Q0



幼女「いつまでそこに立っているつもりかな?一緒に夕食を食べながらいろいろ話をしようではないか」

魔女「村でとれた新鮮野菜をふんだんに使ったご飯も用意してあるよー!ほらほらおいしそうでしょ?」

竜人「ああっ!!もういらっしゃってます!?勇者さんこんにちは、いまエプロンはずしてきますんでね!」

幼女「早くしろ、勇者くんがお腹をすかしてるだろう」

竜人「すいません魔王様!!ただいま!!」


勇者「……え、ちょっと待ってくれ。そこの君」

幼女「なにかな」

勇者「どうして子どもがこんなところにいるんだ!?ここは魔王城だぞ!!危ないからさっさと逃げなさい!俺が使った舟があるから!」

幼女「どうして逃げる必要がある?ここは私の城だ」

勇者「うそつくんじゃない!どっからどう見ても村の子どもだろうが!」

幼女「私は子どもではないぞ、魔王だ」

勇者「はあああああああっ!?」

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4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 00:41:13.37 ID:ISLZlb1Q0



勇者「そんなはずない。魔王は禍々しい緋色の邪眼に、同じ色の翼を背中に生やして、どんな魔法も使いこなすと言う……」

勇者「その顔には邪悪な笑みが浮かんでおり、好物は処女の子宮だとか」

魔王「そんなグロイもん、生まれてこの方口にしたことがない」

魔王「それに一応瞳は赤いだろう」

勇者「だが、翼がないじゃないか!」

魔王「生やすこともできるが……」バササッ

勇者「うおっ」

竜人「あああーーー!!もう魔王様!!また洋服の背中側だめにしてっ!!繕うのはだれだと思ってるんです!?私ですよ!」

魔王「すまん。……こうなるので普段はしまってるんだ」

勇者「魔王らしくねえなあ……」

 

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5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 00:52:03.56 ID:ISLZlb1Q0



魔王「魔法も使えるぞ。ちょう上手だぞ。ほんとだぞ」

魔女「魔王様はほんとに魔法が上手だよー!」

竜人「ええ、ほんとうに」

魔王「ふふん」

勇者「信用できねえ……。じゃあ横のお前らは何者なんだ!?お前らも見たところ人に見えるが」

魔女「えっとー、二天王の魔女と竜人だよ」

勇者「二天王って。初めて聞いたぞ」

竜人「あと二人はいま求人広告だして募集中なんですよ。なかなか採用条件にあった魔族がいなくてですね」

勇者「四天王ってそうやって募ってたのかよ。もういい、分かった。お前らが魔王と側近だということは認めよう」ジャキ

勇者「勝負だ、魔王!さあ剣をとれ!」

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6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 00:52:42.57 ID:ISLZlb1Q0



魔王「私は勇者くんと争うつもりはないのだが。今日は夕食に招いただけだし」

勇者「戯言を。俺はお前を倒すためだけに旅をしてきたんだ」

竜人「せっかくご飯作ったのに冷めちゃいますよ」

魔女「私さき食べてていい?」

勇者「お前ら二人は黙ってろ!!さあ勝負だ、魔王!!!」

魔王「……はあ、分かった」

魔王「好きにしろ」

勇者「……何故剣を構えない。むしろ両腕を広げて、それでは切ってくれと言ってるようなもんじゃないか」

魔王「勇者くんなら私を斬らないと信じている」

勇者「なに……!?舐められたものだ……見くびるな!!」

バッ!

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7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 00:54:51.53 ID:ISLZlb1Q0


勇者「……」

魔王「……」

竜人「……」ハラハラ

魔女「……」モグモグ

魔王「どうした、あと一寸動かせば私の額を割れるぞ」

勇者「……くっ、俺は無抵抗な女子供を殺す趣味はない」

魔王「魔王だとしても?」

勇者「……」ギリギリ

魔王「ふふふ、やっぱり聞いていた通りだよ。外見に惑わされるなんてやっぱり君は優しいな」

勇者「なんだと……!?」

魔王「貶したつもりはない。だから私は勇者くんとじっくり話してみたかったのだ。さあ剣をおさめて席につけ。夕食にしよう」

勇者「……少しでも不審な動きをしたら斬るからな」

魔王「かまわんぞ」

 

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8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 00:56:55.80 ID:ISLZlb1Q0



魔女「あ 終わった?先に食べちゃってるよー、てか勇者の剣ちょうピカピカだね!すげえ!聖剣ってやつ?」

竜人「こら魔女、食べながらしゃべらない。あと魔王様、袖がスープに浸りそうですよ、気をつけてください」

魔王「分かってる」

勇者(なんだこれ……なんだこれ……。あ、うまい)

勇者「……ハッ!まさか……この肉、人肉だったり…!?」

竜人「いまどき人肉なんて魔族でも食べませんよ。それは牛です、牛」

魔女「ていうかやっぱまだそういうイメージあるんだ?ヤダー」

勇者「お前らほんと魔族っぽくないな…」

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9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 00:58:06.29 ID:ISLZlb1Q0



魔王「ところで勇者くんよ、たった一人で魔王城に来たのか?」

勇者「ああ。仲間とはその手前の森ではぐれたんだ」

魔女「あの森は絶対に魔王城に辿りつけないように魔王様が魔法をかけてあるからねー、そんじょそこらの人間じゃ辿りつけないよ」

魔王「ちなみに勇者くんがといた結界もそうだぞ。あれを外側からといたのは君が初めてだ」

勇者「じゃあ俺の仲間たちは絶対ここに辿りつけないじゃないか。まさかそれが狙いか!?」

魔王「別にそんな魂胆はなかったが、まあいい。とりあえず勇者くんひとりに話したいことがあるのだ」

勇者「話したいこと……?」

魔王「うむ」

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10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:01:34.30 ID:ISLZlb1Q0



魔王「君はきっと人間の王に、なんて命を受けたんだ?」

勇者「魔王の居場所を突き止めて、討つこと。そしてお前の悪逆非道を止めることだ」

魔王「なるほど。でももうひとつあるんじゃないかな?」

魔王「例えば魔族の殲滅とか」

勇者「…ああそうだ。100年前の戦争で生き残った魔族を、今度こそ殲滅するようにと」

魔王「うん、そうだろうな。で、お願いがあるんだ」


魔王「見逃してほしい」


勇者「……はあ?」

 

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11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:02:31.21 ID:ISLZlb1Q0



魔王「見逃してほしいんだ。ここに魔王城があって、魔族の生き残りが住んでいることを、誰にも公表しないでほしい。勿論、人の王にも」

勇者「な、なに言ってるんだよ?俺は勇者でお前は魔王だ。そんなことできるわけないだろ」

魔王「私たちが別に人たちに敵意はもってないし、再び戦争を始めようとか復讐しようとか考えてるわけじゃない」

魔王「ただひっそりと、この地で暮らしたいだけなんだ」

魔女「てか100年前の戦争でほとんど魔族死んじゃってさー、ぶっちゃけ今生きてるのなんて残りかすみたいなもんなわけ」

竜人「戦争を仕掛けようにも世界征服しようにも、戦力的に月とミジンコみたいな差がありますからね」

魔王「そういうことだ。私たちは人に見つからないよう、様々な魔法をかけてここで暮らしていた。
   事実勇者くんが来るまでここの居場所は誰にも知られていなかった」

勇者「確かに……突き止めるのに苦労した」

魔女「まあたまに海で遭難した人とか流れ着いてくるけどね。それは例外ってやつだね」

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12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:04:59.18 ID:ISLZlb1Q0



魔王「というわけで私たちに害はない。だからここで戦うのも、自国に戻って王にこの居場所を報告するのもやめてほしい」

勇者「勝手なことを!!魔王の言うことなど信用できるか!!
   いまは戦力がなくとも、10年後100年後にどうなってるか分からない!
   ここでお前を見逃したら、いつかきっとまた人類は蹂躙される。そんなこと許すわけにはいかない!!」

竜人「まあまあ落ち着いて……」

魔女「勇者こわーい」

勇者「なんの非もない人々が家を焼かれたり、食い物にされたり、ひどい有様だったと聞く。そんな非道を平気で行う魔族を、先代勇者が打ち砕いたのだ。
   そして世界に光が戻った。また絶望の闇の中に落とすわけにはいかない。
   ここで魔王を殺す、それが俺の勇者としての役割だ」

魔王「先代魔王がしたことは謝ろう。でも私たちは全く別の意志をもった魔族だと思ってほしい」

勇者「信じられるわけあるか!」

魔王「……分かった。じゃあ一日だけ時間をくれるか?勇者くんよ」

勇者「なにをするつもりだ……?」

魔王「明日私たちの村を案内しよう。勇者くんは海を渡ってすぐ城に着いたから、魔族たちの生活している様子を見てないだろう」

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13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:05:52.95 ID:ISLZlb1Q0


勇者「そんなもの見て何になる」

魔王「まあそうカリカリしないで、ところで夕食は口にあったかな」

勇者「……まあまあ」

魔王「それはよかった。では竜人、勇者くんを部屋に案内してさしあげろ」

竜人「はい。魔王様、食後はしっかり歯磨きするんですよ。八重歯は念入りに」

魔王「わかったわかったから。早く」

竜人「それに昨日みたくご飯の後にお菓子も食べちゃだめですよ?こっそりベッドに持ち込んだりして、虫歯になっても知りませんからね!」

魔王「それ以上勇者くんの前で私の威厳を貶めないでくれ。早く行くんだ」

勇者(魔王って……魔王ってなんだろう……)

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14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:07:21.96 ID:ISLZlb1Q0


竜人「はい、こちらが勇者様のお部屋ですよ。何かあったらこちらのベルを鳴らしてくださいね、すぐ参りますから」

勇者「やたらと豪華だな。なんというか敵にこんな待遇を受けて複雑な心境だ」

竜人「私たちは敵だって思ってませんからね。魔王様も、勇者様に会えることを本当に楽しみにしてたんですよ」

勇者「魔王があんな幼い少女の姿をしていたなんて、誰が思いつくだろう」

竜人「ええ本当に少女らしく、毎日結界の様子を見てはため息をついたりして。
   あ、でも言っときますけど手をだしたら承知しませんよこのロリコン野郎
   戦力の比とか関係なく人類に喧嘩売りますからね、魔王様にちょっかいかけたら」

勇者「誰も手なんかださねーよ。なに言いだしてんだよお前」

竜人「いえ私としたことが……ではおやすみなさい」ニコニコ

勇者「なんなんだ…」

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15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:09:45.29 ID:ISLZlb1Q0



魔王「……」

魔女「さすがにすぐ承諾しないねー、勇者」

魔王「まあ予想していたことだ。でも私は信じている。勇者くんは公正に物事を見れる人だと」

魔女「でも所詮人間なんだよ?魔族と人間の歴史が人間社会でどんな風に語り継がれてるか、魔王様も知ってるじゃん?」

魔王「確かに偏見と先入観は取り除くのが難しい。種を越えて歩み寄ることも」

魔女「なにも勇者に全部話さなくても、魔王様が催眠魔法かけちゃえば一発じゃないのー?」

魔王「……私は勇者くんがこの城に辿りついたことは、チャンスなんじゃないだろうかと思ってる」

魔女「チャンス?いやいや魔族のピンチじゃ?」

魔王「人と魔族共存の第一歩に、なりえないだろうかと。勇者くんがその懸け橋に……もしなってくれれば。
   魔族のみんなもこの狭い島からでて、広い世界を見ることができる」

魔王「この島で生まれた子どもたちは、この島の景色しか知らないんだ。それが不憫でならない。
   世界の広さを知らずにこの島で生まれ死んでいく。そんな生を強いてしまっているんだ。それで本当にいいのだろうか…」

魔女「うーん」

 

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16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:10:37.17 ID:ISLZlb1Q0



魔女「魔王様はそんなに色々みんなのことを考えてくれてたんだねー
   まあそりゃちょっとは外に出たいって考えてるのもいると思うけどさ
   結構みんなこの島気にいってるよ?魔王様のこともね」

魔女「魔王様今日もかわいーって、いつもありがとーってみんな言ってるし」

魔王「……そうか。ありがとう。……」

魔女「顔真っ赤で照れてる魔王様かわいーっ!もうギューってしちゃおしちゃお!!」

魔王「やめろ。くるし……苦しい。胸を押し当てるな苦しい」

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17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:11:31.38 ID:ISLZlb1Q0


魔王「……ん。そういえば勇者くんの仲間が森にまだいるのだった」

魔女「ああ、そうだね」

魔王「ええと……いま西の方にいるみたいだ。魔女、迎えに行ってもらえるか?そのまま部屋に案内してくれ。明日私が挨拶しに行こう」

魔女「了解。じゃあ行ってくるねー」

魔王「頼むぞ」

 

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18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:12:43.81 ID:ISLZlb1Q0



勇者「なんだかんだで飯も食って夜もここに泊まることになってしまった」

勇者「まさか飯に毒入ってたりしないよな?魔王ならそんな姑息な手使わないか。
  こっちは闘うつもりで気合入れてきたのに拍子抜けというか、なんというか」

勇者「街での言い伝えや王の話とは全く異なる魔王で、正直混乱している。
   でも俺勇者なんだぞ?魔王と仲良しこよしってわけにもいかないだろ」

勇者「……とりあえず、寝るか」


バタンッ


神官「勇者様!ご無事だったんですね…!」

戦士「おお、安心したわ」

勇者「神官、戦士!お前らも無事だったのか!よかった」

神官「はい。森で勇者様とはぐれてからずっとさ迷っていたのですが。
   先ほど魔女と名乗る女性がこちらに案内してくれて……
   ええと。ここって、本当に魔王城なんですか?」

勇者「そうらしい。俺もちょっと状況がよくわからない」

戦士「魔族とはああいう生き物なのか?予想よりフレンドリーで人間に近いような」

勇者「うん…」

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19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:13:47.57 ID:ISLZlb1Q0


勇者「旅の途中で全然魔族に出会わないから不思議だったんだけど、どうやら今生き残ってる魔族はこの島に住んでるそうだ」

戦士「ならば、王の勅命を遂行するには好都合だろうな。……しかし…」

神官「あんまり恐ろしい人たちには見えなかったんですけど。私はもっと魔族って怖くて言葉も通じない生き物だと思ってて」

勇者「俺もだよ。というかそんな風に聞いて育ってきたしな。
   とりあえず、明日魔王が魔族の村を案内してくれるそうだ。そこで自分たちの目で、魔族は殲滅するべきなのか否かを判断してほしいと」

戦士「ま、魔王に会ったのか!?」

神官「あ、あああの目も翼も血のように赤くて、視線一つで気にいらない者を殺すといわれる、魔王に!?」

勇者「えっと……あー、うん。明日会えば分かると思うぞ…」

 

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20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:14:31.00 ID:ISLZlb1Q0


翌日

神官「この先に……魔王が……!」

戦士「一応いつでも剣をとれるようにしておこう…」

勇者「あんまり身構えてると拍子抜けしてすっ転ぶぞ……じゃあ扉開けるな」


魔女「あ、おっはよーん」

竜王「おはようございます。よく眠れました?」

神官「……ッ!」ゴク

戦士「……」ゴクリ

魔王「ふわぁ~ ああ……おはよう。ふわ…」

戦士・神官「……?」キョトン

勇者「この子どもが魔王だぞ」

戦士・神官「えっ!?」

 

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21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:16:05.19 ID:ISLZlb1Q0



魔王「だから子どもと呼ぶなぁ……魔族の血のせいで成長は遅いが、私も勇者くんと同じ年くらいだぞぉ…
   ああ、それにしても眠い。いつも言ってるが、朝食の時間が少し早いのでは?竜人」

魔女「あたしもそう思う!まだ眠いし~」

竜人「なにを言ってるんですかっ!これでも私にとっては遅い方ですよ!
   魔王様、人前でそんな大きな口を開けてあくびなさらないでください!!はしたないですよ!!」

魔王「朝から大声だすな… ええと。そちらのおふた方は勇者くんの仲間かな」

戦士・神官「……」ポカーン

勇者「そうだ。おい、戦士、神官。驚きも分かるが、そろそろしっかりしてくれ」

戦士「…ああ。わ、私が戦士だ。しかし驚いた…まさか娘と同じ年くらいの女子が魔王とは」

神官「は、はひ……神官です…」

魔王「私たちに敵意はない。どうか二人も武器をしまい魔王城を楽しんでいってくれ……ふわぁ…」

勇者「せっかくかっこよく台詞言ったのにあくびで台無しにするなよ」

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22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:17:31.40 ID:ISLZlb1Q0


魔王「朝ごはんも食べ終わったところで、今日はさっそく『勇者御一行 魔族村観光ツアー ~いま明かされる新世代の魔族の秘密!~』を始めようと思う」

勇者「なんだその頭悪そうなツアー……」

神官(なにこの幼女かわいい。いけない、油断しちゃだめっ!!相手は魔王なんだからっ!)

魔王「戦後から、まぁいろいろと魔族についてネガティブキャンペーンが行われているだろうということは分かっている。
   魔族側でも同じことが起こっていたしな。
   今日は百聞は一見に如かずということで、今まで教えられた魔族についての知識を取っ払って純粋に私たちの村を楽しんでいってくれ」

勇者「楽しむって言われてもな」

魔女「魔女ちゃんお手製パンフレットもあるよ~!いる?」

戦士「『ようこそ☆ まぞくむら!』…」

神官(字きたなっ…)

竜人「はいこれ、お弁当作ったんで、途中昼休憩で食べてくださいね。
   今日は魔王様の好きなハンバーグいれたので、楽しみにしててください」

魔王「ほんとか!?」

勇者「……」
戦士「……」
神官「……」

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23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:18:15.24 ID:ISLZlb1Q0



魔王「……こほん。別にいいだろう、好物を楽しみにしたって」

勇者「ああ、うん。ハンバーグはおいしいよな……ほんと」

魔王「その顔はなんだっ。言いたいことがあるならはっきりと言えばよかろう。
   もういい、さっさと出発するぞ。魔王自ら案内してやるのだ、光栄に思え」スタスタ

竜人「いってらっしゃーい」

魔女「暗くなる前に帰ってきてねー」

勇者「あ、はい…」

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24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:19:18.57 ID:ISLZlb1Q0





魔王「ここが学校」

勇者「え」

神官「ま、魔族の学校なんてあるんですか……?」

魔王「作ったんだ。魔法は勿論、歴史や農法について主に学ばせている。
   この村は基本的に自給自足だからな。農法の知識は欠かせない」


子ヴァンパイア「あ!魔王様だー!」

子エルフ「魔王様こんにちは!」

勇者「うおっ」ビク

魔王「こんにちは」

子エルフ「後ろの奴だれ?新しく村に住む魔物?」

魔王「人間だよ」

子エルフ「ええええ!?人間!?これが人間なんだー!俺初めて見た!!」

子ヴァンパイア「すげー!すげー!ねえ人間ってどんな血の味するの?」

神官「ひぃぃぃぃっ!!」

 

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25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:20:31.83 ID:ISLZlb1Q0



魔王「ところで先生は?」キョロキョロ

キマイラ「おや魔王様。今日は授業を見学しにいらっしゃったのですか」ヌッ

神官「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」ビクッ

勇者「うおぉぉ!?」ビクッ

戦士「や、山羊……いや、ライオン、蛇……キマイラか」

キマイラ「いかにもいかにも。そちらが魔王様がおっしゃってた勇者御一行ですか」

魔王「ああ。今日は村を案内しようと思ってな」

キマイラ「ほう。それは素敵ですね。どうぞ楽しんでいってください。ここはいい村ですよ」ニコ

勇者「し、紳士的なんだな……(見た目に反して)」

魔王「村で一、二を争う人格者だ。では次は商店街に行こう」

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26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:21:16.58 ID:ISLZlb1Q0


子エルフ「えー魔王様、もう行っちゃうの?遊ばないのー?」

魔王「また今度な」

神官(子どもたちが戯れてるようにしか見えない…)

魔王「こら。いま何か失礼なことを考えたろう」

神官「よ、読まれたっ!?いえ、滅相もないです!」

 

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27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:23:28.48 ID:ISLZlb1Q0



商店街

がやがや

勇者「随分にぎわってるなあ」

魔王「うむ、いつ見ても活気がある通りだ。
   そうそう、中には人を怖がる魔族もいるから、まあ勇者くんたちなら大丈夫だろうけど
   言動にはちょっぴり注意してくれ」

戦士「魔族が……人を怖がる?」

魔王「さっきの子どもたちはここで生まれて人に会ったことがなかったから、あんな風だったが…
   よそから来た魔族は、程度に差はあれど迫害された経験がある」

勇者「迫害って…!逆だろ? 人が魔族に虐げられてきたんだ!」

魔王「まあそんな怖い顔せずに、商店街を見て回ろうではないか今日はいい天気だな……」スタスタ

勇者「おい、待てよ!」

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28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:24:11.44 ID:ISLZlb1Q0



魔族「魔王様じゃないっすか!今日はどちらに?」
魔族「魔王様、うちの新メニュー食べてきませんか!?」


魔王「今度頂こう」

神官「ひぇえ……ま、ま、魔族がこんなにいっぱい……」ブルブル

魔王「とって食おうとする者なんかおらんぞ。大丈夫だ」

神官「……。確かに…みなさん姿はちょっと恐いけれど……なんか優しそうですね…」

魔王「そうだぞ。優しいのだ。えっへん」

戦士「む…。あれはうまそうな定食だな」

勇者「……」

マオウサマー
 マオウサマダー

 

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29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:25:00.39 ID:ISLZlb1Q0


勇者「随分慕われてるんだな。魔王らしからぬ外見をしているのに」

魔王「らしからぬとはなんだ、らしからぬとは。成長が遅いだけだと言ってるだろうに」

勇者「なんか、のどかで……いいところだな。俺の育った田舎の町に似ているよ」

戦士「みな楽しそうだな」

神官「私たちがいままで教わってきたことって、間違いだったんでしょうか」


ハーピー「あらあら魔王様。今日はうちのお店によってかないの?かわいいお洋服できあがりましたのに」

魔王「また今度くる。今日は客人を案内しているのだ」

ハーピー「お客さん?……あら!かわいい女の子っ!このあいだ作ったワンピースがとっても似合いそう!」

神官「わ、私ですか?そんな……かわいいだなんて///」

ハーピー「どこの種族の方なのかしら? 見たところかなり魔族の血は薄いみたいだけれど」

神官「えっと…」

 

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30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:26:43.26 ID:ISLZlb1Q0


魔王「人間だ」

ハーピー「…………え?」

魔王「勇者御一行が島にくることは先日伝えただろう。この者たちがそうだぞ」

ハーピー「ひ…っ!!」

勇者「……?」

ハーピー「ご、ごめんなさいっ わたし……その……っ」

勇者「…大丈夫か? 顔が真っ青だぞ」スッ

ハーピー「きゃっ!」ビク

勇者「えっ…」

 

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31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:28:08.45 ID:ISLZlb1Q0


ハーピー「さ、さわらないで!こっちに来ないでっ!」

勇者「俺は別に、危害を加えようとしたんじゃなくって」

ハーピー「うぅぅ……っ」

魔王「……落ち着け。この者たちは私の客人だ。君が出会った人間たちとは違うから、大丈夫。
   それに何があっても私がみんなをまもるから。私は魔王だぞ」

ハーピー「魔王様……魔王様……」

魔王「今日は家でゆっくり休むといい。暖かいハーブティーでもいれてな」

ハーピー「はい。すみませんでした…」

 

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32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:28:39.73 ID:ISLZlb1Q0


勇者「……」

戦士「……」

神官「……」

魔王「勇者くんが悪いわけじゃないから、気にしないでくれ」

勇者「お、おう…」


ガシッ!


勇者「うあ!?」

魚人「おーっす」

神官「ゆ、勇者様ぁ!?!?」

 

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33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:29:42.96 ID:ISLZlb1Q0


勇者「な、なにするんだよっ!離せ!」

神官「ゆゆゆゆ勇者様から離れてください!」

戦士(まずいな。先ほどのハーピーの件で反感を買ったか?
   俺たち3人でこの商店街の魔族みんな相手にとるのは厳しいぞ…)

勇者「この…!」


魚人「へえ~~~~~お前が勇者? なんだ、意外とガキでもなれるもんだなぁ!!
   あとそこの女の子かわいいねえ。今度俺の店来ない?あの角の酒場だからさ!」

勇者「へ?」

魚人「そっちの屈強なおっさん好みの渋い酒も揃えてるぜ。旅の話、聞かせてくれよ。
   俺、冒険譚ってだいっすきなんだよな!!」

戦士「……む?」

神官「えっ…?」

 

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34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:30:25.85 ID:ISLZlb1Q0



魚人「つかなにその腰の剣、あれ!?いわゆる聖剣てやつ!?まじ!?触らせてくれよ!!いい!?」

勇者「おい!勝手にとるなよ!」

魚人「うはァ~~~~~~!!!やべえめっちゃ輝いてるぅ~~~~~!!!」

勇者「やめろー!返せー!」



神官「なんなんですかあの人… 人?」

魔王「酒場のマスターをやってるぞ。私はまだジュースしか飲んだことがないが、なかなかお酒もおいしいそうだ」

戦士「ほう」

神官(戦士さん…絶対あとで行く気だ!)

 

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35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:31:18.70 ID:ISLZlb1Q0



魚人「でな?でな?俺は人間どもに追いかけられたとき、あったまきてな?
   川にもぐって水あやつって奴らを泥水まみれにしてやったわけよ!
   そんときのあいつらの顔ったらねーよwwwwwwwまじうけるwwwwwwwwww」

勇者「聞いてねーよ!いい加減離せよ!」

魔王「そろそろ先に進まんとな。グリフォンのところにも行きたいし。魚人」

魚人「へえへえ!魔王様のご命令とあらば!」パッ

勇者「やっと解放された…」

魚人「今度酒場に来てくれよな!待ってるぜ!」


魔王「さあ、行こう」

 

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36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:32:33.57 ID:ISLZlb1Q0



魔王「……ん。それより先に昼ごはんにするか…
   あの丘に上が見晴らしがいいんだ。そこでご飯を食べよう」

神官「ピクニックですか。いいですね~」

戦士「もう昼か」

勇者「魔王とピクニックって……いやいいけどさ…」



丘の上


勇者「おお、すごい眺めだな」

神官「海も見えますね。風が気持ちいいです」

戦士「もっと底なし沼やらマグマが流れる火山やらを想像してたんだがなぁ」

勇者「魔界観が完全に崩れたよな」


魔王「おっ デミグラスハンバーグか!」パカッ


戦士「ハンバーグで喜ぶ魔王か…」

勇者「魔王観も完全に崩れたな」

 

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37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:33:03.61 ID:ISLZlb1Q0



魔王「うまいな」モグモグ

勇者「ほっぺにソースついてんぞ」

魔王「む……どこだ?」

勇者「右」

魔王「ほんとだ。ありがとう」

勇者「お、おう」


神官「竜人さんお料理上手ですねぇ」モグモグ

戦士「宮廷の馳走にも劣らない味だな」モグモグ

魔王「口にあってなによりだ」


勇者「ところでさ。さっきのことなんだけど。
   魔族が人に迫害されたってどういうことなんだよ?」

 

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38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:34:35.00 ID:ISLZlb1Q0



魔王「ああ。そうだな…話は100年前に遡るのだが」

神官「100年前……人魔戦争のことですか?」

魔王「うん。大陸南部に住む人間と大陸北部に住む魔族が始めた戦争だ。
   戦争は皆も知ってる通り、魔族の敗北という形で終結した」

戦士「その結果には勇者……先代勇者が、先代魔王を打ち破ったことが大きく貢献していると聞くな」

神官「ええ、そうです。
   もともと治癒術や預言など、戦争向きでない白魔法使いが少数いる王国と、
   種族ごとに強力な魔法が使える魔族とでは、戦争を始める前から勝敗は見えていました」

魔王「詳しいな。では勝敗が見えている戦争をなぜ人間は始めたのか?」


神官「恐らく勇者の存在が生まれたからじゃないでしょうか。
   あの戦争に関しては信頼できる文献がほとんどなくって……知識も多くないのですが」

神官「魔族の存在に人間は脅かされていた。しかし対抗できる軍力も高度な術もなく、ただ耐え忍ぶしかなかった。
   そんなときに魔王を討ち滅ぼせる勇者が王国に生まれて……」
   
神官「勝機を得た人間は、満を持して戦に臨んだんじゃないのでしょうか」

39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:35:26.71 ID:ISLZlb1Q0


勇者「ん?待ってくれ。俺の村では確か…
   魔族がある日、ある村を燃やしたことをきっかけだったって聞いたが?」

勇者「溜まりに溜まった魔族への怒りがそれで爆発して、負け戦でもやってやろうと意気込んでるときに、
   勇者が現れて魔王を倒して、形勢逆転。一気に人間の攻勢になったとか」


神官「火事?なんて村です?」

勇者「いや名前まではわからん。そう教えられただけだ」


魔王「ちなみに、魔族の間では戦争のきっかけとしてはこう伝えられている」

魔王「先祖の代からまもってきた宝石を人が盗んだり、不老不死が得られるからと人魚の村に襲撃したり。
   そのような人の行いが魔族の間で不満や怒りにつながった」

魔王「このままでは魔族に未来はない、人に踏みにじられるだけだと。
   好戦的な種族を筆頭にそんな声が高まって、そうして戦争をするに至ったと。そんな風に聞いている」

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40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:36:19.76 ID:ISLZlb1Q0



戦士「そんな話は初めて聞いたが……」

勇者「どういうことだ?みんな違う風に戦争のきっかけが伝えられてるって」

魔王「まあ…歴史とはそんなもんだろう。
   見栄や種の誇りという色眼鏡を通しては、正しい歴史など語れるわけがない」

魔王「本当の歴史を知るのは第三者だけだ。そんな者、100年前にいたのかわからんが」

神官「大陸ほとんど巻き込んだ戦だったそうですから……ほとんどいないでしょうね」


魔王「戦争が魔族の敗北という形で終わったあと。人間がどうしたか分かるか?」

勇者「どうしたって。戦争は終わったんだから、平和に暮らしたに決まってんだろ?」

魔王「平和に暮らすために、やらなくちゃいけないことがひとつ残ってるだろう」

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41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:37:31.13 ID:ISLZlb1Q0



神官「なんですか?」

戦士「残党狩り……か」

魔王「そう」

魔王「いつ第二の戦争が始まるのか分からないからな。最後の一仕事がそれだ。
   最も、戦力になる種族は先の戦争で殺されてて、残ってたのは力ない魔族や子どもばかりだったろうけど」

勇者「そんな、そんなこと、人がするわけないだろ。戦力にならない者をわざわざ!」

魔王「まあ食事の間の与太話として聞いてくれればいい」


魔王「それで、魔族はほとんど滅んだはずだ。それほどまでに先代勇者パーティは協力だったんだろう」

戦士「ほとんど、と言ったな? ならば、いまこの島に住んでる魔族の祖先は、どうして生き残ったのだ?」

42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:38:56.53 ID:ISLZlb1Q0


魔王「魔族のような外見をしてない者が、残党狩りから逃れて生き残った」

勇者「魔族のような外見をしてない?」

魔王「つまり魔族の血が薄まった者だ。人と魔族のハーフとか、もしくは半分以下の魔族の血を受け継ぐ者。
   人の血をひいていれば人に化けることのできる者もいるし、ほとんど人と変わらない容姿をもつ者もでてくる」


神官「なるほど…… そして生き残った魔族は人の社会の中で生きてきたんですね」

魔王「魔王も有力魔族も死んで、魔族社会は壊滅してしまったからな
   そうして魔族は生きてくしかなかった」


魔王「でも、異物であることを隠し通すのは難しいものだ 
   うまくやったと思っても……小さなことから魔族であることがばれて」

魔王「嫌われて、殴られて、石を投げられて、住む場所を追われて
   100年前から、そうやって細々と魔族は歴史を紡いできたのだ」

 

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43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:39:40.09 ID:ISLZlb1Q0



神官「じゃあ……さっきのハーピーさんも」

魔王「島にいる魔族のほとんどがそんな経験をもつ。
   だから私は、島全体を覆える強力な結界魔法を完成させて、
   魔族だけで暮らせる村をつくったのだ」

勇者「……」

魔王「私はここのみんなをまもりたい。この村をまもりたい。
   だから勇者くん、いま一度頼みたいんだ」

魔王「この島の居場所を、秘密のままにしてほしい」

勇者「……」

神官「ゆ、勇者様…」

戦士「勇者…」

 

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44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/03(土) 01:40:37.56 ID:ISLZlb1Q0


魔王「答えは今すぐじゃなくていいんだ」

勇者「……即答できなくて悪い。でも俺も、国民の期待を背負ってる身なんだ」

魔王「うん」

勇者「でも今まで王国で聞いていた話を鵜呑みにしたままじゃいけないってことも分かった。
   この島に、しばらくいさせてもらえないか。
   その間、自分の目で真実を確かめたいんだ」

魔王「勿論。いつまでだっていてもらって構わない。なんなら、永住してもらっても構わないぞ」

勇者「永住はしねーけど」

魔王「1年中暮らしやすい気候で、竜人のご飯が3食無料だぞ?
   家賃も0、自然も多くていい隠居先だと思うが?」

勇者「本格的に営業はじめるなよ! 隠居って俺まだ10代だけど!?」

魔王「そうか……残念だ」シュン

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51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 03:14:19.91 ID:+fr7NjvQ0


魔王「じゃあこのあとは、村で一番の年長者、グリフォンのところへ行こう」

神官「グリフォンですか。なんか、緊張しますね…」

魔王「そんな緊張しなくていいぞ」



グリフォン家


魔王「グリフォン、いるか?」カランカラーン

勇者「やべえ……普通の家だ」

グリフォン「なんだ、魔王様かぁ」バタン

魔王「やあ。突然だけど勇者くんたちに君を紹介したくて」

グリフォン「勇者?へえ…」

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52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 03:15:23.94 ID:+fr7NjvQ0



勇者「あ、あれ? 普通の男なんだけど……本当にグリフォンか?」

戦士「人間……?」

グリフォン「ああいや。本を読むときは本来の姿だと不便だから、人型になってるだけさ」

神官「ほぇー」


魔王「グリフォンは物知りなんだ。いつも本を読んでいる。何か分からないことや疑問に思ったことがあれば、ここに聴きに来るといい」

グリフォン「魔王様にそう言われると照れるね エッヘヘヘ」

勇者「なんだこいつきもい」

魔王「ちょっと癖のある者だが……知識は、すごい。知識だけは」

神官「いま、“だけ”って言いましたよね!“だけ”って!」

グリフォン「ひどいなぁ…… まあいいけどさ。
     来ればお茶くらいだすよぉ。人間の生態にも興味あるし…」ジッ

勇者「なんかマッドサイエンティストのかほりがする!こわい!」

戦士「解剖されそうだ」

 

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53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 03:16:46.31 ID:+fr7NjvQ0



グリフォン「いつでも来てね…」ニッコリ

勇者(多分こない)


魔王「では……城に帰るか」

神官「なんか、普通に楽しかったです」

戦士「新境地だったな。興味深い」

勇者「俺は疲れた…」


勇者「とりあえず、しばらく厄介になるぞ、魔王」

魔王「ゆっくりしていくといい。勇者くん」



勇者「一週間後、定期報告のために王国に帰る。それまでに俺たちの答えを決めようと思う」

魔王「そうか。じゃあ一週間まったりしていってくれ。我々にとってよい返事を期待しているよ」

 

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54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 03:17:38.47 ID:+fr7NjvQ0



* * *


次の日


魔女「ねーねー 神官はさぁ、彼氏とかいんの?」

神官「ブハッ!! な、なにを言いだすんです魔女さん」ポタポタ

魔女「あー、やっぱいないの?そんなだっさい服着てるからだよー、あたしの服貸したげよっか?」

神官「ださい服!? これは教会から支給された聖なる神官服ですよ!?」

魔女「もっと足とか胸とかだした方がいいっしょ」

神官「魔女さんじゃないんですからっ 私はこれでいいんです!」



勇者「なあ、二人とも?竜人と戦士知らないか?」

神官「あの二人なら、中庭で剣の手合わせしてますよ」

勇者「そうか… 俺も混じってこようかな」

魔女「それなら魔王様のところに行けばー?多分図書館か研究室にいると思うよー」

勇者「魔王か?……まあ、行ってみるか。ありがとな」

 

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55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 03:18:24.49 ID:+fr7NjvQ0


図書館


勇者「うわっ すげえ蔵書数だ。壁一面に本ばっか。
   俺こういうところ頭痛くなるんだよな。昔から剣ばっか振ってきたから」

勇者「……魔王?いるのか?」

魔王「勇者くん?どうしたんだ?入って右奥の棚にいるぞ」

勇者「こっちか」

魔王「ちょうどよかった。この上の方にある本がどうしても届かなくてな。
   勇者くん、とってくれないか」プルプル

勇者「……」

魔王「その呆れた目はなんだ?全く、こんな上に本を積み上げたのは竜人か魔女か……
   梯子を使っても、これでは届かないではないか」プルプル

勇者「チビだもんな」

魔王「うるさいな」

 

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56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 03:20:11.34 ID:+fr7NjvQ0


勇者「しょうがねえな。とってやるから、梯子から降りて来いよ」

魔王「助かる…… ふう、腕が疲れた。……ん?」グラッ

勇者「おい!?」

魔王「まずいな。落下する」

勇者「落下する。じゃねーーーーよ!ばか!…………うおっと!!」ドサッ

魔王「さすが勇者くんだ。素晴らしい反応速度」

勇者「嬉しくねえよ。お前ほんとに魔王なの!?梯子からうっかり落っこちる魔王ってなに!?」

魔王「随分……間抜けな魔王だな。王たる自覚はあるのだろうか」

勇者「言っとくけどお前のことだよ?」

 

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57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 03:21:07.85 ID:+fr7NjvQ0



勇者「…で、とりたかった本ってこれか。ええと?『天候と水魔法の関連性について』……うわ、難しそう」

魔王「古い本だからな。でもいま研究してる魔法に必要な文献なのだ」

勇者「魔法の研究ねぇ。魔王ってのは普段そういうことをやるんだな。
   で、何の魔法を研究してるんだ?」

勇者「天候をまるまる変える魔法なんて、伝説の魔術師くらいしか使えたっていう試しがないぞ
   それも本当かどうかなんて分かんないけどな」

魔王「天候を変える魔法か… それもあったら便利そうだ。でも今研究してるのは違うんだ。
   雨を花びらに変える魔法だよ」

勇者「……ハイ?」

魔王「結構難しいんだ。水魔法と物質変化魔法を組み合わせて……あと重力魔法とかも組み入れたほうがよりそれらしいし……」

勇者「……あのさ。そんななんの役にも立たなそうな魔法開発して、どうすんだ?」

魔王「なんの役にも立たないとは、ひどいじゃないか」

勇者「いや、普通、より強力な攻撃魔法とかさ、そういう研究してると思うじゃん」

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58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 03:23:22.06 ID:+fr7NjvQ0


魔王「攻撃魔法か… 一応たまにしてるけれど。それより私は見る者を喜ばせる魔法を研究する方が好きだ」

勇者「雨が花に変わってもなぁ……それって喜ばしいか?」

魔王「喜ばしいよ。きっとわくわくするような光景だ。それを成功させたら、空から菓子を降らせる魔法の研究にとりかかろうと思う」

勇者「子どもか!……子どもだったな、そういや」

魔王「なんだ。じゃあ勇者くんはどういう魔法を使うんだ」

勇者「俺は大体、雷魔法か転移魔法とかだな」

魔王「雷ね…… このあたりの本とか、雷魔法の発展理論について書かれているぞ」スッ

勇者「むりむりむりむり!頭痛くなる!
   つーか、こんだけの本どこから調達したんだ?この島から魔族はでられないんだろ?」

魔王「ああ…」

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59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 03:24:38.66 ID:+fr7NjvQ0



魔王「基本的に転移魔法が使える竜人と魔女に、たまに島の外にでてもらって物質の調達をしたり情報収集したりしてもらってる」

勇者「そうだったのか」

魔王「有事のときでも自分一人で身をまもれるくらいの戦闘能力があるのがその二人だけだからな」

勇者「あれ?魔王は外にでないのか?」

魔王「私は島の結界を維持しなければならないから、島の外に出れないんだ」

勇者「ふーん」

魔王「だから勇者くんに会ったら、旅の話を聞きたいと思っていたんだ。この大陸中を見て回ったんだろう?」

勇者「魔王城が全然見つからないおかげでな」

魔王「すごいな……!ぜひ聞かせてほしい。勇者くんの村は大陸のどのあたりにあるんだ?名産品は?まず一番最初に行った街はどこ?
   どんな敵に出会ったんだ?なにか印象に残った出来事はあるか?」

勇者「死んだ魚の目が急に輝きだした!落ち着け、どうどう」

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60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 03:28:46.31 ID:+fr7NjvQ0



魔王「すまん。全然反省してないけど」

勇者「ふてぶてしいなお前…」

魔王「さあ、冒険譚を聞かせてくれ。私の部屋に行こう、竜人にお茶をもってこさせる」


バタン


竜人「魔王様」

魔王「早いな。気がきくじゃないか竜人」

竜人「いやなんの話ですか? 村の者が魔王様に用事があるそうです。下に降りてきてくれませんか?」

魔王「ああ、あの二人かな。 勇者くん、旅の話はまた今度聞かせてくれるか?」

勇者「大したもんじゃないけどな。いつでもいいぜ」

魔王「楽しみだ。じゃあ行ってくる」

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63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 12:42:15.78 ID:+fr7NjvQ0



勇者「魔王って結構ひまそうだな」

竜人「それがそうでもないですよ。魔王城はケガ人病人も診てますし、発展的な学問を学びたい者のための施設にもなってます。
   さらに役場も兼ねてますので結婚出産葬式もろもろの報告も承らなくちゃいけませんしね」

勇者「多忙だな。3人で足りるのか」

竜人「足りませんよ。だから一応お手伝いさんに来てもらって事務仕事やってもらってますよ」

勇者「俗っぽいなあ。ファンタジーの世界観ぶち壊しだぞ」

竜人「ファンタジーねぇ」ハッ

勇者「竜の末裔がファンタジー鼻で笑うなコラ」

竜人「ファンタジーで飯食えませんよ」ハッ

勇者「やめろ、さっきまで魔法がどうのこうのって話してたんだからやめろ。雰囲気ぶち壊すのやめろ」

 

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64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 12:43:33.48 ID:+fr7NjvQ0






魔王「……」カリカリ

魔王「……」カリカリ

魔王「…ん。いけない、もうこんな時間か。夜、勇者くんに旅の話を聞きたかったのにすっかり忘れてた。
   明日の夜でいいか…」

魔王「そろそろ寝ないと…竜人がまたうるさいな。でもあともう少し。この本を読み終わったらにしよう」

魔王「……」

魔王「……」コクッ コクッ

魔王「…………ん…」ゴシゴシ

魔王「……」

魔王「……ぐー」バタン

 

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65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 12:44:16.72 ID:+fr7NjvQ0



『―――!―――ッ!!』

『放せ! 勇者くんが!』

『だめです、魔王様……いま飛びだしたら……!』

『いやだ、こんなのいやだ、私は認めないぞ!』

『うっ、うぅ……私のせいだ、私の。私があんなこと、言ったから!』


『やめて……やめろ!!ふざけるなっ!!』

『やめろーーーーーっ!』


――――ザシュッ

…ゴトン


『……あ。あ。あ。あ、』

『        』



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66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 12:45:37.01 ID:+fr7NjvQ0



魔王「……ッ!?」ガバ

魔王「っは……はぁ……え?」


チュンチュン


魔王「あ、朝? 今のは…なんだ?予知夢?
   いや、そんな能力もってなかった……ただの、夢か」

魔女「おっはよーう魔王様!いい天気だなー って、ああああっ!また机で本読みながら寝ちゃったんですか!?なにやってんの!?」

魔王「おはよう…魔女。……背中痛い」

魔女「そら椅子で寝たんだからそうでしょーよ。全く、風邪ひいたらどうすんのさ。魔女ちゃん特製ゲロニガ風邪薬飲ませるよ?」

魔王「勘弁してくれ。お前の薬はなんで効き目抜群なのに、味が最悪なんだ」

魔女「味付けなんてよくわかんないしィ」

竜人「ちょっと魔女、早く魔王様起こしてきてくださいって……はァん!?
   魔王様、まーーーたベッドじゃなく椅子で寝たんですかァ!?」

魔女「うっさいの来た…」

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67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 12:48:06.43 ID:+fr7NjvQ0





竜人「何度言ったら分かるんですか!ベッドで寝てくださいって!」

魔王「今度から気をつける」シュンッ

竜人「あっ!転移魔法で逃げましたね……!これが反抗期ってやつですか…」

魔女「いやー無理もない反応でしょーありゃ。あんたどこのオカンだよ」

竜人「追いますよ魔女!」シュンッ

魔女「追いますよって、普通に大広間にいるでしょ。なにあいつ馬鹿なの うける」シュンッ

 

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68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 12:49:37.87 ID:+fr7NjvQ0


勇者「なかなか強いな!」

竜人「勇者様こそ。さすがといったところですね」


キィン! 


魔王「…………」

戦士「なんだ、浮かない顔だな?」

魔王「戦士殿。…………いや、そういうわけじゃないんだが。ただ夢見が悪くてな」

戦士「夢見とな。魔王殿は予知夢の能力も持っているのか?」

魔王「多分、もってないと、思うが」

戦士「そうか」

魔王「……王国には夢で未来を視る預言者がいると聞いたが」

戦士「ああ、宮廷お抱えの預言者がひとり。かなりの腕前だそうだ。
   あそこにいる勇者のお告げも、今の代の預言者が行ったそうだぞ」

魔王「ほう。天からのお告げというものか。勇者くんはすごいんだな」

戦士「あいつはすごいぞ。なかなか骨のある若者だ」

 

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69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 12:50:32.29 ID:+fr7NjvQ0



魔王「三人は同じ村の育ちなのか?」

戦士「いや全然違う。俺は中央都市の生まれで、神官は教会に育てられた孤児だ。
   勇者はかなり田舎の生まれで、魔王討伐の旅に出かける際に初めて顔を合わせた」

魔王「討伐の旅か……どんなところに行ったんだ?
   世界の果て、星の墓場、虹の降る谷、地底に眠る遺跡群。そういったものは本当に実在するのか?」

戦士「……魔王殿は、旅にでたいのか?」

魔王「まさか。想像するだけで十分だ。
   あ、竜人たちが呼んでるぞ。手合わせばかりして飽きないな」

戦士「魔王殿も混じってみるか」

魔王「私は肉体派ではない。……先に城に戻っている」スタスタ

戦士「……(難儀な娘だな…)」

 

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70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 12:51:13.63 ID:+fr7NjvQ0






勇者「あー 今日はいい汗かいた。やばいな、普通に魔王城満喫しちゃってるな俺ら」

コンコン

勇者「? こんな時間にだれだ…? 待ってろ、いま扉を開け……」

魔王「こんばんは」シュンッ

勇者「ぎゃあおっ!!お前かよ!つーかノックしといていきなり転移魔法かましてくんなよ!びびるだろ!!」

魔王「シッ!静かに。竜人にばれたらまたうるさいぞアイツ」

勇者「なにしでかしたんだよ……怒られんの多分俺だぞ……かえれよ…」

魔王「旅の話をいつでも聞かせてくれると言ったのは勇者くんだろうに」

勇者「昼じゃだめなのか?」

魔王「だめだ。今すぐ。ここで。聞かせてくれるまで帰らんぞ」

勇者「まじかよ」

 

71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 12:53:31.26 ID:+fr7NjvQ0



魔王「まじだ。大まじだ」モソモソ

勇者「おい、勝手に人のベッドにもぐりこむんじゃねーよ!」

魔王「このベッドも元をただせば私のものだ」

勇者「屁理屈こねやがって……わかったよ、途中で寝んなよ?言っとくけど大した話ないからな?」

魔王「かまわない。大丈夫だ。寝ない。さあ早く。早く話せ。まだか?」

勇者「落ち着けよ!ええと。旅の初めからか? うーん、どうだったかな…」

 

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72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 12:54:47.92 ID:+fr7NjvQ0



~~~~


王「勇者よ。お前に王からの勅命を言い渡す」

勇者「ハッ。なんなりと」

王「お前も勇者として預言をうけてから幾数年経ち、立派な剣の使い手になったな。そろそろ魔王を討伐する旅にでてほしい。
  今のお前はそこらの兵士より数倍強い。さらに伝説の勇者の力をもってすれば、魔王打倒も夢ではないだろう」

勇者「必ずや魔王を倒してみせます。して魔王城はどこに?」

王「それが全くわからんのだ」

勇者「えっ」

王「どうやら特殊な術を用いて居場所を隠しているらしい。勇者、お前なら魔王城の居場所も突き止められると信じているぞ」

勇者「御意に」

王「それから、もうひとつ。世界に残っている魔族の殲滅も頼みたい」

勇者「殲滅、ですか」

王「戦争の生き残りの魔族がまだいるらしくてな。度々目撃情報があがるのだ。
  人村にふらりと現れては食物を盗んだり、人を攫ったり、暴虐の限りを尽くしているらしい」

勇者「なんて奴らだ! 罪も無き人々がいまだ魔族の影におびえなくてはならない生活をおくっているなんて!
   必ずこの俺が魔族どもを成敗してみせます。お任せ下さい」

王「期待しているぞ。魔族の血が絶えん限り、我々人類の未来はない。
  あの戦争を繰り返すことだけは絶対に避けなければならない」

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73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 12:56:37.20 ID:+fr7NjvQ0



戦士「お前が勇者か。俺は戦士、以前はこの国の傭兵部隊に所属していた。大剣なら自信あるぞ、よろしく」

神官「初めまして、勇者様。私、教会から指名されました神官です。ええと、回復魔法ならおまかせくださいね」

勇者「ああ。よろしくな。さて……魔王城の居場所が分からないということだが……手始めにどこに行こうか」

戦士「まずは情報収集しつつ適当に大きな都市を回ってみればよいのではないか?その道中で魔王に勝てるだけの力を身につけられるだろう」

神官「そういえば……武器の話ですけれど。この世界のどこかにある、時の神殿というところで、聖なる剣が埋まってるらしいですよ」

勇者「勇者っぽいな。でもそれも居場所がわかんないのか。うーん、まあ適当に旅してれば、そのうち情報を掴めるだろう」

戦士「そうだな。まず適当に大きな都市に行こう」

神官「そうですね、適当に。くじでも引きます?」


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74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 12:57:31.69 ID:+fr7NjvQ0


魔王「適当すぎないか」

勇者「それでもここに辿りつけたんだから、結局適当でいいんだって。
   えーと、魔王は俺たちの大陸が3国に分かれてることは知ってるよな?」

魔王「それくらいは。大陸北部がもともと私たち魔族の土地だったところで、南部が勇者くんたちの太陽の国、それから雪の国、星の国だったかな」

勇者「うん、そうだ。1年中雪の降る冬の地、雪の国。天文学をはじめとした学問の都、星の国」

勇者「で、俺たちの太陽の王国。太陽神信仰で、神官が属する教会も太陽神を一神教とするものだ。
   経済力も軍力も領土も3国中最大、最近は航海術にも力を入れてて大陸以外の国とも交易が盛んだ」

魔王「ふむ、そうなのか」

勇者「俺たちはまず王国を旅して、次に雪の国に向かったんだ。
   めっちゃくちゃ寒かった。信じられないくらい寒かった」

魔王「雪というのは、どういったものなのだ?私は見たことがない」

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75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/04(日) 12:58:41.24 ID:+fr7NjvQ0


勇者「雪っつーのは……えっと、白くて、冷たい。触ると解ける。そんなのがいっぱい空から落ちてくる」

魔王「……」

勇者「そんな怪訝な顔するな。別に恐ろしいものじゃない、結構きれいだぞ。俺は寒くて嫌いだけど」

魔王「へえ。そうなのか……いつかこの島にも降ればいいのに…」

勇者「……魔法で作り出せるかもな」

魔王「ほんとかっ」

勇者「でも俺は書を読んで研究なんてしたことないからな!すぐにはできないぞ!!」

魔王「それでもいい。いつまでだって待つ。楽しみにしてるぞ、勇者くん」

勇者「あんま期待しないで待ってろよ……
   で、ええと。雪の国に行ったところだったな。そこで変な奴にあったんだよ」

 

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80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 19:32:23.54 ID:x0EC40q4o


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雪の国 酒場

勇者「旅を続けてもう5カ月か。大分俺たちも強くなったんじゃないか」

神官「そうですね、魔王城の情報はまだ掴めてませんけど」

戦士「ところでひとつ、言いたいことがあるのだが」

勇者「奇遇だな、俺もひとつある」

神官「私もありますね」


勇者「魔物いなくね?」

神官「王国を出発してからまだ一匹の魔物とも遭遇してないって、これも神のご加護でしょうか?」

戦士「来る日も来る日も盗賊団や麻薬売人を倒すばかり。どういうことだ?」

勇者「王の話では、魔王の復活に伴い人村に魔物の被害が広がってるっていうことだったんだけどな。
   旅の途中で寄った村でも、最近ではそういう被害はないって言ってるし」

戦士「なんでも10年前くらいからパッタリ被害がなくなったとか」

勇者「ふーむ…」

 

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81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 19:38:36.12 ID:x0EC40q4o


神官「このままじゃまずいですよ!いきなりラスボス戦で魔族初対面とか、恐ろしすぎて失神する自信ありますよ!
   この魔族大図鑑見てイメージトレーニングしとかないと……」

勇者「イメトレする勇者一行ってなに?なんか決まらないよな」

戦士「まあ、俺たちが盗賊をとっ捕まえて、街に平和が訪れてるんだ。それも大事な勇者の仕事だろう」

勇者「そうだな」

マスター「よう、兄ちゃんたち。この酒、あっちのお客さんからだぜ」

勇者「ん?ありがとう。あっちのお客?」チラ


旅人♂「……」ニコッ

勇者(吟遊詩人かなにかか?見たところ俺よりも年上で、旅にも手慣れてそうだ)

神官(詩人にしては筋肉もりもりですね。戦士さんほどついてないですけど)

勇者「もしよかったらこっちのテーブルで話さないか?旅について色々聞きたいしさ」

旅人「……」ガタッ

神官(寡黙な人なのかな?)

 

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82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 19:41:25.43 ID:x0EC40q4o



旅人「……」スタスタスタスタ

旅人「……」ガシッ!!

勇者「ギャッ!? な、なにすんだよお前!?ケツさわんじゃねーよ!!」

旅人「あらぁ~~いいオ・シ・リ」

勇者「」


戦士「」ダッ

神官「」ダッ

勇者「オイ逃げんなよ!!!勇者見捨てんなお前ら!!!」

旅人「逃がさないわよぉ、かわいい勇者サン。うふふ」

勇者「助けて!マスター助けて!助けて!」

 

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83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 19:46:55.10 ID:x0EC40q4o



旅人「へぇ~~それでぇ、勇者ちゃんは魔王を探して旅してるのねぇ」

勇者「はい……ええ……」ゲッソリ

旅人「私もいろんなとこ旅してるんだけどぉ、勇者ちゃんの噂は聞いてるわよん」

勇者「やっぱり旅人なのか。なんでカマ口調なんだ……お前男だよな……? 結構屈強な成人男性だよな?」

旅人「いやん。もう、そんなひどいこと言うと、イイコト教えてあげないわよ?」

勇者「結構っす……」

旅人「勇者ちゃんが一番ほしい情報だと思うんだけどねぇ」

勇者「一番ほしい…?ま、まさか魔王城か!?」

旅人「んっふっふっふ、せいかぁい」バチコン

勇者「ゥオエ…ッ うっぷ、教えてくれ!魔王城はどこにあるんだ?」

 

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84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 19:49:26.74 ID:x0EC40q4o


旅人「そうね。勇者ちゃんなら大丈夫そうよね。あたしもはっきり覚えてるわけじゃないんだけど
   ちょっとドジって海で死にかけちゃってさぁ」

勇者「で?」

旅人「もうこれ完全天国コースだわ、って思ってたら、なんか竜があたしをでっかい城に運んでくれててさあ。
   魔王様、漂流者みたいです。とか言ってて」

勇者「魔王に会ったのか!?」

旅人「会った、と思うんだけどねぇ。ここから記憶があいまいで、そのあとは太陽の王国の宿屋で目を覚ましたわ。
   覚えてるのは血みたいに真っ赤な瞳だけね。多分魔王の目だと思うけど」

勇者「お、お前、魔王に会って生きて帰ってこれたのか……」

旅人「まああたしみたいなゲテモノ、さすがの魔王もいらなかったんじゃない?」

勇者「ああ納得……じゃなくて!えっと、その、口調以外はまあまあだと思うぞ」

旅人「あらぁん、嬉しい☆ 勇者ちゃんうわさ通りの色男ね☆」

勇者「やめろひっつくな」

 

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85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 19:50:30.91 ID:x0EC40q4o



勇者「魔王城は海の向こうにあるのか。もっと思い出せることは?」

旅人「あんまりないのよ。多分島だったと思うけど。あとは覚えてないわ。
   でもその時あたしが旅してたのが星の国と太陽の国の狭間くらいだったから
   もしかしたらそこの海に近いところかもね」

勇者「なるほど。ありがとう。次の行き先が決まった」

旅人「んふふ。がんばってねぇ、あたし応援しちゃう。
   じゃ、そろそろあたし帰るわ。いつかまた会えたらいいわね」

勇者「あんたはこの村の次はどこへ?」

旅人「さあね。歩きながら考えるわ。ばいばい、勇者ちゃん」ブチュ

勇者「」

旅人「ごちそうさま、うっふふ」

勇者「」


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86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 19:53:06.21 ID:x0EC40q4o



勇者「うぐぅぅ…… 今思い出しても吐き気が」

魔王「待ってくれ、勇者くん。私もその旅人を知ってると思う」

勇者「え」

魔王「汚れた金髪、碧眼で女のように振る舞う大男だろう?その者は確かにこの島に流れ着いて私たちが介抱したのだ」

勇者「おお。じゃあやっぱりあいつの言ってたことは本当だったのか」

魔王「でも、おかしいな。たまに奴みたいな者が島に流れ着くが、人里に返すときは必ず忘却呪文をかけてるのだ。
   完全にここの存在を忘れるようにな。なんでその旅人は記憶をもってる?」

勇者「さぁ……。お前が魔法ミスったんじゃないのか?」

魔王「まあ確かにあの日は寝不足だったけど。まさか。い、いやあり得ない。大丈夫だ、…多分」

勇者「めちゃくちゃ動揺してんじゃねーかよ。うっかりか、うっかりさんなのか」

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87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 19:53:45.69 ID:x0EC40q4o



魔王「それで、ダンジョンとやらには行ったのか?」

勇者「ああ。割と見境なしにいろいろ入ったぜ。伝説の武器とかとりにな
   一番大変だったのは、俺のこの剣をもらった時の神殿だよ。ほんと死ぬかと思ったわ」

魔王「時の神殿……本で読んだことがある。最奥に辿りついた者は、時を司る女神に会えるとか」

勇者「ああ、会った会った」

 

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88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 19:55:00.37 ID:x0EC40q4o


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時の神殿


勇者「はぁ、はぁ、やっと辿りついた」ボタボタ

戦士「去年死んだばあちゃんが、視界の隅で手をふっている……」ボタボタ

神官「ごめんなさい、二人とも。MPがもうほとんど枯渇していて。そうでなければ今すぐ治療できるんですけど…」

勇者「き、気にするな、神官。俺たちなら大丈夫だ ゴフ」ビチャア

神官「勇者様ァーーーーーーーー!」

戦士「む、あそこの光る球はなんだ?」

神官「あ!もしかしたらあれが女神様のいる場所への鍵かもしれませんよ!さっそくさわってみましょう!!」

戦士「お、おい」


パァァァァアッ

 

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89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 19:56:10.83 ID:x0EC40q4o


女神「『女神だけどなんか質問ある?』っと……」カタカタカタ ターン

女神「やべっ 金曜ロードショー始まる!!あーんもう、こんな時に限ってリモコンみつかんない!くそっ!!
   あ、オコタのなかにあったわ。 やっぱジ○リは紅○豚一択っしょ」

勇者「」

女神「ラーメンでも食いながら見よっかな。皿洗いたくないし、鍋のままでいいや……はー うま」ズルズル

神官「」

戦士「」



女神「………………ん?」

勇者「えっと……ごめんください……」

女神「fじぇいおあぐれおあjdfs!?!?」

女神「い、一分待ちなさい!!!」

 

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90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 19:59:22.35 ID:x0EC40q4o


キラキラキラキラ…


女神「よくぞここまで辿りつきましたね、勇者よ……
   ここは時の神殿最奥部。私は時を司る女神です」

勇者「あ、はい」

神官「さっきの珍妙な器具たちが全て隅に押しやられてますね…」

戦士「シッ!」

女神「先ほどのことは忘れなさい……」

勇者「あ、あれは一体?」

女神「……私は未来現在過去、全ての時を操れますので。あれは未来から持ち出してきた物品です。
   打ち明けたんだから、このことはお忘れなさい。いいですね?」

勇者(なんちゅう女神だ…)

戦士(ダ女神……)

 

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91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:01:04.32 ID:x0EC40q4o



女神「ここまで辿りついた勇者には、この聖剣を与えましょう」

勇者「これが伝説の……」

女神「剣に埋め込まれている石を見なさい。それは一度だけ時を巻き戻すことのできる聖石です」

勇者「ま、まじで!?さすが伝説の聖剣!!」

女神「ただし、その代わりあなたの命を頂きます」

勇者「なんだそれ!? 意味ねーじゃん!」

女神「代償なしで時空を捻じ曲げることができるわけないじゃないですか。
   人間ごとぎが調子のらねーでほしいです」

戦士「だんだん素に戻ってるぞ、女神様」

女神「まあ勇者なんですから、世界のために俺の命を捧げるーみたいな感じで、その石を使うときもくるんでしょ?どうせ
   さあ、剣は与えました。私はテレビ見たいので、さっさと神殿から出てってください」

神官「せ、せめて二人の治療をお願いします!血だらけなんですよ!」

女神「チッ わかったよ。はい。
   じゃあね、ばいばい」

勇者「ちょ」


パァァァァァァアッ

勇者「強制的に追い出された」


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92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:05:03.13 ID:x0EC40q4o



魔王「うそつくな。女神がそんなだらしないわけないだろう」

勇者「気持ちは分かるが、事実だ」

魔王「……」

勇者「そんな落ち込むなよ。多分、ほかの神はあんな風じゃないはずだ。そ、そう信じたい」

魔王「そ、そうだな。これが、その剣か」

勇者「おう」

魔王「……きれいだな。石は見たことのない色をしている。これが……
   勇者くんにぴったりだ」

勇者「褒めてもなんもでねーぞ」

魔王「本音を言ったまでだ」

 

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93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:06:30.05 ID:x0EC40q4o



魔王「勇者くんとずっと、こうして話をしてみたかった。私はとても嬉しいぞ」

勇者「……でもさ、お前ら魔族はずっと人間に迫害されてきたんだろ?なんでそんなこと言えるんだよ。
   俺はお前らに憎まれても仕方ない存在だろ」

魔王「私は別に恨んでないぞ。……勇者くんの噂を魔女と竜人ごしに聞いていてな。
   会って、みたかったのだ。魔王城の居場所が…ばれてはまずかったのだけれど……」

勇者「お、おい、寝るなら自分の部屋で寝ろよ」

魔王「いや、まだ眠くない。ねむくな…………グー」

勇者「寝てんだろーが!ばか、俺はどこで寝りゃいいんだよ」

魔王「ぐー」

勇者「おおおおおおい」

 

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94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:08:31.20 ID:x0EC40q4o


* * *


コンコン


竜人「魔王様?魔王様、朝ですよ。入りますよー」




シーン…



竜人「魔王様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!?? ど、どちらに行かれたんですかぁぁぁぁぁぁ!!!」

竜人「勇者、貴様かぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!ブチ殺すぞッッあの青二才がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


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95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:10:20.70 ID:x0EC40q4o




勇者「だからちげーって言ってんだろ!なんで俺が追われなくちゃいけないんだよ」シュンッ

勇者「くそ、なんでこうなった。魔王のせいだぞ」


魔族子「あ、勇者だー!」

魔族子「勇者だ勇者だ!」

魔族子「遊んで遊んでー!」

勇者「は?お前ら学校だろ」

キマイラ「まだ授業まで時間ありますから」

勇者「そうなのか。どうせ竜人が落ち着くまでは城に帰れないしな……
   よしっ、なにして遊ぶか!」

魔族子「わーい!!」

 

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96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:12:44.05 ID:x0EC40q4o


勇者「さて、学校も始まってしまって、暇になったな。まだ竜人はマジギレ中だろうし……商店街でも見てるか」



魔族「おう勇者さん!果物はいらんかね?とれたて新鮮だぜ」

勇者「へえ… これはなんて果実なんだ?見たことないな」

魔族「この村でしか獲れない果物さ」

勇者「おいしそうだな、ひとつもらってこう」

魔族「毎度!」


魔族「勇者さん、新しい靴はいかが?」

魔族「おっ 勇者じゃないか。城での生活はどうだ」

勇者「おかげさまで」

魔族「魔王様や竜人様、魔女様によろしくな!」



ハーピー「……」スタスタ

勇者「ん? あれは…」

 

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97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:13:42.25 ID:x0EC40q4o


ハーピー「……あっ! りんごが…」コロン

コロンコロン…

勇者「…はい、どうぞ。そんなに買い物袋にたくさん詰め込んでたら、家につくまでに全部転げ落ちるぞ?」

ハーピー「あ… 勇者さん」

ハーピー「あ、ありがとう…ございます」

勇者「気にすんなって。じゃあな」


ハーピー「あのっ!」

勇者「ん?」

ハーピー「……この間は、すいませんでした」

勇者「謝らないでくれよ。お前はなんも悪くないだろ」

ハーピー「勇者さんって、優しいんですね。人間にも怖い人ばっかりじゃないって知ることができました。
     魔王様が島にいれた方ですもんね、怖い人なわけなかった」

勇者「買いかぶりすぎだって」

 

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98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:15:13.18 ID:x0EC40q4o



ハーピー「いえ、なんとなくわかりますよ。村のみんなもそう言ってますし。そうだ、これ。
     城でみなさんと食べてくださいな」

勇者「こんなにもらっちゃ悪いよ」

ハーピー「いいんです。父の畑でとれたものですから。この間の非礼のおわびに! では、失礼します」

勇者「悪いな。ありがとう」



がやがや
 がやがや

勇者「あかりが灯ってきたな… そろそろ帰っても大丈夫だろうか」

戦士「お、勇者ではないか」

勇者「戦士!なにしてるんだ?」

戦士「魚人の酒場に行こうと思ってな。勇者も一緒にどうだ?」

勇者「げっ お、俺はいい…」

戦士「まあまあそう言わずに」ガシ

勇者「放せよ!おい!!」

 

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99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:18:00.89 ID:x0EC40q4o



魚人「らっしゃーい! って、勇者と戦士じゃねーの!!よく来たな!座れ座れ」

戦士「おすすめの酒を頼む」

勇者「俺は未成年だから酒は飲まないぞ」

魚人「オコチャマでちゅねー しゃーないな、勇者には特製イモリジュースだ!」ドンッ

勇者「飲めねーよ」


ガラッ


魔女「今日は外食だー!わーいわーい!っしゃあ酒飲むぞー!!」

魔王「飲みすぎるなよ。お前は酔っ払うと面倒くさいんだから」

神官「お酒ですか……ちょっと楽しみですねエヘヘ」

竜人「こんばんは、魚人。席は空いてますか…………あ」


勇者「あ」

 

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100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:21:14.62 ID:x0EC40q4o



勇者「だから誤解!いや誤解っつーか俺なんも悪くないし!」

竜人「うるせーこのロリコン勇者が!!魔王様の半径10m以内に近づかないでください!」

勇者「お前ちょっと頭おかしくない!? ロリコンじゃねーよ!!ふざけんな!!」


魔王「だれが竜人の子だ、だれが」


戦士「っはっはっはっは、いいぞ、もっとやれ!!」

魔女「あははははは!あはははははは!あはははははは!」

神官「なーんかぽわーんとしてたのしいですー えへへへへへへへへ」

魔王「」

魔王「ま、魔女はいいとして神官は大丈夫なのか、これは」

神官「だーいじょーぶでーっす!」

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