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​101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:22:44.68 ID:x0EC40q4o

 

 

竜人「二度目はありませんからね チッ」

 

勇者「こええよ……えらい目にあった。はぁ、それにしても騒がしいな」

 

勇者「うちのテーブルもだけど……」

 

 

魔族「がっはははは!そんでどうしたんだ?」

魔族「そんでうちの女房がさぁ…」

 

 

がやがや がやがや

 

 

勇者「大繁盛だな、魚人」

 

魚人「ったりめーよ。俺の店だぜ?」

 

勇者「ははは。……」

 

 

 

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102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:24:15.56 ID:x0EC40q4o

 

 

勇者「いい村だな。ここは。……魔王、俺決めたよ」

 

魔王「ん?」

 

勇者「この島に来たことは誰にも口外しない。

 

勇者「お前たちや、この村に住んでる魔族が戦争なんか起こしそうもないし。

   人を襲う奴もいるようには見えない。多分、俺が王から聞いた話はデマだったんだろう」

 

魔王「……ありがとう。勇者くん」

 

勇者「こんないい村を作って、ずっと守ってるお前はすごいと思うよ、これからも頑張れ」

 

魔王「うん」

 

勇者「明日、王への謁見のために、王国へ帰る。そのまま俺たちは大陸で旅を続けよう。

   短い間だったが、世話になった。ありがとう」

 

魔王「そうか。いつかまた、気が向いたときにでも島に寄ってくれ。

   私も勇者くんと会えてよかった。楽しかったぞ」

 

勇者「……お前、笑うときは笑うんだな」

 

魔王「ん?」

 

 

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103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:27:09.07 ID:x0EC40q4o

 

 

 

勇者「いつも笑ってた方がかわいいと思うぞ」

 

魔王「わっ… 頭をなでるな。髪がぐしゃぐしゃになるだろう」

 

勇者「次会うときは、背も伸びてるといいな。ははは」

 

魔王「や、やめろ」

 

 

 

魔女「えぇぇぇぇーーー勇者たち帰っちゃうのぉ?さーびーしーいー!」

 

神官「もうちょっといましょうよぉぉー ねー勇者様ー」

 

戦士「まだまだぁ!呑みたらんぞ!!」

 

魚人「あんたつえーな!呑み比べ3連勝だ!!」

 

竜人「あー おいしいですねこのお酒。あれ もう空ですか」

 

魔族「竜人様は相変わらずザルですね…」

 

 

勇者「……よしっ!魚人、俺にも酒だ!」

 

魔女「いえーーーい!!勇者の一気飲みだー!!」

 

神官「勇者様のっ ちょっといいとこ見てみたいっ!!」

 

魔王「だ、大丈夫か?」

 

 

がやがや がやがや

 

 

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104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:29:18.79 ID:x0EC40q4o

 

 

次の日 朝

 

 

勇者「忘れ物ないか?」

 

神官「ええ…大丈夫、です……」

 

戦士「頭が、割れそうだ…」

 

 

竜人「だから呑みすぎはよくないって言ったじゃないですか」

 

魔女「YES!飲酒、NO!二日酔い」

 

戦士「お主たちが異常なのだ……うう…」

 

 

魔王「勇者くんたち。島のことを口外しないでくれてありがとう。今一度お礼を言わせてくれ」

 

勇者「礼を言うのは俺たちの方だ。今まで誤解していて悪かったな」

 

魔王「元気で。また会おう」

 

勇者「そちらこそ元気で。また会うときはよろしくな」

 

 

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105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:30:35.31 ID:x0EC40q4o

 

 

 

勇者「じゃあ、転移するぞ。神官、戦士、掴まれ」

 

魔王「……勇者くん、本当にまた…会えるのだな?」

 

勇者「ああ、必ず!再会を誓おう」

 

 

竜人「さようなら」

 

魔女「まった来てねー」

 

 

 

 

魔王「……またいつか」

 

 

シュンッ

 

 

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106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:31:51.81 ID:x0EC40q4o

 

 

 

王国

 

 

シュンッ

 

勇者「ふう」

 

神官「戻ってきましたね」

 

戦士「懐かしいな」

 

勇者「そのまま、王宮に向かうか。分かってると思うが、魔王城のことは秘密だぞ。うまく口裏を合わせてくれ」

 

神官「ええ、分かってますよ」

 

 

戦士「それにしても、ここ数日の経験は驚愕に値するものだったな」

 

神官「本当に……。でも、私たち以外の人々がこれからも魔族のことを誤解したままっていうのも、なんだか、納得いきませんね」

 

勇者「ああ。どうにかあいつらのことを知ってる俺たちで、なんとかしてやりたいがな。難しいものがあるよな…」

 

戦士「誤解をとくためには魔王城に行ったことを明かさざるを得ぬからな。

   でなければ根拠のないただの空想を語ってるに過ぎん」

 

勇者「まあ、そのことは王の謁見が終わったら考えよう。そろそろ王宮だ」

 

 

 

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107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:35:14.78 ID:x0EC40q4o

 

 

 

兵士「勇者様、お久しぶりでございます。王が玉座の間にてお待ちです」

 

勇者「ありがとう。さ、行くぞ。覚悟はいいか。特に神官。お前顔にでやすいから気をつけろよ」

 

神官「そそそそんなことないですよっ」

 

 

 

王「帰ったか、勇者よ」

 

勇者「はい」

 

王「お主の噂は他方から私の耳にはいってくるぞ」

 

勇者「お褒めに預かり光栄です。しかし、魔王の居所については依然手がかりがつかめず……申し訳ありません」

 

王「いや、よいのだ。もうそれは」

 

勇者「……?」

 

 

勇者「どういう、ことでしょうか」

 

 

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108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:40:40.18 ID:x0EC40q4o

 

 

王「預言者が魔王城の在り処をつきとめたのだ」

 

勇者「!?」

 

神官「……!」

 

戦士「!!」

 

勇者「なっ……なぜ今になって!?」

 

預言者「占いには魔力の痕跡を辿る必要がありますから、魔王の魔力を感知しないことには居場所を占いこともできません。

    今まで魔王の魔力は何かしらの術で完全に遮断されていたようで、私もなすすべがなかったのですが。

    

預言者「一週間前……一瞬だけ微かに魔力を感知することができました。

    それを元にしてようやく魔王の居所をつきとめることができたのです」

 

 

勇者「一週間ほど、前?」

 

王「本当はもっと早く勇者に伝えられればよかったのだが。

  急な話ですまんが、明後日魔王城に攻め入る計画を立てている」

 

勇者「な…!?」

 

王「勇者、神官、戦士。お前たちも魔王を討つために力を貸してほしい。

  さっそくだが準備を整えてくれ」

 

 

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109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:41:45.13 ID:x0EC40q4o

 

 

王「どうした?顔色が悪いが」

 

勇者「いえ、武者震いです。明後日の件、了解しました……」

 

王「そうか。今日は長旅で疲れているだろう。ゆっくり休みなさい」

 

勇者「失礼します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バタン

 

勇者「おい、どーする!?!?」

 

神官「やばいですよ やばいですよ!!」

 

戦士「お、落ち着け」

 

 

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110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:50:43.34 ID:x0EC40q4o

 

 

 

勇者「一体なんで預言者が急に……!とりあえず、魔王に伝えなきゃな」

 

戦士「作戦の概要を、将軍に聴いてこよう」

 

神官「そ、そうですね。私は教会の魔法使いの人たちに話を聴いてきます」

 

勇者「ああ、頼む。転移魔法は一日一回しか使えないから、明日朝一で魔王城に向かおう」

 

神官「本当は今すぐにでも伝えられたらいいんですけど……!」

 

戦士「言っても仕方ない。今俺たちができることをしよう」

 

 

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111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:52:34.69 ID:x0EC40q4o

 

 

 

魔王「……」パラパラ

 

竜人「……」

 

魔女「……」

 

 

 

魔女「魔王様ー、その本おもしろい?」

 

魔王「ああ、なかなかおもしろいぞ」

 

魔女「表紙が上下逆ですケド…」

 

魔王「……む」

 

 

竜人「ま、魔王様。大丈夫ですよ、すぐにまた勇者様たちいらっしゃいますって」

 

魔王「別に寂しがってるわけではない」ギロ

 

竜人「そうですよね。失礼しました」

 

魔王「含み笑いするな。ハァ、学校にでも顔を出してくるか…」

 

 

 

ヒュンッ

 

 

勇者「魔王!!」

 

 

 

 

 

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112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:53:35.31 ID:x0EC40q4o

 

 

 

魔王「!」

 

竜人「おや勇者様!ちょうどいい」

 

魔女「え、なに忘れ物?パンツでも忘れてった?」

 

勇者「ちげぇ!!大変なことになったんだ!!」

 

 

 

 

魔王「なに…?」

 

竜人「魔王城の居場所がばれた!?」

 

勇者「明日、王国軍が森から攻め入ってくる」

 

神官「教会の魔術師部隊の精鋭も一緒だそうです…」

 

 

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113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 20:58:30.77 ID:x0EC40q4o

 

 

 

魔女「でもさ、おかしくない?なんでそっちの預言者がいきなり最近になってここの居場所を突き止められたわけ?

   この城は10年前からあるんだよ?」

 

魔王「……」

 

魔女「結界はさ、魔王様が10年前からずっと維持してるんだよ。

   物理攻撃・魔法攻撃を防ぐのも勿論、魔力の漏えいも防いでる。どんなすごい魔術師だって感知することできないって」

 

勇者「魔女と竜人はよく結界を抜けてるんだよな?その時に魔力が漏えいする可能性は?」

 

魔女「ないない。魔族は結界を自由に通り抜けられるんだからさ」

 

勇者「……ん?」

 

魔王「……確かに魔女や竜人が出入りする分には問題ない。しかし外から解かれた場合は、別だ」

 

「「「「…………」」」」

 

 

勇者「……俺か!!!!!!」

 

神官「勇者様~~~~~~!!!」

 

魔女「勇者ぁ…………」

 

勇者「ごめん!!!!ごめんなさい!!!!」

 

 

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114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 21:00:47.35 ID:x0EC40q4o

 

 

勇者「そうか……一週間前、魔王城に辿りついた時、魔法を使ってこの城の結界を一時的に解いてしまったんだった……」

 

魔王「勇者くんのせいではない。まさかあんな一瞬で預言者に居場所がバレるなどとは思ってなかった。完全に私の落ち度だ。

   こんなことなら迷いの森にいる時点で、覚悟を決めて勇者くんを迎えに行けばよかった」

 

竜人「まあ、あのときは森で迷って引き返すならそれはそれでいいかなって感じでしたしね」

 

 

 

魔女「てかさ、どーすんの?明日」

 

魔王「軍は森から到来するのだったな」

 

勇者「ああ、そうだ」

 

魔王「それなら、森の幻術を強化しておこう。魔女も協力してくれ。

   また森から来るのなら、海を渡るための舟もろくなのを持ってこれないだろう」

 

魔王「万が一森を抜けられたら……海で迎え撃とう」

 

竜人「そうですね」

 

 

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115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 21:02:10.52 ID:x0EC40q4o

 

 

 

勇者「できるのか?」

 

魔王「できなくても、やるつもりだ。私の命に代えても」

 

勇者「……すまない、俺のせいで。……やっぱり、今から王を説得してくる!」

 

魔女「やめなよー、そんなの怪しすぎるって。勇者が魔王討伐を止める理由ってなによ?」

 

勇者「理由はないが、なんとかしてやる……!」

 

竜人「勇者様、責任を感じているのならよしてください。もともと私たちの問題ですしね」

 

魔王「そうだ、勇者くんはそちらの国王に言われた通り、軍に合流してくれ。そうしないと不自然だ」

 

魔女「なーに、300人くらいならへっちゃらだって!私の幻術でみんな森で足止めさせてやるからさ!」

 

 

戦士「すまぬ、魔王殿」

 

神官「ごめんなさい……力になれなくて」

 

 

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116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/05(月) 21:02:51.72 ID:x0EC40q4o

 

 

 

魔王「事前に計画を知らせてくれただけでも十分すぎるほどだ。これで対策も練れる」

 

勇者「一応聴いときたいんだけどさ、魔族で戦えるくらいの戦闘力をもってるのってどれくらいいるんだ?」

 

魔王「私と」

 

魔女「あたしとー」

 

竜人「私ですね」

 

勇者「3人だけかよ! 本当に大丈夫か!?」

 

魔王「大丈夫だ。それより勇者くんたちも私たちと接触したことを悟られないように気をつけてくれ」

 

勇者「あ、ああ……」

 

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121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 21:12:56.25 ID:FSYoAYWbo

 

 

 

2日後

 

 

将軍「ここが迷いの森か。この先に魔王が……

   魔族の妨害があるかもしれん、慎重に進め!」

 

兵士「はい!」

 

勇者「……」

 

勇者(結局俺は何もできずに侵攻の日を迎えてしまった。でも、いざとなれば、これで魔王たちを助太刀しよう)

 

神官「勇者様、それなんです?」

 

勇者「露店で売っていた東洋の仮面だ。万が一の時には、これを被って魔族のふりをして戦うつもりだ」

 

神官「わあ!さすがです勇者様!それなら絶対勇者様だってばれませんよ」

 

戦士「それは、ひょっとこと呼ばれる仮面じゃあないのか…?」

 

 

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122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 21:14:49.59 ID:FSYoAYWbo

 

 

将軍「く……さっきから同じところをぐるぐるとまわっているな。勇者殿、魔法でなんとかなりませぬか!?」

 

勇者「すまん、わからん。全っ然わからん」

 

将軍「そうですか……」

 

魔術師「将軍、お時間さえ頂ければ、我ら魔術師部隊がこの幻術を解いてみせましょう」

 

勇者(まじか)

 

 

魔術師「……魔法陣が完成しました……アンチスペル発動します。離れてください」

 

神官「あんな大がかりな呪文を…… うわ!まぶしっ!!」

 

魔術師「成功です。森の幻術は消えました」

 

将軍「よくやった!さあ、夜が明けぬうちに先に進むぞ!!」

 

 

勇者(くそっ)

 

 

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123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 21:16:00.39 ID:FSYoAYWbo

 

 

兵士「森を抜けました!海です!」

 

将軍「ようやく抜けたか。軍の約三分の一の者が、なぜか錯乱して使い物になくなっているのだが、これも魔王の仕業か。小癪な真似を」

 

戦士(魔女殿か)

 

勇者(魔女だな)

 

神官(えげつないほどの薬の効き……間違いなく魔女さん)

 

兵士「ヒィーーーハハハハwww」

 

兵士「アロエリラルエ……アルレ……」

 

勇者(こわい)

 

 

将軍「あれが魔王城、か。総員油断するなよ!舟に乗りこめ!!魔王城に侵入するぞ!!」

 

兵士「うおおおお!!!」

 

 

 

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124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 21:16:43.00 ID:FSYoAYWbo

 

 

将軍「勇者殿!あなた方のパーティにはぜひ先陣をお任せしたいのですが!」

 

勇者「ああ、承知した。行くぞ戦士、神官」

 

 

兵士「おい、なんか勇者殿、テンションひくくね……?」ヒソヒソ

 

兵士「ほんとだ……どうしたんだろうな……」ヒソヒソ

 

 

 

 

勇者「絶対にこの手で魔王を討ち取るぞ!!!勇者の名にかけて!!!

   聖剣の錆にしてくれるわ ウオォーーーーーー!!!!」

 

 

 

兵士「す、すげえ気迫だッ!?」

 

兵士「さすが勇者殿!!」

 

 

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125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 21:18:03.51 ID:FSYoAYWbo

 

 

 

ヒュオォォォ……

 

 

魔王「きたか……」

 

魔女「やっぱ舟ちゃちぃね。これならいけそう?」

 

竜人「ですかね。 おや、先頭にいるのは勇者様たちではないですか」

 

魔王「夜目がきくな、竜人。私の目では何も見えん。もう少し月明かりがあればいいのだが。

   まあ、いいか。勇者くんたちが先頭なら、多少の無茶も大丈夫だろう」

 

魔女「私は森のトラップ頑張ったから休んでていい?」

 

魔王「ああ、私と竜人にまかせてくれ。……いくぞ。言っとくが殺すなよ。戦争の口実を与えないために」

 

竜人「分かってますよ、魔王様」

 

竜人「この姿に戻るのは久しぶりですね…」

 

 

バサッ!

 

 

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126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 21:19:03.43 ID:FSYoAYWbo

 

 

神官「……わー」

 

戦士「……おお」

 

勇者「……。何が戦力的に月とミジンコほどの差がある、だよ。嘘をつけ、嘘を!!!」

 

勇者「これの、どこが!!」

 

 

 

 

ゴォォォォオオオオオオッッ

 ザッパーーーン!!

ビュォォォォォォッ

 

竜「ガァァァァッ!!!」

 

 

兵士「うわぁぁぁぁぁ!!!波に飲まれるーー!!」

 

兵士「前に進めません将軍!!!舟が転覆します!!」

 

兵士「ぎゃーーーー!火を噴くドラゴンだーーーーー!!」

 

 

勇者「これのどこがミジンコの戦力なんだよ!!!」

 

 

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127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 21:24:06.41 ID:FSYoAYWbo

 

 

魔王「水魔法、風魔法。 これくらいでいいかな

   周りが海だと防衛面で楽だな」

   

   

   

ビュオオオ

 

ギャーー

 ワーー ザッパーーーン

 

 

魔王「……ちょっとやりすぎか?範囲が広いと加減が難しい……」

 

魔王「……まあ、大丈夫か」

 

 

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128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 21:25:36.34 ID:FSYoAYWbo

 

 

 

魔王「勇者くんなら、多少私たちが無茶をしても大丈夫だろう。手加減むずいし」

 

 

勇者「……って絶対考えてるだろ、あいつ。 せいっ!!」ズバッ

 

兵士「勇者殿!炎さえ斬るとは……!!助かりました!」

 

戦士「むんっ!海に落ちた者はほかにおるか!?」ザパッ

 

神官「ええと、怪我した人はいますかー!?」

 

 

将軍「っく!!この嵐とドラゴンでは、撤退するほかないか……!!

   一時撤退だ!岸まで戻れーーー!!」

 

 

 

 

竜人「やりましたね」バサッ

 

魔王「よかった。あとは……」

 

竜人「なにをするおつもりで?」

 

魔王「もうここの場所がばれているとなれば、することは一つだろう」

 

 

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129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 21:26:11.11 ID:FSYoAYWbo

 

 

 

勇者「はっくしゅっ!」

 

神官「はぁぁ、ずぶぬれですね」

 

戦士「さすが魔王か。あんな嵐を引き起こすほどの魔力があろうとは……それにしても疲れたな」

 

 

将軍「くそ、夜間に襲撃したのに何故もうこちらの存在に気づかれているんだ。

   それにしても舟がもう少し立派なら……」

 

猫「こんばんは、王国軍の将軍よ」

 

将軍「むっ!?!?」

 

 

魔術師「将軍!その猫は使い魔です。きっと魔王の……!」

 

将軍「なに!!叩き斬ってやるわ!」ジャキ

 

猫「やめて頂きたい。ただ私は貴公に話があるだけだ」

 

将軍「話だと!?」

 

 

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130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 21:27:01.48 ID:FSYoAYWbo

 

 

猫「人と争うつもりはない。私たちはそちらに干渉しない、なのでそちらも私たちを放っておいてくれないか」

 

将軍「信じられると思うか?魔族め。 悪逆の限りを尽くす魔王よ、貴様は必ず!!ここにいる勇者殿が倒す!!」

 

勇者「……お、おうっ!」

 

猫「言っても聞かないか。ならこの文を、人の王に届けてほしい。承諾してくれるなら、森からすぐに脱出させてやろう」

 

将軍「取引をしかけようと言うのか、魔王……!」

 

猫「邪推するな、先ほどの嵐でかなり疲弊しているようだったから手をさしのべたまでだ」

 

将軍「……くそ、分かった。受け取ろう」

 

猫「ありがとう」

 

 

 

 

戦士「ふう。なんとかなったな」

 

神官「ええ、ホッとしました…」

 

勇者「……むしろこれからどうなるか、だな。問題は」

 

神官「え?」

 

 

 

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131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 22:05:22.86 ID:FSYoAYWbo

 

 

 

王国 城

 

王「……魔王の手紙だと?」

 

将軍「ええ。呪いの類はかかっていないようです。魔術師に調べさせました」

 

王「ほう。……」

 

勇者「どのような内容が?」

 

王「戦争をしかける意志はない。島から出るつもりもない。人とは友好的関係を築きたい、と」

 

勇者「……あちらが人に危害を加えるつもりはないと言っている以上、こちらも何もしない方がよいのではないですか?」

   悪事を働かぬ魔王なら、討伐する必要はないと思いますが」

   

王「何を言っておる、勇者? 魔の者の言葉を信じるのか?」

 

勇者「相手は魔の者と言えど、意志伝達のできる生物です。それに、この度の魔王城侵攻でも、死者はでませんでした。

   あの魔法で作られた嵐の規模を見るに、魔王にとって我らを皆殺しにすることは容易かったはず。

   それでも今我々が生きてここにいるのは、奴が手心を加えたからに違いありません!」

   

王「勇者よ、考えが少し甘いな。魔族などどいうものの言葉を素直に受け取ってはいかん。裏の裏を読まねば。

  ここで奴らを見逃したら、いつ何時、復讐に燃えた野蛮な連中が王国に攻め入らんとも分からん」

  

王「それに魔族が絶滅すれば、未開拓の大陸北部にも本格的な調査団が出せる。

  大陸北部が我が国の領土にできればどれほどの利益を生むか、想像してみるといい」

  

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132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 22:07:39.29 ID:FSYoAYWbo

 

 

 

勇者(利益だって……?)

 

王「さて、今回の討伐では舟が悪かったな。艦砲を搭載した軍艦の使用を許可しよう」

 

将軍「しかし、王よ。迷いの森を抜ける以外に魔王城へ辿りつく方法があるのですか?」

 

王「長い航路を辿れば可能だ。我が国も東洋諸国との交易の経験により、昔よりは航海術も進歩した。

  そうだな……1カ月後だ。1カ月後に再び魔王城に向かうぞ。勇者よ、今度こそ魔王を倒すことを期待しておる」

  

勇者(艦砲!?)

 

勇者「ま、待ってください!」

 

王「なんだ?」

 

勇者「王、あなたは魔族が人を度々襲ったり誘拐したりしていると仰ってましたが、俺たちの旅では魔族に一度も遭遇しなかったんです。

   出会った村の人々に聴いてもそうだと言ってました。

   つまり、昨今魔族は全く人の住む地に現れていないのです」

   

勇者「彼らは……本当は無害なのではないですか? 本当に、殲滅しなければいけない存在なのでしょうか?」

 

王「……」

 

 

王「やけに魔族の肩をもつな、勇者?」

 

勇者「ッ……」

 

王「なにか、旅の途中で価値観を変えるようなことがあったのか?」

 

 

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133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 22:08:26.29 ID:FSYoAYWbo

 

 

 

勇者「そのようなことは、ありませんでしたが。しかし……今一度よくお考えになった方がよろしいのでは、」

 

王「お前の王国への忠誠心が変わっておらず、安心したぞ 勇者よ」

 

勇者「……はい」

 

王「さて、これから私は大臣たちと会議がある。対魔王の策を練らねばな。下がってよいぞ」

 

勇者「……はっ」

 

将軍「はっ!」

 

 

 

 

 

 

勇者「……」

 

 

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134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 22:09:39.03 ID:FSYoAYWbo

 

 

 

* * *

 

 

戦士「はぁぁっ!!!」ブンッ

 

 

ガキィィィン!!

 

 

戦士「なかなかの強度であるな、結界というのは。俺の渾身の一撃でもヒビひとつ入らぬとは」

 

竜人「ええ。物理攻撃も魔法攻撃も跳ね返すように作られてます。

   しかし魔法はともかく物理攻撃は、今の戦士様の剣や弓の攻撃を基準に考えられたのであって……」

   

魔女「大砲はどーなんだろねー」

 

竜人「試したことありませんからね」

 

戦士「ふむ……」

 

魔女「困ったよねー」

 

 

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135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 22:15:48.45 ID:FSYoAYWbo

 

 

 

勇者「はぁ」

 

グリフォン「浮かない顔だねぇ。はいお茶。怪しいものは入ってないよ」

 

勇者「ほんとかよ。 ま、ありがとな」

 

グリフォン「で? なんか用?」

 

勇者「……や、ちょっと、な。……この本、なんだ? あんた、子ども向けの本も読むのか」

 

グリフォン「人間社会の教育に興味があるのさ。それは勇者譚。読んでみるかい」

 

勇者「子どもの頃に読んだやつとほぼ一緒だな。勇者が仲間たちと魔王を倒す旅にでて。最後は魔王を倒して世界に平和が訪れる。

   勇者は英雄としてもてはやされて、最後は自国の姫と結ばれるってオチさ、大体」

   

勇者「俺は勇者に選ばれたとき嬉しかった。普通誰だってそう思うだろ?世界を救う英雄になれるってんならさ。

   ……この本みたく、現実も簡単ならよかった。魔王も悪い奴で、人々は虐げられてて、そうだったなら……

   あ、悪い。あんたに言える話じゃないよな」

   

グリフォン「別に気にしなくていいさ。話半分に聞いてるから」

 

勇者「そっか。……俺、どうしたらいいのか分からないんだ。魔族を救ってやりたい。でもどうすればいいのか…。

   俺は勇者なのに無力だ。情けない話だよな。

   あんたならどうする?街で一番の年長者なんだろ?年の功とやらで教えてくれよ」

   

グリフォン「私かい? んー……私なら、君の国の王様暗殺して、自分が王になって魔族を救うけど」

 

勇者「あ、暗殺? あんた……本気で言ってるのか?」

 

グリフォン「冗談に決まってるじゃん ブフッ」

 

勇者「殴っていいか?」

 

グリフォン「だってもしそうなったとしても、国民の魔族への負の感情は残ったままなわけだし、結局同じ歴史を辿っちゃうよねぇ」

 

 

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136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 22:22:17.85 ID:FSYoAYWbo

 

 

 

勇者「難しいな。なんでこうなっちゃったんだろうな。俺はこの島に来てみて、人間も魔族もそんな大差ないように思えたんだけどな」

 

グリフォン「難しいだろうさ。知ってるかい?

      100年前勇者に倒された先代魔王が、魔族を統一するまで、それぞれ種族同士の争いが絶えなかったそうなんだ」

      

勇者「そうなのか?」

 

グリフォン「魚人とマーメイド族。ケンタウルスとエルフ。ヴァンパイアと悪魔族。ずっと戦いが続いてた。人間だってそうじゃないの?」

 

勇者「……そういえば、そうだな。王国ができる前はもっと小さな都市同士で争いが続いてた」

 

グリフォン「だろう?つまり、魔族同士、人間同士でだって、違う種族・民族間で手を握り合うのは至極困難なことなんだ。

      どうして魔族と人間がそれぞれ魔王や国王のもと、一つにまとまったかっていうと、多分お互いの存在が鍵だったんじゃないかな。

      ほら、よく言うでしょう。敵の敵は味方だって」

      

勇者「より大きな敵から身を守るために、敵同士まとまったってことか」

 

グリフォン「だからさ、魔族と人間も、もっと強大な敵が新たに現れれば団結するかもねぇ」

 

勇者「宇宙人でもこの世界を侵略しに来ねえかな……って、来るわけないだろ」

 

グリフォン「はははは。まあ、なんとかなるさ。ところで私はいま本を読むだけじゃなく、書いてもみているんだ」

 

勇者「へえ、どんな本?」

 

グリフォン「勇者と魔王が手を取り合う話。結末はまだ書いてないけど、ハッピーエンドの大団円さ」

 

勇者「……そうなればいいけどな。完結したら、読ませてくれよ」

 

グリフォン「いいとも。君をモデルにしているんだから、本の中の君に負けないくらい、頑張ってくれよ」ニコ

 

 

グリフォン「君はきっと、英雄になれるさ」

 

 

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137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 22:25:11.54 ID:FSYoAYWbo

 

 

* * *

 

魔女「はぁ~~~~~ 疲れたぁぁ。人間たちが来るまであと1週間かぁぁ。もう対策にヘロヘロだよ~~

   まじ勇者たちの王様ってなんなの?ちょう腹立つんですけど」

   

竜人「魔女、当日の回復薬は伝えた分全て精製できましたか?」

 

魔女「待ってあともうちょっと。ったく、回復薬じゃなくて回復役がほしいんですけど」

 

竜人「ガンガン攻めるぞパーティですからね、私たち。

   魔王様、当日の魔族全員の避難経路確保しました」

   

魔王「分かった。あとは防護結界の補強なんだが……大砲の威力とはどの程度のものなのだろう。

   一応術式を組みなおしてみたが、もっと強力なものにした方がいいだろうか」

   

竜人「そうですね。でも、これ以上強力になんてできるんですか?」

 

魔王「正直かなり難しいが、結界は破壊されたら終わりだからな。やれるところまでやってみよう」

 

魔女「魔王様、ちゃんと休んでる?なんか疲れてない?」

 

竜人「……確かに。いけませんよ魔王様。研究は少しの間とりやめにして、お休みになられては」

 

魔王「軍隊がくるまでもう時間があまりないんだ、ここで私が休むわけにはいかない。

   今日は勇者くんたちが来る日だったな。私は研究室にいるから、彼らが来たら呼んでくれ」

 

 

バタン

 

 

竜人「魔王様……大丈夫でしょうか」

 

魔女「……」

 

 

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138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 22:26:33.53 ID:FSYoAYWbo

 

 

 

魔王「……」パラッパラッ

 

魔王「古い文献を見ても目ぼしいものはないな。……ならばここをもう少し変えてみれば……」カリカリ

 

魔王「いや、違うな。これでは魔力の消費が激しすぎる。あんまり結界に魔力を使っては、ほかの魔法が使えなくなる……」

 

魔王「……」カリカリ

 

魔王「……、あ」ガタン

 

魔王「しまった、インクが……ああ、せっかく……羊皮紙が全部真っ黒に…………」

 

魔王「……」

 

魔王「……」

 

魔王「……ああもう!!」

 

 

ガッシャァァァァン!!

 バサバサ……

 

 

 

……ガチャ

 

魔女「魔王様?なんかおっきな音聞こえたけど、どうし……」

 

魔王「……」

 

魔女「うわあ、よろけてぶつかっちゃったの?机の上のもの全部、床にぶちまけられてるけど」

 

 

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139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 22:28:14.22 ID:FSYoAYWbo

 

 

 

魔王「……ない…」

 

魔女「……魔王様?」

 

魔王「なにもかも、全然うまくいかない!!なんでだよ!!!なんで……!!

   私は10年前からずっと、頑張ってきたのに!!!」

   

魔女「え? ま、魔王様、どうし」

 

魔王「もっともっと強い魔法を考えないと、みんな死んじゃうんだっ!

   早くしないと、時間が、時間がないって分かってるのに!!」ダンッ

   

魔女「ちょ 落ち着いてって……まお」

 

魔王「うるさい!!!うるさいうるさいっ 大体なんで人間の王はあんなに分からず屋なんだよっ

   こっちは戦争とか始めるつもりなんかないって言ってるじゃないか!!

   どうせ権力が脅かされるのが怖いだけだろっ!!」ダンッダンッ

   

魔女「ま」

 

魔王「魔族に会ったこともないくせに!この臆病者が!!」

 

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140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 22:30:16.18 ID:FSYoAYWbo

 

 

 

魔王「一週間後もし私たちが人間どもを撃退できたとしても、いつかまた人間どもはこの島に来る。

   また逃げればいいのか?どこまで?そもそも、そんな都合のいい土地あるのか?」

   

魔王「私たち魔族は………………この世界で生きていくことすら許されないのか!?」

 

魔王「ふざけるなっ!!!」

 

魔女「魔王様、」

 

魔王「やっぱり、人と魔族が分かり合うことなんて無理なんだ……ッ!!!

   私たちの声はあいつらに掻き消されるばかりだ!!!」

 

 

魔王「私たちは……人間に勝てない……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勇者「そんなことねぇよ」

 

 

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145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/07(水) 22:54:31.18 ID:FSYoAYWb0

 

​魔王「……ッ」ギロ

 

勇者「分かり合えないなんてことはない。絶対できる」

 

魔王「所詮詭弁だ。勇者くんは人間だからそんなことが言える!私の、私たちの気持ちなんて分かるはずもない!」

   それとも慰めのつもりか?滅びゆく種族への憐憫か!?

   もういい……たくさんだ!!! もう、いやだ……」

   

魔王「人間なんか大っきらいだ!!ずっとずっとずっとずっと思ってた!!

   きらいきらい大っきらい!!!みんな死んじゃえばいい!!!」

   

勇者「……」

 

勇者「その、嫌いとか、死ねばいいってやつに、俺もはいってるのか?」

 

魔王「…………っ、……………ぅ」

 

勇者「俺もさ、この城に来て、魔王や竜人、魔女に会う前は…島に住んでる魔族に会うまではそう思ってたんだ」

 

勇者「でも今は違う。ほら、俺は勇者で人間で、お前は魔王で魔族だけど、

   こうして今は分かり合えてる。手をとりあえてるじゃないか」

   

魔王「それはっ 勇者くんが……変なんだ!」

 

勇者「違う、むしろ世界で一番ありえない組合せだろ。神だって予想できなかった組合せのはずだ。

   一番難易度の高い俺を一番最初に落としたんだから、これからはもっと容易いはずだろ?」

 

 

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142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 22:32:31.29 ID:FSYoAYWbo

 

 

勇者「人間と魔族は、共存できる。俺とお前がその証拠だ!」

 

魔王「……っ」

 

勇者「…本気で思ってたわけじゃないんだろ。ちょっと疲れちゃったんだよな」

 

魔王「……」

 

勇者「お前はひとりじゃないよ。竜人も魔女も俺も神官も戦士も、お前の味方だ。一緒にこの島を守ろう」

 

魔王「…………とり乱して、ごめん。魔女も…」

 

魔女「ううん。びっくりしたけど。魔王様、やっぱりちょっと休んだ方がいいよ!ほら、こっちのソファに座って!」

 

魔王「床かたさないと」

 

勇者「いーーから、さっさと休め!どーせ最近寝てないんだろ、お前のことだから。睡眠不足だと身長伸びないぞ」グイ

 

魔王「わっ ゆ…勇者くん。降ろしてくれ」

 

魔女「私たちがここ片づけるからさ。ゆっくり休んで! ね!」

 

 

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143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/07(水) 22:34:09.18 ID:FSYoAYWbo

 

 

 

魔王「い、いや。大丈夫だから」ワタワタ

 

勇者「濃い隈つけた奴が足掻くな。寝ろ」

 

魔王「隈などつけては…………ぐー」

 

勇者「こいつって、寝付きだけは異常にいいな」

 

 

魔女「勇者助かったよー 魔王様普段あんまり怒らないからさー」

 

勇者「だろうな。ま、大勢の期待を一身に背負うって結構きついから、ストレス溜まってたんだろ。それにこんな状況だし」

 

魔女「魔王様があんなに怒ったところ……」

 

勇者「初めて見たってか?」

 

魔女「私が勝手に魔王様のケーキ食べた時以来だよ……怖かった」

 

勇者「意外としょうもなかったな」

 

魔女「魔王様の負担を少しでも、減らさなくっちゃね。私もさっそく頑張って薬品作りますか」

 

勇者「……あと、一週間か」

 

 

勇者(……俺は……)

 

 

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149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 16:21:37.22 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

* * *

 

魔族「魔王様だ。今日うちで獲れた野菜もってきます?」

 

魔族「魔王様!おはようございます」

 

 

竜人「いい天気ですね。魔王様」

 

魔女「ねえねえ魔王様~ 今日人間の街に行ったときにね、ちょうおいしいお菓子買ってきたよ!一緒に食べよ」

 

 

魔王様!

 魔王様……

 

 

魔王(私の大切な、大切な宝物)

 

魔王(この島にあるもの、全部、消させはしない)

 

魔王(絶対……絶対に、守ってみせる)

 

魔王(私は魔王なんだから……)

 

 

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150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 16:22:09.54 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

* * *

 

 

そして時が過ぎ、運命の日がやってきた。

 

 

時の女神「……」

 

時の女神「また、戦争がはじめるのですか。いや戦争と言うにはあまりにも……」

 

時の女神「……」

 

 

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151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 16:22:41.61 ID:qmfg9Uq7o

 

 

星の都

 

王子「……今日か。太陽の国の軍隊が魔族を制圧するというのは。

   さてどうなることやら……」

 

 

 

 

 

雪の国

 

女王「私の国の軍隊も貸せなどと厚かましくも文をよこしおって。だからあの国の王は嫌いなのじゃ。

   ふん、あいつの国も魔族も関係ない。せいぜい高みの見物でもさせてもらおうかの」

   

女王「結果が楽しみじゃ。あ奴の自慢の軍が負けるとも思えんがの……噂の魔王とやらはどうでるのか」

 

 

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152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 16:23:22.56 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

子エルフ「わーい魔王城だ魔王城だー!」

 

子ヴァンパイア「冒険しようぜ!」

 

エルフ「こら!だめ、今日は母さんと父さんの近くにいなさい!!」

 

 

魚人「人間が舟で攻めてくるって? この間みたいに魔王様と竜人様がズガーンとやっつけてくれんだろ?」

 

キマイラ「そうなればいいのですがね」

 

魚人「なーに 心配いらねえって。酒でも飲むかい!?」

 

キマイラ「あっ、海を見てください!あれが人間の乗った船ではないですか?」

 

 

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153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 16:25:03.62 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

魔王「……ついに、来たな」

 

魔女「ふはは、よく来たな愚かな人間たちよ!返り討ちにしてくれるわ!!」

 

竜人「なんですかソレ」

 

魔女「魔王様の代わりに魔王っぽいセリフを吐いてみた」

 

魔王「いらん。しかし……その心持でいった方がいいかもしれない。

   随分大きな船だ。それもあんなにたくさん、か。一か月前とは比べ物にならないな」

   

竜人「手加減なんてしてる余裕ありませんね」

 

 

 

 

 

魔王「とりあえず砲撃が一番厄介だ。射程距離に入られる前に追い返すことが目標だぞ」

 

竜人「ええ。そろそろ行きますか、魔女」バサッ

 

魔女「箒に乗って飛ぶのイヤなんだよねー だって下から見たらパンツ丸見えじゃん?」

 

竜人「馬鹿言ってないで、行きますよ」

 

魔女「はいはい」

 

魔王「二人とも、…………」

 

竜人「死にませんから大丈夫ですよ。必ずあなたの元に帰ってきます。では」バササッ

 

魔女「頑張ってくるね、魔王様!」ビュン

 

魔王「……頼りにしてる」

 

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154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 16:27:00.89 ID:qmfg9Uq7o

 

 

将軍「見えてきたぞ、魔王城だ。魔王軍は見えているか?」

 

兵士「ぐ……軍?なのか分かりませんが、幼子と細身の人物が二人……」

 

将軍「ふむ?軍を用意していないとは、まだこちらの来襲に気づいていないのか、はたまた慢心しておるのか……

   砲撃の射程範囲に島が入り次第、一斉に撃つぞ!!」

   

兵士「ハッ!」

 

 

 

兵士「……!将軍!!ドラゴンとあともう一人こちらに向かってきます!!」

 

 

 

兵士「マストに火がー!!」

 

兵士「くっ、なんて力だ!!」

 

魔女「こっちだって負けないよ!睡眠魔法!混乱魔法!麻痺!失神!魅了!!」

 

兵士「うわあああああっ 状態異常のオンパレードだぁぁぁぁ!!早く逃げろおおおお!!」

 

魔女「はい毒薬プレゼント!毎秒体力30%削る魔女ちゃんお手製ですよ!」ポイ

 

兵士「逃げろーーー!!もしくは撃ち落とせーーー!!!」

 

 

ワーワー

 バキャッ ニゲロー

 

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155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 16:27:44.48 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

将軍「ひるむな!!ええい、弓兵!射撃兵!撃ち落としてしまえ!!!」

 

兵士「ハッ!!」チャキ

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 

ズォオオオオオオオオッ

 

 

魔王「……クラーケンは生憎会ったことがないが。

   その姿、お借りしよう。最大水魔法」

   

   

クラーケン「ォォォォォォオォオォッッ」

 

 

兵士「ぐ、軍艦と同じくらいの大きさの……イカ!?!?」

 

魔術師「いえ、これは魔法で作られたまがい物です!」

 

 

ッバッシャァァァアン!バキボキボキッ!!

 

 

将軍「くそぉ!このままでは軍艦が破壊されるのも時間の問題か!!しかし、もうすぐで射程距離に……!」

 

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156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 16:28:15.82 ID:qmfg9Uq7o

 

 

将軍「勇者殿!!しばらく時間を稼いでくれませぬか!?」

 

勇者「やってるよ!」

 

戦士「fjりえsfじょrs」

 

神官「きゃーー!戦士さん!!混乱状態になってるー!!」

 

勇者「あーこのイカ斬っても斬っても意味ない(棒)」

 

勇者「しまった、イカ斬ろうとしたら大砲ぶった切っちまったぜ(棒)」ズバッ

 

戦士「jrふぃおえsじおdsr」バキボキ

 

将軍「ちょっ なにしてんだあんたら!!!」

 

 

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157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 19:21:09.24 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

竜(く、なんて頑丈な船だ。全部燃やしつくしてやろうと思いましたが、難しいみたいだ)

 

魔女「チッ うざったい魔術師だなぁ!私がかけた状態異常魔法、かたっぱしから解かないでよっ!!」

 

竜(数が多すぎる!私たちが戦闘不能にしていってる人数は確実に増えているはずなのに…これでは)

 

 

魔王「3艦やったな。あと残り何艦だ…?数える暇も惜しい。早くしないと」

 

 

 

 

 

 

 

兵士「将軍!射程範囲に入りました!」

 

将軍「よし、やっとか。砲撃用意!!!」

 

 

将軍「今だ!撃てーーッ!」

 

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158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 19:21:39.04 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

ドガァンッ!ドガン!

 

 

ひゅぅぅぅぅぅ…

 

 

魔王「!!」

 

魔王(持ちこたえてくれっ……!)

 

 

バチンッ!!!バチバチッ!!バキッ!!

 

 

魔王(……耐えたか…? いや、一か所ヒビが入っている。同じところに2回砲撃を食らうと流石に耐えきれないか)

 

魔王(今なら修復が手早く済ませられる!一回水魔法は解かねばならないのが痛いが。竜人、魔女、ひとまずまかせるぞ)

 

 

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159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 19:22:14.76 ID:qmfg9Uq7o

 

 

将軍「なんだ、結界かなにかが張ってあるのか!?弾かれたな」

 

魔術師「結界でしょうね。ですが一か所綻びができたようで……。さて、こちらも準備が整いました」

 

 

 

勇者(イカがいきなり消えた?まさか、結界が破られたのか!?)

 

神官「ゆ、勇者様!」

 

勇者「!?」

 

 

 

竜「くそっ 魔王様!!」

 

魔女「竜人!あそこの船の魔術師たち、なんか大がかりな魔法発動させようとしてる!!」

 

竜「!! させるか!!!」

 

 

魔術師「……」ニヤ

 

 

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160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 19:24:32.28 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

魔術師「彼の者たちを捕えよ!捕縛魔法!」

 

 

バチバチバチッ

 

 

竜「!? か、体が……」

 

魔女「ぎゃーっ! なにすんのよー!!」

 

 

 

将軍「捕えたな。全く手こずらせてくれたものだ……!!

   よし、再装填……といきたいところだが、先ほどのイカの化け物のせいで予備の砲弾が使い物になるかどうか」

   

兵士「少し時間がかかるかもしれません!」

 

召喚師「それならば我ら召喚術使いにおまかせを。時間稼ぎくらいならできますよ」

 

将軍「頼んだ。よし、大砲班以外の兵士たちは上陸の準備を済ませておけ!!」

 

将軍「これは……王から仰せつかったことだが。適当に何匹かの魔族は殺さず捕えておけとのことだ」

 

兵士「何故ですか?」

 

将軍「見世物にでもするのだろう。もしくは学者たちに譲渡されるか……私には理解できぬ趣向だがな。

   しかし王の命令ならば従うほかない」

   

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161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 19:25:02.55 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

召喚師1「召喚魔法!いでよ大鳥!」

 

召喚師2「さ、行きますか!」

 

召喚師3「結界の綻びを狙うぞ!!」

 

 

勇者「あっ おい!!」

 

 

兵士「将軍!捕えたドラゴンと魔女はどうなさいますか?」

 

将軍「捕縛魔法にも限界があるからな、今のうちに撃ち殺せ」

 

兵士「ハッ」

 

 

 

竜「うぐッ……!この……!!」

 

魔女「ちょっと、竜人……なんとかしてよ……!!」

 

兵士「構えろ。一斉に撃つぞ」

 

兵士「はい」チャキ

 

 

勇者「……!!」

 

 

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162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 19:25:35.66 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

魔王「!! 竜人!魔女! くっ……!

   焦っちゃだめだ、結界を早く修復しないと……ええと」

   

魔王「…? なんだ あれは? ……人か!?」

 

召喚師1「見つけた、ここが結界の綻びだ!」

 

召喚師2「俺がやる」

 

 

魔王「な……っ やめろ!」

 

 

ガキィィン!!!

―――パリンッ……

 

 

魔王「……!!」

 

召喚師2「成功だ!結界が破れたぞ」

 

召喚師3「こうなりゃこっちのもんだな。将軍に知らせよう。上陸できますとな」

 

召喚師1「ん? ウオォ!!?」ヒュッ

 

ゴォッ

 

魔王「お前ら!よくも!」

 

召喚師3「げっ!?なんだこの火炎魔法!! もしかして、これが魔王!?」

 

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163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 19:28:53.53 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

召喚師1「こんな子どもが? なんにせよここからすぐに去るぞ!戻れ!」

 

召喚師2「ああ。……ほらよ、置き土産だ!!出でよ幻獣!奴を噛み殺してやれ!」

 

幻獣5匹「グルルルル…」

 

 

魔王「小賢しい真似を。しかし上陸される前に結界を一から張りなおさなければ……」

 

魔王(魔力の残りも結界を張るので精いっぱいだ。こいつら相手に使っていられる余裕もない。

   剣は得意じゃないんだが、早くこいつらを片付けて結界張って竜人と魔女を助けないと)

   

幻獣「ガァッ!!」

 

魔王「っうぐ…!」ガキン

 

 

魔王「……こ、こんなことならもっと剣の訓練をしとくんだったな」

 

魔王「ちょっと厳しいかもしれないな、これは……」ハァハァ

 

 

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164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 19:29:54.86 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

竜「魔王様!」

 

魔女「魔王様ぁー!」

 

 

 

兵士「…よし、撃」

 

 

勇者(くそ!!! なんとか……なんとかする方法はないのか!?)

 

勇者(………ハッ!!)

 

 

勇者「ウワァー!!急に体が勝手にウゴクー!!

   魔王に操られてしまったみたいだ最大雷魔法(レベル99)!!!!」

   

   

カッッ!   

バリバリバリバリバリバリッッ!!!!

 

 

兵士「ガッ」

 

将軍「グッ!?」

 

魔術師「ギッッ」

 

 

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165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 19:30:23.96 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

神官「ええええええ!?」

 

戦士「神官、伏せろ!」

 

 

パチパチ……バリッ……

 

 

将軍「」

全兵士「」

魔術師「」

 

 

勇者「やっちまった……大丈夫か、竜人!?魔女!?」

 

竜人「え、ええ。少し体がしびれますが」

 

魔女「勇者って……ちゃんと勇者だったんだね」

 

勇者「どういう意味だよ。って違う!それより魔王が!!」

 

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166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 19:30:59.89 ID:qmfg9Uq7o

 

 

  

カッッ!   

バリバリバリバリバリバリッッ!!!!

 

魔王「!? うわっ… なんだあの魔法は?」

 

幻獣「ガゥ!」バッ

 

魔王「! ……いっ……」

 

幻獣「ガァァァァ!!」

 

魔王「ッ!(間に合わない…!)」

 

 

ガキン!!

 

 

魔王「え?」

 

魚人「無事ですかい魔王様! おらっ獣は消毒だぁー!」ブンッ

 

幻獣「キャウンッ」

 

キマイラ「魔王様下がっててくださいね」

 

グリフォン「やれやれ、もう戦えるような年じゃないんだけど」

 

キマイラ「なに言ってんですかまだまだ若いでしょう」

 

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167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 19:35:05.97 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

魔王「なんで……危険だ!城に避難していてくれって伝えただろう!」

 

魚人「そりゃあ俺たち魔法も何も使えませんがねっ こちとら毎日酔いつぶれた客相手にしてんだ!

   それに比べりゃこんな獣、相手になりませんよ!」

   

ボカッ!ザシュッ!

 

キマイラ「そういうことですね」ガブッ

 

幻獣「ギャッ!」シュゥゥゥ…

 

 

グリフォン「生命をもたぬ獣か。人間もなかなかおもしろい術を考える」

 

魚人「おいっ くっちゃべってねぇであんたも戦ってくださいよ」

 

キマイラ「魔王様は早く結界を!」

 

魔王「っあ、ああ!」

 

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168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 19:35:56.94 ID:qmfg9Uq7o

 

 

ヒュンッ

 

勇者「魔王!無事か!?」

 

魔王「えっ!?勇者くん?」

 

竜人「お怪我されてるじゃないですか!なにしてくれとんじゃこのクソ幻獣がッ!!」バキッ

 

魔女「結界が破られてるね」

 

勇者「あれ?さっきこっちに来た召喚師どもは?」

 

魔王「船に戻ったが……勇者くんこっちに来て大丈夫なのか?」

 

魔女「船の人間全部、勇者が気絶させたよ」

 

魔王「え」

 

竜人「どうやらその召喚師とやらで最後みたいですね。3人くらいならば私一人で十分です、食いちぎってきます」

 

魔女「いや殺しちゃだめでしょ?」

 

竜人「フ○ック!魔王様に怪我させた奴ら生かしといていいんですか!?嫁入り前の娘になんてこと!」

 

魔王「……竜人、私はいいからとりあえずその召喚師を気絶させてきてくれ。気絶な、き・ぜ・つ」

 

竜人「承知しました!!ぶっ殺す!!」バサッ

 

勇者「話聞いてたかお前!?」

 

魔女「ハァ、あたしもついてくよ……」

 

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169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 19:36:28.37 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

魔王「……」

 

魔王「……ん」パチ

 

魔王「……いつから寝てたのだろう」

 

 

竜人「あ、お目覚めですか。よかった」

 

魔王「今日は何日だ?」

 

竜人「人間が軍艦でやってきてから1週間です。

   魔王様は結界を張りなおしたことによって魔力を使い果たして、あのあと倒れてしまったんですよ」

   

竜人「獣にうけた傷も塞がってますね。痕が残らないで本当によかった」

 

魔王「そうだ……勇者くんは?人間たちを気絶させるために魔法を使ったのだろう。

   無事なのか?今どこに?」

   

竜人「そこらへんはうまくごまかしたみたいですよ。今彼は王国にいます。

   一度、魔王様が眠っている間彼らが話をしにやってきました」

   

魔王「……どんな?」

 

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170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 19:37:15.68 ID:qmfg9Uq7o

 

 

バタン

 

 

魔女「半年後。さらに兵士も魔術師も増やして、これで最後の最後、本気で仕留めるって覚悟で

   もう一度魔族討伐作戦を決行するってさ」

   

竜人「魔女、」

 

魔女「やっぱ今回の軍艦破損が痛かったのかな。大分時間が空いたよね。助かるよ」

 

竜人「どうでした?見つかりましたか?」

 

魔女「全然。そんな簡単に見つかるわけないしね」

 

魔王「……なんの話だ?」

 

 

魔女「魔王様」

 

魔女「この島から逃げましょう」

 

魔王「え…?」

 

 

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171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 19:38:28.39 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

竜人「いま魔女と私で、まだ人に見つかっていないような土地を探しています。魔族が全員住める、この島のような、土地を」

 

魔女「もうここはだめだよ。2度目の襲撃で陥落しそうになったのに、3度目で耐えられるわけない。

   私たちがいくら頑張っても、所詮3人じゃ無理があるよ。しょうがないよ」

   

竜人「幸い時間は半年間も残されています。その間に私たちで新たな魔族の地を探しだしてみせます。

   魔王様は何も心配されなくて大丈夫ですよ。ご療養に専念してください」

   

魔王「待ってくれ。逃げるって……新たな魔族の地なんて、まだこの世界にあるのか?

   この島だってようやく見付けだしたものなのに…」

   

魔女「大丈夫ですよ。なんとかなる!また、逃げましょう。昔みたいに。逃げて逃げて逃げまくろう。この世の果てまで」

 

竜人「せっかく10年かけて作り上げたこの街や畑を手放すのは惜しいですが。また作ればいいんです。ね」

 

魔王「…………うん…そう、だな。仕方のない……ことだ」

 

魔王「……頼む」

 

 

 

勇者「待ってくれ!!」バタン

 

 

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172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 19:39:11.03 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

勇者「勝手に上がらせてもらってるぞ」

 

神官「こんにちは皆さん。魔王さん目が覚めたんですね」

 

戦士「久方ぶりだな」

 

 

竜人「勇者様たち。どうされたんですか?」

 

勇者「話があってきたんだ。俺は……」

 

 

勇者「俺は、6か月以内にクーデターを起こすことにした!国王を王の座から引き下ろす!!」

 

 

 

魔王「え?」

 

魔女「?」

 

竜人「えええ!?」

 

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173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 19:40:53.21 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

 

 

 

勇者「といっても暴力的な手段に訴えるわけじゃない。無血クーデターだ。俺の国の法律には特例があってだな……」

 

魔王「ちょ、ちょっと待ってほしい。勇者くん。なにを言ってるんだ?」

 

勇者「なにって?クーデターを起こすんだよ。魔族を救うにはそれしかない。何度説得してみようと思っても無駄だった。

   魔族に強い嫌悪感をもってるあの王が国王のままじゃ、いつか魔族は滅ぼされるぞ。もしまた半年後に軍隊を撃退できてもな」

   

魔王「クーデターって、そんなことを勇者たる君が率先して行っていいのか?大体ばれたらどうする」

 

勇者「ばれたらまずい。そりゃあな。しかしばれなければまずくない」

 

戦士「当然だな」

 

魔王「…危険だ」

 

勇者「大丈夫だ。俺は正しいことを行いたいだけだ。道を踏み外したくはない。俺が見た限りでは、

   国王のやろうとしていることは悪で、お前らの主張が正しいように思えるんだよ。善悪なんて二元論じゃ語れないかもしれないが」

 

勇者「とにかく、まあ聞け」

 

 

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174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 19:58:00.13 ID:qmfg9Uq7o

 

 

~~~~

 

 

勇者「半年後に……また、ですか」

 

王「これで最後だ。そのつもりで惜しみなく軍力を注ぐ」

 

勇者「…………」グッ

 

王「雪の女王はまた素気無く断るだろうが、星の王子は捕えた魔族を被験体として差し出すと申せば、

  もしかしたら軍をよこしてくれるかもしれんな」

  

王「今度こそ必ず魔族をこの地から根絶やしにする。分かっておるな、勇者」

 

勇者「……何故ですか?」

 

王「何故と申すか?おかしなことを聞く。この世界は我ら人の支配する地だ。危険因子となる野蛮な種族は……

  浄化してやらねばならん。神の仰せのままに」

  

勇者「……………………」

 

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175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 19:59:51.37 ID:qmfg9Uq7o

 

 

バタン!

 

 

姫「お父様!今のお話は本当なんですか!?」

 

勇者「!」

 

王「やれやれ。盗み聞きとは感心しないぞ、娘よ」

 

姫「それより、今のお話。また半年後に軍隊を出動させるですって?軍費は無限じゃないんですよ。

  そんな害をなすか分からない魔族に資金を費やすより、もっとやることがあると思います」

  

姫「福祉施設や学問施設の設立。今ある数多の孤児院や病院だって、お金を必要としているところはたくさんあります。

  難民の問題だって残っているじゃありませんか」

  

王「娘よ。王たる者は長い目で物事を見通さなければならん。ここで魔族を取り逃がしたら将来苦労するのはお前たちの代だぞ」

 

姫「ですが……」

 

王「もうよい、さがれ。勇者も下がってよいぞ」

 

 

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176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 20:02:26.09 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

姫「なによ!お父様の分からず屋。勇者もそう思うでしょ?」

 

勇者「あー……ははは。相変わらずですね姫様」

 

姫「お父様は私の話なんてちっとも聞いてくれないの。どうせ娘は王位継承者じゃないからって、軽んじてるんだわ!んもう」

 

勇者「そんなことありませんよ……多分」

 

姫「気をつかわなくて結構ですわ。私、お父様が時々風車を巨人だと思って突進するドン・キホーテに思えます」

 

勇者「なまじ力があるだけに厄介だよな。……あっ!も、申し訳ありません!」

 

姫「ふふふ、そのように気さくに喋って頂いて結構ですのに。何度も申し上げていますけれど。

  ではまた会いましょう、勇者」

  

勇者「ええ。また」

 

 

勇者「……ドン・キホーテね……原作なら突進して大けがするけれど、王が騎士なら風車は全壊だ」

 

勇者「……なんのために、この剣を振るうべきなのか。俺はもう分かっているはずだ」

 

 

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177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 20:04:39.95 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

宿

 

 

神官「半年後って、どうしましょう、勇者様」

 

戦士「これはかなりまずい事態だな……なんとかならんのか」

 

勇者「……国王を裏切ろう」

 

神官「はい、そうですよね……って、はいいぃぃ!?」

 

戦士「ブゴッ!」ビチャ

 

 

勇者「国王を!裏切る!!俺は決めた!!」

 

神官「ちょっと!!声が大きいですって!!処刑されかねない発言はせめてもうちょっと小さな声でお願いしますよ!」

 

勇者「俺はもう王のもとで剣を振るうことができない。神の仰せのままにとか言ってるけど

   要するに戦争になったらまずいから今のうちに反乱因子を排除しようってのと、元魔族の住んでいた大陸北部の土地がほしいだけだろ!」

   

勇者「完全に小心者が私利私欲に目がくらんだ結果じゃないか。魔王たちは戦争なんて起こすつもりなんかない。

   なのにこのままだとあいつら本当に絶滅させられちまう。クーデターしかねえよ」

   

戦士「しかし……クーデターとは。具体的にどのように起こすか考えているのか?」

 

勇者「う…それはまだ。できれば穏便に済ませたいんだが」

 

神官「それならあるかもしれません」

 

勇者「ほんとか!?」

 

 

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178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 20:08:50.06 ID:qmfg9Uq7o

 

 

神官「た、ただですね。かなり成功率は低いと思いますよ……事実歴史上いまだ誰も達成できていない方法です」

 

勇者「それでもいい。どんな方法なんだ?」

 

神官「この国は、国王が治める君主制の国です。太陽の国だけじゃなく、雪の国も星の国も。それは知ってますよね?」

 

戦士「うむ」

 

神官「でも絶対君主制ではないんです。制限君主制なんですよ、大陸にある3国とも」

 

勇者「おい、話が難しいぞ。よく分からない」

 

神官「ええとだから、国王が好き放題できるかと思ったらそうではないんです。一つだけ、国王の定める法より上位の法が存在しているんですよ」

 

神官「それが神法です。一条だけ神によって定められたという、神法」

 

神官「その一条とは、『一人の国王が王らしからぬと判断された場合、他の二国の王がそれを認めれば、その王を王座から追放することができる』

   というものです」

   

戦士「……??」

 

勇者「……??」

 

神官「えーと!ええっと!」

 

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179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 20:14:10.45 ID:qmfg9Uq7o

 

 

神官「神法が制定されたのは、大昔に三国のうちどこか一国で悪質な独裁者が生まれてしまったことが発端だったんですよ。

   その国の国民だけじゃなくて、大規模な人間同士の戦争も起こっちゃってかなり被害が大きかったそうです。その年は一気に人口が減って……」

   

神官「で、そういうことがまた起きたらまずいってことで、国王以外の者が条件を満たせば国王を追放できるっていうこの法が生まれたんですよ」

 

勇者「へえ。つまり、俺たちも雪の女王と星の王子から認定をもらえば、無血で革命が起こせるってわけか!!」

 

戦士「なるほどな、幸い俺らはその二人とも面識がある。便利な法があったものだ」

 

神官「あ……でもですね!これには続きがあって。革命によって国王がいなくなったら、そのあとだれでも王になっていいってわけじゃないんです

   その国が法律で定める王位継承者。正式な継承者と、二国の認定書があって初めて行えるものなんですよ」

   

勇者「この国の王位継承者って王子だよな。姫様の兄の」

 

戦士「いま他国に留学中だと聞いたが」

 

勇者「つうか俺会ったことないな。いつから留学中なんだ?」

 

戦士「さあ。俺も見たことがない」

 

神官「私もです。これは噂なんですけど、留学とは言えど行方が分からないそうですよ……」

 

勇者「は!?」

 

 

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180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 20:15:53.64 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

勇者「一国の王子がそれで大丈夫なのか!?オイオイ」

 

神官「たまに王宮に手紙が届くそうなので、生きてはいらっしゃるんでしょうけど……」

 

戦士「その王子を連れ戻さなければ、無血クーデターも始まらんというわけか」

 

勇者「まあ、どうせ世間知らずのボンボンなんだろ?行方不明とは言っても多分大都市を見て回ればすぐ見つかるんじゃないか」

 

神官「だといいですけど。ああ、それにかなりの美男みたいですよ。結構目立つと思います」

 

勇者「羨ましい限りだ。よし、とりあえずクーデターの方向性は決まったな。あとは動くのみだ!

   ……勝手に話進めたけど、お前らは別に危険を冒す必要はないぞ。俺が勝手に決めたことだしな」

   

戦士「といっても、計画のほとんどを今話してしまったではないか。これで俺が今すぐ王にこの件を伝えたらどうするつもりだ?」

 

勇者「うっ……」

 

戦士「ハハ、冗談だ。水臭いことを言うな。協力するに決まっているだろう」

 

神官「わ、私も……やってやりますよ!勇者様、協力します!共に魔王さんたちを救うために頑張りましょう!」

 

勇者「ありがとう、神官、戦士。そう言ってもらえると心強いぜ」

 

勇者「よし……!打倒国王だ!!」

 

神官「おーー!」

 

~~~~

 

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181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 20:18:46.04 ID:qmfg9Uq7o

 

 

勇者「というわけだ」

 

魔王「勇者くんは馬鹿だったのかな?」

 

勇者「ええー!!?なんだこの言われよう。お前らのためにと思ってだな!」

 

魔王「危険すぎるだろう。そんなのマーメイドの目前で魚料理食べるレベルの危険度だ」

 

神官「例えがよくわかりませんけど魔族ジョークかなにかですか?」

 

魔王「その神法が勇者くんや戦士殿が知らないくらい公にされていなかった理由はなんだ。それが歴代国王にとって都合の悪いものだからだ。

   あの王がこの神法を利用しようとする者を畏れないはずがない。その危険性がわずかでもあれば躍起になって探すはずだ」

   

魔王「死ぬぞ」

 

勇者「死なないよ。これしか方法はないだろ?だったらやるしかないじゃないか」

 

勇者「行方不明の王子を見つけ出す!雪と星の国から認定書をもらってくる!そしてお前らを救ってみせる」

 

魔王「……なんで、そこまで。勇者くんは人間なのに…」

 

勇者「あーもう、人間とか魔族とかもうこの際関係ねえだろ!俺は守りたいもんを守るために力を使いたいんだ、ただそれだけだ!」

 

魔王「……。………馬鹿か」

 

 

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182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 20:19:39.29 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

竜人「皆さん……ありがとうございます。そこまで力になって頂けるなんて」

 

魔女「ほんと助かるなー!私たちも勿論クーデターに参加するよ!ていうかクーデターってなに?」

 

竜人「あなたはちょっと黙ってて下さい」

 

 

 

勇者「で、だな。まず王子の居所を突き止めるのと、2国への遠征をするのも勿論なんだが、

   俺たちの支持者を集めることも大事だと思うんだ」

  

戦士「いきなり王位が変わっても理由が分からなければ国民にとってはなんの意味もないからな。

   俺たちの行動意義を世間に広めなくては」

   

神官「どうせ水面下で活動するなら、輪を広げてやった方がいいですからね」

 

 

魔王「なるほど。でもどうやって?」

 

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183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 20:21:13.06 ID:qmfg9Uq7o

 

 

勇者「まず姫様みたいに度重なる侵攻を軍費の無駄遣いと考えてる人。

   それからきっとこれから税も重くなるだろうし、それを不満に感じる人もでてくるだろう」

   

勇者「まあそこらへんの王への不満を逆手にとって、こっちの仲間にしようかと思う。

   王都だと魔族にほとんど無関心……つまりいい感情も悪い感情ももってない人がいるしな。姫様みたく」

   

神官「できれば影響力と経済力のある人を早々に味方にいれたいですけど、難しいですかね」

 

戦士「やってみなければわからんぞ」

 

勇者「まず俺と神官と戦士で支持者集めをするから、魔女と竜人は王子を探してほしい

   その王子っていうのがどこにいるのか分からないんだが……とにかく美男らしいぞ。今のところ手がかりはそれだけだ」

   

魔女「美男!?イケメン!?よっしガンバろーね竜人!」

 

竜人「えええ手がかりそれだけですか!?さすがに難しいですよ!?」

 

勇者「一応王子だから身なりは小奇麗だと思うし、オーラもあるんじゃないか?」

 

竜人「だから曖昧すぎますって。そんな人物世界で何人いると思ってるんですか」

 

魔女「要するにキング・オブ・ザ・イケメンを探せばいいんでしょ?大丈夫、あたしにまかせてよ」

 

竜人「こら安請け合いしない!後で後悔しますよ!」

 

 

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184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 20:22:40.16 ID:qmfg9Uq7o

 

 

魔王「地盤から固めていくのだな。よし勇者くん!私も精いっぱい頑張るぞ。なにをすればいい?」

 

勇者「あー……」

 

魔王「なんでもやるぞ。遠慮せずに言ってほしい」

 

勇者「えっとな。遠慮とかじゃなくてな。お前は何もしなくていい」

 

魔王「なっ 何故だ。私だけ何もせずにいるなど、魔王の名が廃る」

 

勇者「お前この城から出れないしな……ぶっちゃけ今の段階じゃあ役立たず!」ビシ

 

魔王「や…役立たず」ガーン

 

勇者「つーわけでしばらく俺たちに任せろよ。魔王はこの島の自治とかいろいろあるだろ?あと城の草むしりとかさ」

 

魔王「勇者くんたちがクーデターのために尽力している間に、魔王の私が草むしりだと?

   やだ」

 

勇者「やだってお前」

 

 

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185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/09(金) 20:24:01.04 ID:qmfg9Uq7o

 

 

 

魔王「私も何かしたいんだ」

 

竜人「魔王様はゆっくり休んでてくださいよ」

 

魔王「やだ。やだやだやだ。何かできることはないのか」

 

勇者「残念ながらねえな。とりあえず当分俺らにまかせろって。駄々こねんな」

 

魔王「……」

 

勇者「睨んでも無駄だ」

 

魔王「…………っ竜人、魔女。何か…」

 

魔女「じゃああたしの部屋片付けといてー」

 

竜人「自分で片付けなさい!!全くちょっと目を離すとすぐに自室散らかして!散らかしの天才ですかあなたは!!」

 

魔女「ぶー」

 

魔王「違う、そういう日常的なものじゃなくて、もっと重大な役割を……」

 

 

戦士「……」ポン

 

神官「……」ポン

 

勇者「諦めろ、魔王」ポン

 

魔王「やだ!」

 

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193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/15(木) 01:11:21.02 ID:cbnp4tI4o

 

 

* * *

 

王都

 

 

神官「いよいよ今日から活動開始ですね。で、誰から声をかけますか?勇者様」

 

勇者「いろいろ考えたんだけど、姫様がいいんじゃないか」

 

戦士「い、いきなりか」

 

神官「勇者様……ちゃんと考えてますか?裏切ろうとしてる王に最も近い人物じゃないですかっ

   いいですか、私たちの支持者集めは、声をかけたら99%承諾してくれる人を選ばなくちゃならないんですよ!」

   

神官「だってクーデターのことを話すってことは、当然私たちがクーデター策謀者だってこと正直に明かすってことなんですよ」

 

勇者「分かってるさ。でも姫様なら、絶対いい返事をくれそうな気がするんだよ。彼女は国民のことを真摯に考えてる」

 

戦士「リスクが高すぎる気がするが……まあ、旅の中でお前のそういう直感が外れたことはなかったな。俺はお前に着いていこう」

 

勇者「悪いな、いつも無茶つき合わせて」

 

神官「ええー…本当にいきなり姫様にいくんですか!?私だって姫様を疑うわけじゃないですけどぉ…もうちょっと考えた方が……」

 

勇者「問題ない!俺にまかせろ!!」

 

神官「えええええー…」

 

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194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/15(木) 01:12:37.04 ID:cbnp4tI4o

 

 

 

宮殿

 

門番「これは、勇者様。いかがいたしましたか。陛下には今謁見できないのですが…」

 

勇者「いや、陛下じゃなくて、姫様は……」

 

姫「? 勇者、私になにか用なの?」

 

勇者「姫様!ちょうどよかった。少しばかりお話が」

 

 

姫の部屋

 

 

神官(うわーうわー!姫様のお部屋、すごい豪華……)

 

戦士(こらキョロキョロするな)

 

 

姫「珍しいですわね、私個人にお話なんて。一体どうしたの?」

 

勇者「ええと、昨日、王との謁見の後にしたお話を覚えてらっしゃいますか」

 

姫「? ええ。それが何か?」

 

勇者「……えっと、なんて言ったらいいのか…。俺たちクーデター起こそうと思ってるんですけど」

 

姫「!?!?」

 

神官「」ズコー

 

戦士「」ズコー

 

姫「くっクーデターですって…?」ガタガタ

 

神官「勇者様ぁーーーー!!いくらなんでも言葉選ばなすぎです!!!」

 

勇者「ぐえぇッ 苦しい…!」

 

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195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/15(木) 01:13:45.90 ID:cbnp4tI4o

 

 

 

神官「違うんです姫様!あの衛兵呼ぼうとしないで下さいごめんなさい!ちょっとうちの勇者様アホの子で!!」

 

戦士「まことにすまん!とりあえず話を聞いてくれ!!勇者が馬鹿で本当に申し訳ない!」

 

勇者「誰が馬鹿だオイっ 申し訳ありませんでした姫様!ちょっとだけ話聞いてください!!」

 

 

 

 

姫「……で、どこが誤解ですの……勇者、まさか本気でクーデターを起こそうとしてませんよね?聞き間違いですよね?」

 

勇者「姫様は国王様が魔族相手に軍を派遣することに否定的でしたよね?」

 

姫「ええ。もっと使い道はたくさんありますもの……」

 

勇者「俺たちも姫様と同じように考えてるんです。軍隊なんて派遣するべきじゃない。

   なんとか国王様にそのことを訴えたんですけど、どうにも……」

   

神官「姫様は神法のこと、ご存じですか?」

 

姫「神の法……勿論ですわ。まさか、あなたたちはそれを実行に移そうとしていらっしゃいますの?」

 

勇者「……はい。半年後の一方的な戦争を起こすのを阻止するためには、国王に王座から退いて頂くほかないと判断しました。

   姫様。どうかあなたの力を貸していただきたいのです」

   

姫「……」

 

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196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/15(木) 01:15:27.66 ID:cbnp4tI4o

 

 

 

戦士・神官「……」ゴクリ

 

勇者「お願いします。俺たちに力を貸してください。よりよい国の未来のために」

 

姫「……二つ、質問させて下さい。神の法をもし仮に本当に執行させたとして。……その後お父様をどうなさるおつもりなの?」

 

勇者「俺たちはあくまで戦争を止めたいだけです。処刑をするつもりはありません。国の最高権力を譲り渡して頂くだけです」

 

姫「そう……。では二つ目の質問です。先ほど『半年後の一方的な戦争』と言いましたが、どういうこと?

  魔族側の戦力を知っていないと出ない言葉だわ。あなたは魔族にも魔王にも接触してないと報告では聞きましたが?」

  

勇者「正直に申し上げますと、それ嘘です。俺たちは魔王にも魔族にも会いました。

   魔王は人間に敵意なんて持ってません。復讐なんて起こそうとしてません!」

   

姫「……確か、お父様にそのような旨の手紙が届いたそうですわね」

 

勇者「全て真実です。ですが国王様の意志は変えられなかった。このままでは確実に魔族は滅びます。

   俺はそれをなんとかしたい。救いたいんです。人間と魔族の共存だって絶対できるって思ってます」

   

姫「…………全く。この宮殿で、国王の娘たる私に、父を裏切れと申すのですか。私が一声上げればすぐに騎士も衛兵も駈けつけるのに。

  実直を通り越して愚直な行為ですよ、勇者」

  

勇者「…………姫様を信頼しての行動です」ダラダラ

 

姫「すごい汗よ。…………でも。誠意は伝わりました。とりあえず、詳しいお話聞かせてくださいますか?」

 

勇者「は、はい!」

 

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197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/15(木) 01:16:38.20 ID:cbnp4tI4o

 

 

 

姫「……なるほど。あなた方のお話を真実とするなら、魔王はハンバーグがお好き、と……」

 

神官「いや、そこですか。もっといろいろ話したじゃないですか」

 

姫「冗談です。魔族側の事情、意志。しかと聞きました。本当に今のお話は全て真実なのね?」

 

勇者「はい」

 

姫「そう……なら、やはりお父様を止めなくてはなりませんね……」

 

 

姫「私もあなた方に協力しますわ」

 

戦士「おお…」

 

神官「姫様…!」

 

勇者「有難うございます、姫様!」

 

 

姫「それで、私は何をすればいいの?」

 

勇者「まず反戦同盟のメンバーをできるだけ多く集めたいんです。

   姫様の人脈を使って、俺たちの考えに一致する……もしくは開戦に反対する人に声をかけて頂けませんか?」

   

姫「思い浮かぶ人は結構います。私の周りでも、お父様の急進的な考えに戸惑いを隠せない人は少なくありませんし……

  分かりました、出来る限りやってみるわ」

  

戦士「有り難い。宮殿や貴族のことは姫様に一任できるな」

 

姫「あ、あと、お兄様の居場所は見当はついてますの?神法執行にはお兄様の存在が不可欠ですよね?まさかもう見つかって…?」

 

神官「あう……」

 

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198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/15(木) 01:17:48.13 ID:cbnp4tI4o

 

 

 

勇者「いや全然、全く。見当すらついてません」

 

姫「そ、そう。まあ……難しいかもしれませんね……私もお兄様が留学と銘打って宮殿を出てから会ってませんもの」

 

戦士「王子の特徴や、行きそうな場所など心当たりはないだろうか?我々も今探している途中なのだが」

 

姫「特徴……うーん。私と似てる、くらいでしょうか。特に目の色なんかはよく瓜二つだなんて言われます。

  ええと、あとは女性によくもてますね。舞踏会なんかはすごかったわ。本人はうんざりしてたけれど」

  

勇者「姫様もお綺麗ですもんね」

 

姫「そっそんなこと言われても嬉しくなんかないんですからねっ! と言っておけばいいですか?」ハァ

 

勇者「雑!」

 

姫「あとは行きそうな場所ですか?うーん……そういえば星の国には興味を持ってましたよ。一度あの天文台に上ってみたいって言ってたわ」

 

神官「本当ですか!すぐに竜人さんと魔女さんに伝えないとっ!」

 

戦士「初めて手がかりらしい手がかりを入手できたな」

 

勇者「ああ!よかった。ありがとうございます姫様!」

 

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199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/15(木) 01:18:45.56 ID:cbnp4tI4o

 

 

 

姫「……さて、ごめんなさい、そろそろ私は稽古の時間ですので……」

 

勇者「じゃあ失礼しますね。姫様、本当に……有難うございます。俺たちに力を貸してくれて」

 

姫「力を貸す、という表現は不適切ですわ。私もあなた方の理念に賛同したから、行動するだけよ。

  力を合わせましょう。よりよい人の……いえ、人と魔族の未来のために」

  

勇者「…ええ、そうですね。頑張りましょう!では、失礼します」

 

 

 

城下町

 

 

勇者「やったな!」

 

神官「もう勇者様ったら、最初いきなりクーデターって言いだした時にはどうなることかと思いましたよ……」

 

戦士「姫様もドアに駆け寄ろうとしていたぞ?頼むから今度からは言葉を選べよ」

 

勇者「悪い悪い。まあ結果オーライじゃないか。かなりいい出だしだ。姫様は人を見る目もあるし、強力な支持者が集まるぞ!」

 

神官「確かに」

 

 

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200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/08/15(木) 01:19:42.67 ID:cbnp4tI4o

 

 

 

神官「さて、それでは私はこれから神殿の何人かに声をかけてみようかと思います」

 

戦士「俺は傭兵部隊に所属していた頃の仲間を何人かあたってみよう」

 

勇者「ああ頼む。俺は……そうだな。冒険者のギルドとか行ってみるかな。

   じゃあ今日の午後は別行動にして、明後日あたりにまた集まって報告しよう」

   

神官「分かりました。………………ふふふ」

 

戦士「どうした神官」

 

神官「ごめんなさい。う、生まれて初めて、その……大声で言えないことをしてるのに、なんだか高揚してるんです」

 

戦士「ははは。神官は反抗期なんかはなさそうだしな。かく言う俺も、罪悪感より高揚感の方が高いぞ。

   ただ上に言われるままに敵を排除するのより、よっぽど今の方がやりがいがあるわ」

   

神官「ちょっと昨日はびくびくして眠れなかったんですけどね。……私、小心者なんです」

 

勇者「大丈夫、できるさ。俺たちなら。明後日の報告も期待してるぜ」

 

神官「は、はいっ」

 

戦士「俺たちもお前の報告に期待しておるぞ?勇者」ニヤ

 

勇者「はん、上等だ。あまりの成果に驚くんじゃねえぞ」

 

戦士「言ったな。じゃあ3人のうち誰が一番支持者を集められるか、勝負だな」

 

勇者「いいぜ」

 

神官「ええええっ!ちょっ勝手に!」

 

勇者「一番少なかった奴は罰ゲームだな」

 

神官「だから私抜きでやってくださいよ!!!」

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