247 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 21:30:10.88 ID:LLwP8/i3o
サキュバス「私の豊満わがままボディに魅惑されてしまったのよ、その男の人は……」
サキュバス「もうサイテー!男なんてみんないやらしくってサイテーだわ……ふええ」
サキュバス「魔王ちゃん……私の繊細なハートは虐げられてボロボロよぉ」
魔王「もう大丈夫だ。奴は私が始末するから」
魔王「で、この地を去るか墓場に埋まるかどちらか好きな方を選べ。妖使い」
妖使い「俺は変質者じゃない濡れ衣だー!裁判を要求する!証人が必ずいるはずだ!」
魔王「黙れ」
妖使い「横暴!」
魔王「ここでは私が法だ」
妖使い「ひどい独裁政治を見たぜ」
サキュバス「そうよやっちゃって。その調子で男を撲滅するのよ。魔王ちゃんのお耳はみはみ」
サキュバス「はあはあ……魔王ちゃん今日のパンツ何色? はあはあ……」
魔王「サキュバスがこんなに動揺するほど追いつめて……貴様に人の心はあるのか?」
妖使い「うわぁ」
妖使い「待て待て、俺を磔にするより君にはまずやることがある」
妖使い「俺より背後の奴の方が危ないよ!身の危険を感じるよ!」
サキュバス「あらっウエストがこの間より3cm細くなったんじゃないの?
だめよダイエットなんてしたら……はあはあ……」
サキュバス「よかったらこの後私の家でお茶しましょ。苺のケーキがあるわよ。
ね?くるでしょ?くるわよね?」
魔王「ケーキ……? じゅる」
妖使い「代わりに大事なもの失っても知らないよ」
――――――――――――――――――――――――――
248 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 21:58:11.57 ID:LLwP8/i3o
サキュバス「え……!? そんなぁ……私は何も邪な気持ちなんて一切抱いていないのに……」
サキュバス「ひどい……私がグラマラスなナイスバディに見合う万年発情脳内ドピンク淫乱娘だなんて……
なんてひどいこと言うのよぉぉ うわあああん!」
妖使い「この女こわすぎ」
サキュバス「っあうぅ……!!」バターン
魔王「サキュバス!? 一体どうした?大丈夫か!?」
サキュバス「もう私はだめ……あの男の人から受けた精神的ダメージが許容量を超えたわ。
死ぬわ…………」
魔王「妖使い!今すぐサキュバスに謝れ。貴様のせいだぞっ」
妖使い「濡れ衣この上なしだよ」
サキュバス「謝罪じゃ無理だわ……でもひとつだけ私の命を救えるとしたら……うう……」
魔王「なんだ?言ってみろ」
サキュバス「もしかしたら魔王ちゃんがチューしてくれたら大丈夫かも…………」
魔王「分かった」
サキュバス「か……快諾!?予想外……!!」
サキュバス「しかも迅速!うひゃーーー」
サキュバス「…………」
魔王「治ったか!?」
サキュバス(チッ……頬か)
――――――――――――――――――――――――――
249 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 21:59:18.01 ID:LLwP8/i3o
サキュバス「まだだめ……やっぱり口じゃないとだめみたい」
魔王「え…… でも、そ、それはまだしたことないのだが」
魔王「それは恋人同士でないと、し……してはいけないのだろう」
サキュバス「なるほど魔王ちゃんはまだチュー未体験と。それは朗報……じゃなくて」
サキュバス「魔王ちゃん。もし目の前で川で溺れて呼吸が止まった人がいたらどうするの?
人工呼吸するでしょ?それと同じよ!!!」
妖使い「君普通にしゃべってんじゃねーかよ」
サキュバス「だからノーカンよ、心配しないで?
それとも魔王ちゃんは目の前で死にそうな人がいても見捨てるの……!?」
サキュバス「そんなこと……しないわよね……っ! はあはあ……どきどき!」
魔王「……! ……悪かった。そうだな、人命救助が第一だ。
自分のことを考えていた私が恥ずかしい。許してくれ」
妖使い「おいおいアホばっかりだよ」
魔王「いくぞ」
サキュバス「どきどき! うっかりベロはいっちゃうかもしれないけど事故よね事故
事故だったら仕方ないわよね、ええ全く致し方の無いことだわ」
勇者「うおおお、待て!ちょっと待っ……」
魔女「なーにしてんの?」ズガッ
サキュバス「はぎゅっ」
――――――――――――――――――――――――――
250 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 22:05:08.17 ID:LLwP8/i3o
魔女「魔王様。こいつの言うことに耳を傾けなくていいって前も言ったじゃん?」
サキュバス「いたた……ああ魔女ちゃん。魔女ちゃんも一緒に私の家に来る?大歓迎」
魔女「行かないよ。いい加減にしろ、この化乳女」
魔女「魔王様に悪戯しないでよね。大体あんたあたしとキャラ被るのよ。どっか行って」
サキュバス「え……?被る……? 私と魔女ちゃんが?」
魔女「胸見比べながら言ってんじゃないわよ!! きーーっ むっかつく!!」
サキュバス「それに悪戯なんてしてないわよう……よよよ、私悲しいわ」
魔王「サキュバスには今すぐ人工呼吸が必要なのだ」
サキュバス「あ、魔女ちゃんでもいいわよ」
魔女「魔王様騙されてる!それ騙されてるよ!」
サキュバス「あーだめだわもうだめ、あと5秒以内にキスしないと私死ぬ!!
5、4、3、2…………」
魔王「さ……サキュバス!!死ぬなっ」グイ
勇者「待て魔王!!それなら俺がする」
魔王「勇者くん……!?」
サキュバス「は? 結構です。ノーセンキュー」
勇者「……」スタスタ
サキュバス「きゃーーーこっちこないでイヤーーーっ」ダッ
勇者「滅茶苦茶元気じゃないかよ」
魔女「全く……」
妖使い「あのさ……俺帰っていいかな」
魔王「貴様はまだ制裁を受けてないではないか」
妖使い「だからそれ濡れ衣っ」
――――――――――――――――――――――――――
251 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 22:14:29.96 ID:LLwP8/i3o
勇者「ああ……そいつ本当に濡れ衣だぞ。俺向こうで見たんだ。
こいつは足をくじいたサキュバスに手を差し伸べただけ」
妖使い「勇者見てたのか。ならもっと早く助けてほしかったんだけど」
魔王「手を差し伸べただと? それは幻覚ではないのか勇者くん」
魔王「この外道がそんなことをするとは思えないのだが」
妖使い「うーん信用ゼロ!」
勇者「いや本当だって。その前にエルフとヴァンパイアにぶつかった時は
普通に落ちた本拾ってやってたし」
魔王「うそだ。この男は隙あらば魔族を契約させて使い魔にしようとしているのだぞ。
5分に1回は契約を迫ってくるのだから私はそろそろ血管が切れそうだ」
魔王「エルフもヴァンパイアもサキュバスも毒牙にかけようとしていたのだろう」
魔王「今日こそ何らかの制裁措置を取らねば……」
妖使い「俺の命の灯が今まさに消えようとしている!」
勇者「だ、だからちょっとやめろって」スパ
妖使い「おお感謝するよ勇者。じゃあトンズラするかね!
今度来た時には絶対君を使い魔にしてみせる!さらば!」
勇者「お前もいちいちそういうこと言うから誤解されるんだよ!」
魔王「……何をする。逃げられてしまったではないか」
勇者「あいつも素直じゃないだけでそんな悪い奴じゃないんじゃないか?」
勇者「今日の様子を見る限り……さ」
勇者「ま、イライラするのは分かるけど……そうカッカする必要はないんじゃないか」
魔王「…………そうやって油断して、本当にこの国の魔族の誰かがあいつのものになってしまったら取り返しがつかない」
魔王「私は魔族を守らないといけないのだから」
勇者「……気持ちは分かるけど、ちょっと気にし過ぎじゃないのか?」
魔王「……」
魔王「……」
魔王「妖使いの肩を持つのか」
魔王「私は……ただ」
勇者「肩を持つとか、そういうんじゃない。でも、」
魔王「……君は人間だから、そんなことが言えるんだ」
魔王「気持ちは分かるなんて嘘だ……っ」
魔王「人間として育った勇者くんには分かるわけない」
勇者「な……なんだよそれ。なんでそんなこと言うんだよ」
魔王「……」
魔王「ごめん。人の気持ちや考えなど、本当のところ自分以外の誰かに分かるはずないのに。
そんなの当たり前のことだな。私だって君の気持ちを全て理解することなどできない」
魔王「全て分かってくれというのは高望みだな。子どもみたいなことを言ってしまった」
魔王「忘れてくれ」
勇者「違う、俺が言ってんのはそういうことじゃない!俺は……!」
――――――――――――――――――――――――――
252 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 22:19:50.97 ID:LLwP8/i3o
魔女「まあまあ二人とも落ち着きなよ。そんなカッカしないでさ」
魔女「勇者、今日は魔王城に泊まってくんでしょ?」
忍「あれ?皆さんこんなところでなにしてんです」シュッ
忍「ていうか若、知りません?このへんから声したんですけど」
魔女「さっきまでいたけどどっか行ったよ」
忍「はえ~? また入れ違いっすか、めんどうくさい」
忍「……もしや喧嘩中?」
勇者「ちげーよ」
忍「勇者様」
勇者「なんだよ」
忍「ズボンのお尻の方に穴開いてますよ」
勇者「ああん!?」
忍「ほらここー」
魔女「魔王様、どこ行くの?」
魔王「……今日は王都に泊まるから」
――――――――――――――――――――――――――
253 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 22:27:19.19 ID:LLwP8/i3o
勇者「魔王!話はまだ終わってない!ちょっと待て」
魔王「君も忍も、城に泊まっていってくれて構わん。好きな部屋を使ってくれ」
忍「ありがとうございます魔王様!
勇者様、いっしょの部屋に泊まりますか?なんちゃって。あはは」
魔王「もちろんそれでも構わない。好きに使ってくれ。では」ヒュン
勇者「あっ……おい!忍も余計な冗談言わんでよろしい!
くそー何がなんでも今日話をつけてやる!転移魔法!」
魔女「勇者今日こっち来るとき転移魔法使っちゃってたっしょ」
勇者「ああっそうだった!!」
忍「なんか私邪魔しちゃいました?すいません。私空気読まないので」
忍「どちらかと言うと読むよりブチ壊しちゃうので」
魔女「ほんとにね」
勇者「なんなんだよあいつ……話すらさせてくれないのかよ」
魔女「んー……まあ……」チラ
忍「はい?」
魔女「いろいろあるんだよ。乙女心は複雑なんだよ。うんうん」
勇者「俺男だからわかんねーよ……」
魔女「……それ以外にももちろんあると思うけどね。あたしと竜人が悪いのかも。
むかし魔王様に魔王の指輪をはめればって言ったのはあたしたちだからさ」
魔女「魔王様が魔王でなかったら、もっと素直になれてたのかもしれないね」
――――――――――――――――――――――――――
254 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 22:29:28.72 ID:LLwP8/i3o
翌日
勇者「ちょっと王都に行ってくる!!!」
魔女「いってらっしゃーい」
忍「あっ待って下さい!私も王都に戻ります!」ダダッ
勇者「えー!?お前はいっしょに来るとややこしくなりそうだから別途で来い!!」
忍「そんな、私は若や勇者様たちみたいに移動手段ないんですから、
王都に行くまでに何日もかかっちゃいますよ」ダダダッ
勇者「またすぐこっち来てやるからそれまで待ってろ!!じゃあな、転移魔法っ!!」
忍「連れてけっつってんだろ問答無用必殺ラリアット!! っらあああああ!!」
忍「御首頂戴いいいいいいいっっ!!」
シュンッ……
ケットシー「やかましいにゃー」
魔女「ねー」
――――――――――――――――――――――――――
255 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 22:32:14.42 ID:LLwP8/i3o
王都
魔術学院 資料室
魔王「……」ガサガサ
魔王「ないな。去年の資料はどこの棚で見かけたのだったか」
国王「ああそれなら右端」
魔王「そうだった。ありがとう」
魔王「……」
魔王「……」
魔王「何をしているのだ。護衛もつけずにこんなところで、国王陛下が」
国王「城下の視察行ってきたから、ついでにここも抜き打ち視察チェック入れようかと思ってね」
魔王「国王の仕事ではないと思うが……」
国王「ふむ……窓ガラスの掃除が甘いな。資料室と言えど手を抜いてはいけない。5点減点だ」
魔王「姑か?」
国王「ついでに君の研究室に行ってもいいかい」
魔王「構わないが……そんな暇、君にあるのか?」
国王「あるある」
姫「お兄様! どこ行ったのお兄様は!また消えたの!?」
騎士「すみません!一目離したすきに姿が忽然と消えていて……!」
戦士「すぐ手分けして探します!!」
――――――――――――――――――――――――――
256 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 22:35:05.69 ID:LLwP8/i3o
コツ……コツ……
国王「ところで、この間の恩賞がまだだったよね。君の魔法のおかげで影の被害も少なかったんだ。
いま何か欲しいものとかないのかい」
魔王「特にないな……恩賞など気にしなくていい。私は私のするべきことをしただけだ」
国王「と言われてもなぁ……そうなると必然的に私からの男女平等キッスになるけどいいかい」
魔王「チョコレートが欲しい」
国王「チョコレート?それだけじゃ君の働きに釣り合わない。
その場合埋め合わせるために、私からの男女平等キッスもセットでついてくるけどいいかい」
魔王「チョコレート1年分が欲しい」
国王「分かった。すぐに城に届けよう」
国王「……」
国王「今日はなんだか元気がないように見えるね」
魔王「……そうか?」
国王「喧嘩でもした?」
魔王「……」
魔王「喧嘩というか……私が一方的にカッとなって
ひどいことを言ってしまったかもしれない……」
魔王「謝らなくてはいけないと分かっているのだが……顔を合わせにくくてな」
国王「本音を話すのはいいことだよ。
言い争うことすらせず、表面だけで仲良くして、いずれ破綻してしまうより全然ましさ」
国王「私と父のようにね」
国王「それが自分の本当の気持ちだったら、謝罪すらする必要はないよ。
納得がいくまで喧嘩をするが良いさ」
国王「喧嘩するほど仲がいいと言うだろう。大丈夫、そうした方が結果的にいい方向に向かうんだ」
魔王「…………本当にそうだろうか」
国王「君はもっと自分をさらけ出してもいいと思うよ。
親しい者の前ですら王である必要はないんだ」
魔王「幻滅されてしまう……」
国王「いいじゃないか。それが本当の君なら。大体、みんなそんなものさ」
――――――――――――――――――――――――――
257 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 22:41:25.83 ID:LLwP8/i3o
魔術師長「はあ、ねえ召喚師長?10年前の○○氏の実験レポート資料ってどこにあったかしら?」
召喚師長「それなら僕の研究室にある!そんなことよりこっちに召喚獣来なかったか!?
うっかり逃がしちゃって!!ていうか探すの手伝ってくんない!?」
魔術師長「いいえ見てないし探すつもりもないわ。私もあと1分で戻らなくっちゃいけないの」
召喚師長「じゃあその1分捜索に協力してくれ! あ、陛下こんにちは」
魔術師長「いやよ、何故よ。 あ、陛下こんにちは」
国王「やあ」
召喚師長「って陛下…………!?!? 何故魔術学院の廊下に……!?!?」
魔術師長「何か御用事でいらっしゃいますか……!?仰って下されば宮殿まで参りましたものを」
国王「いや、そうじゃない。しかし随分忙しそうだね、二人とも」
国王「先週末までにと頼んでいた例のあの件はもう片付いたのかな」
召喚師長「ええーっと……い、今それには取りかかっているところです」
国王「今日必ず報告書をあげると、先週末の君は言ったよね。
魔術師長も、来年の実験予算案はまだかい。明日までだけど」
魔術師長「は……はい必ず明日までには」
国王「もし万が一、提出期限を守らなかったらどうなるか分かっているね。
男女平等キッスの餌食になってもらうよ」
召喚師長「ひいっ」
魔王「それは褒美なのか罰なのかどっちなんだ」
――――――――――――――――――――――――――
258 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 22:43:55.09 ID:LLwP8/i3o
魔術師長「くっ……ドロー!私のターン! 召喚師長を生贄に 私の逃走経路を召喚」ダッ
召喚師長「てってめええええ」
国王「話の邪魔が入ったけど、とにかく次会ったらその喧嘩の相手と
もっと本音で話し合ってみればいいと思うよ。頑張って」
魔王「……ん……そうだな。頑張ってみよう」
魔王「……あと、背後から姫がやって来ているが平気か」
国王「ん? やあ妹よ。さっきぶりだね」
姫「お兄様!!また勝手にふらっといなくなって!!!」
バターン!! ドタバタ……
魔王「? なんだ、私の研究室の方から騒音が…… まさか賊か?」
魔王「国王と姫はここから動かないでくれ」
――――――――――――――――――――――――――
259 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 22:50:57.74 ID:LLwP8/i3o
勇者「ごほっ ごほごほ!お前なにすんだ!!
邪魔するから変なところに転移しちまったじゃねーかよ!」
勇者「ここどこだ? いてて……」
忍「あっ 勇者様どこさわってるんですか!勇者様のドスケベ変態痴漢野郎!!」
勇者「あ!? わ、悪い……ってお前が上に乗ってるからだろーが、どけいっ!!」
ガチャッ
魔王「……!」
勇者「なあ……っ!?」
忍「必殺逆片エビ固め!」
魔王「………………………………………………」
魔王「仲がいいのは結構なことだが、わざわざ王都くんだりまで来て見せつけてくれなくともいい」
勇者「ちがうっ! 俺はお前と話しに……」
忍「わ、部屋がどんどん凍っていきます。きれいですねぇ」
パキパキペキパキ……
国王「なに、君たちはそういう関係だったのかい」
姫「ひゃっ なんて破廉恥な……!しかも魔王さんの部屋でなんて」
魔王「…………」
パキパキペキペキ……バキッ
魔王「私は話すことなんてない。出て行け」
魔王「……出てってよぉ…………っ」
勇者「これは転移魔法に失敗したんだ、そういう関係でもなんでもない!!」
忍「ええっ……違うんですか?」
勇者「お前はもう黙ってろ!」
――――――――――――――――――――――――――
260 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 22:58:04.83 ID:LLwP8/i3o
魔王「わざわざ私の部屋でせずとも、ほかの場所で好きなだけちちくりあえばいいではないかっ」
勇者「ちちく……お前どこでそんな言葉覚えた!?」
魔王「女の子と男の子一人ずつ儲けて、東国のどこかで家族4人で幸せに暮らせばいいではないかっ!」
魔王「君が出て行かないのなら私が出て行く! 転移魔法っ」
勇者「待て!! くそ、魔王城だろっ行き先は分かってんだ。行ってやる!転移魔法!」
忍「あはは、勇者様いま使ったばっかりじゃないですか」
勇者「んああああああああああああっ」
勇者「絶対誤解されとるなコレ……なんでいつもタイミング悪く目撃されるんだ」
勇者「おい半分はお前のせいだぞ忍、今日だって……あれっあいつどこ行った!!」
勇者「逃げ足だけは奇跡的に速い奴め……!」
姫「勇者……あなたが誰を好こうと私は一向に構いませんが、
わざわざ魔王さんの部屋であのような破廉恥な真似をするのは些か酷ではないかしら?」
勇者「ひ、姫様本当に違うんです。破廉恥は破廉恥でも自発的破廉恥ではなく偶発的破廉恥」
姫「破廉恥破廉恥やかましいです。そんなモラルの低下、国の姫として私見過ごせませんし
魔王さんの友としても個人的に許せませんの」
姫「侍女。口紅とチークを持ってきて」
勇者「……姫様?一体何を……」
姫「メイクアップ……お兄様、旅人モード解禁よ」
国王「オーケーシスター」
勇者「操の危機!!!!」
バリーン!!!
勇者「逃げ切ってみせる!!!勇者の名にかけて!!!」
姫「余談だけど私の兄は100m3秒で走るわ」
国王「逃亡生活で鍛えました」ヒュン
勇者「化けもんかアンタッ!?」
――――――――――――――――――――――――――
267 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 20:11:38.69 ID:Okf816dvo
魔王城
魔女「はあー……どっかに一生遊んで暮らせるくらいの大金落ちてないかな」
竜人「藪から棒になんです」
魔女「できるだけ楽してお金がほしいよう……」
竜人「堅実が一番ですよ」
竜人「おやもうこんな時間ですか。夕飯の支度しないと。
魔王様は今日も王都に滞在なさるのでしょうかね」
魔女「たぶんそうじゃないかなー」
魔女「…………? なんか……急に寒くない?」
竜人「そう言われてみると…… あっ、天井見てください」
パキパキパキペキパキパキ……
魔女「つらら? 窓にも霜が……いまって冬だっけ」
竜人「冬だとしても室内につららはおかしいでしょう。もしかして……
ああ、やっぱり。廊下はもう既に氷で覆われてます」
竜人「……久しぶりですね……」
魔女「あたしが勝手に魔王様のケーキを食べちゃった時以来だねー」
魔女「行ってくるよ」
竜人「いえ、少し一人にしてあげましょう」
竜人「……季節外れですが、今日は鍋にしますか」
――――――――――――――――――――――――――
268 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 20:13:42.21 ID:Okf816dvo
* * *
魔王「うえええええええええええええええん」
魔王「嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌いっ」
魔王「きらいきらいきらいきらいきらいきらいきらいきらいーーーっ」
魔王「だいっっっっっっっっきらい!!!!!」
魔王「ぎーーーーーーーーーーーーーっ」
魔王「はあはあ……はあ……」ムク
ガサガサ……
魔王「……」パラパラ
『こうして世界に平和が訪れました。
魔族と人間は手を取り合って、ずっとこの平和な世界を保っていこうと誓い合いました。
勇者と魔王はと言うと、その年の終わりに式をあげ、二人で末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし』
――――――――――――――――――――――――――
269 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 20:17:12.59 ID:Okf816dvo
魔王「ばかぁーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
魔王「こんなものっ!!こんなものぉ……うえええええええん」
魔王「大体魔族と人間じゃ結婚できない!!!グリフォンの馬鹿ああああああああっっ」ブンッ
魔王「ばかばかばかばかばかばかばかばか!!」
魔王「わあーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」
魔王「…………」
魔王「こんなのずっと大事にとっておいて……」
魔王「最後のページだけ何度も読み返したりして……」
魔王「……はは」
魔王「……馬鹿みたい……」
魔王「……………………ずっと……」
――――――――――――――――――――――――――
270 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 20:19:16.84 ID:Okf816dvo
――――――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――
ザァァァァァ……
「ああっ はあ、はあ……はあ、はあ……」
ザザッザッ ガササッ
狼「ガウッ」
「ひ……」
??「……!? おいっだれかいるのか?」
「!!」
??「まて!」
「ううっ……う……はあ……はあ、はあ」
「あうっ……!」
ベチャッ
狼「ガルルルルルル……」
狼「グルルル……」
「あっ…… やめて…… やだっこないで……」
「くるな……!!」
――――――――――――――――――――――――――
271 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 20:22:11.38 ID:Okf816dvo
狼「ガウゥッ!!」
「……!」
??「あぶないっ!」
ガブッ
「…………?」
「えっ……」
??「いってえ!!……このやろっ!」グイ
狼「グエッ」
??「はなせ!!」ブン
??「んでもってどっか行け!!!」
狼「ガルルルル……」
??「……」
狼「…………」
タタッ……
??「大丈夫か」
「う……うでっ 血…………! うでがっ……」
??「ああ、いたいけどオレは平気だ。師匠にやられた方がずっといたいし」
「あっ……」
??「おまえはケガ…… お、おいっ しっかりしろ!!」
――――――――――――――――――――――――――
272 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 20:24:54.88 ID:Okf816dvo
「……うぅん……うう……」
「……ハッ」
??「ああ、起きたか」
「……!!」ダッ
??「えっ なんでにげようとするんだ。外は大雨だぞ、やめとけ」ガシ
「……」バタバタ
??「視界もわるいし、いま外にでても迷うだけだ。
雨があがったら村までおくってやるよ。しんぱいすんな」
??「このちかくの村の子どもだろ?森でまよったのか?」
「…………」
「ここ……」
??「おまえが気をうしなった後、たまたまみつけたほら穴だ。
ここならケモノも来ないだろうし、雨宿りもできる」
??「まってろ、いま火をつける」
――――――――――――――――――――――――――
273 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 20:27:56.52 ID:Okf816dvo
??「火炎魔法」
シーン
??「火炎魔法!」
??「か、え、ん、ま、ほ、う」
??「くそっ!つかんかい!火炎魔法~~~っ」
ボッ
「えっ それ……」
??「はあはあ……やっとついた」
??「もっとこっち来いよ、かぜひくぞ」
「……魔族……?」
??「え?オレ?ちがうちがう。むしろぎゃくだよ」
??「オレはいつか魔王をたおすために旅立つんだ。いまはその修業中」
??「でも師匠とはぐれちゃってさ。剣も川にながされちまった。
剣があればこんなケガ負わなかったんだけどな」
「…………けが…… かして」
??「……? あれ……おまえ回復魔法がつかえるのか?」
「……」
??「そんな小さいのにすごい奴だな。オレなんて魔法は全然だ。神官?」
「……うん」
――――――――――――――――――――――――――
274 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 20:30:08.14 ID:Okf816dvo
「……魔王って言った」
??「え?」
「さっき……」
??「ああ。魔王はわるいやつなんだよ。あいつのせいでみんな苦しんでるんだ。
魔族の王さまだ」
「どこにいるの……?」
??「さあ……オレはまだしらない。大人にきけば分かるかも。
でも、どっかにいることはたしかだぞ」
「……」
??「ま、心配すんなよ。オレがいつか絶対たおしてやる」
「……」
??「……無口な奴だな」
??「なあ、ずっと気になってたんだけど、なんで目に布まいてんの?
目が見えないってわけじゃないんだろ」
「……」
??「ぬれてて気持ちわるいだろ? とって、火でかわかせば」
「……いい」
??「……。そんなのしてたら、歩きづらくねーの?」
「……」
――――――――――――――――――――――――――
275 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 20:34:01.62 ID:Okf816dvo
??「まあ……いいけどさ」
??「雨、止まないな」
「……」
「……たすけてくれて……」
「……、……」
??「ああ……いいよべつに。ケガなくてよかったよ。
でも、そのまえに声かけたのになんで逃げたんだよ?」
「……」
??「……ま、いっか。 おまえ、名前は?」
??「オレは勇者」
「ゆうしゃ……」
「…………勇者」
ザアァァァァァ……
―――――――――
――――――――――――
――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――
276 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 20:37:52.58 ID:Okf816dvo
魔王「…………」
魔王「ぐすっ……うぐ……ひぐ……」
魔王「でもこんな日がくるだろうということはちゃんと分かってたんだ……」
魔王「そうだ」
魔王「もう姿を隠して逃げ回る生活をしなくてもいい。
堂々と自分らしく生きることができる世界」
魔王「魔族と人が種族を理由に戦うことなく、ともに手をとりあって生きていける……
夢見ていた理想郷が実現したんだ。これ以上なにを望む」
魔王「争いのない世界……魔族の人権が認められている世界……」
魔王「それ以上を望むのは傲慢だ」
魔王(そもそもこんな個人的なことに現をぬかしている場合ではない)
魔王(宮殿の中に魔族の台頭に眉をひそめる者がいないとは言えない。
その者たちが声を大にしないようあの国王が抑え込んでくれているのは知っている)
魔王(事前に潰せたのはよかったが、人身売買を生業とする犯罪組織が魔族を狙おうとしていたこともあった……)
魔王(それに……創世主の一件は、あれで本当に終わったのか……?)
魔王(……)
魔王「……そうだ、私にはまだまだやらねばならないことがある。
ふう、だんだん頭も冷えてきた…… ぐすっ……」
魔王「あーっ、勇者くんに好きな人ができてよかったっ!」
魔王「そういうのに疎いから心配していたんだ。これで一安心だな」
魔王「人の……一生は……私たちと違って……短いしなっ」
魔王「……どうせいつか二度と会えなくなる日が来るなら、
今日こうして現実を見ることができてよかったのかもしれない」
魔王「その方が悲しみは少なくてすむ」
魔王「…………うん、そうだ」
――――――――――――――――――――――――――
277 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 20:39:13.38 ID:Okf816dvo
コンコン
魔女「魔王様~。魔女ちゃんオンザ箒がお迎えにあがりましたよーご飯です」
魔女「廊下もつるっつるだからさ、歩くとこけるよ。さ、後ろにのって」
魔王「…………今日は……いらない……」
魔王「……ん? 廊下がつるつる……?なんだこれは。あ……またやってしまったのか」
魔王「すぐに全部融解させないと……」
魔女「はいはいそんなの明日でもいいですから、いまはご飯だよ。ほらのったのった」
魔女「今日は鍋だよー」
――――――――――――――――――――――――――
278 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 20:45:04.16 ID:Okf816dvo
魔王「うう……城がひどい有様だな。すまなかった。後で元に戻す」
竜人「最近暑かったのでちょうどいいですよ」
魔女「ていうかかき氷つくれんじゃん。シロップあったっけ」
竜人「イチゴなら」
魔女「じゃあデザートよろしくね竜人」
竜人「そのくらい自分でやりなさい!」
竜人「熱いので火傷気をつけてくださいね」
竜人「魔王様、無理しなくてもいいですけど、少しは召し上がらないとだめですよ」
魔女「あたしがフーフーしたげよっか?」
魔王「……美味しい」
魔王「……」
――――――――――――――――――――――――――
279 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 20:49:20.10 ID:Okf816dvo
竜人「魔王様、食べながら聞いてほしいのですが」
魔王「……ん?」
竜人「妖使いさんに聞きました。東国には人を魔族に、魔族を人に変える秘法があると」
竜人「まだ方法は詳しく分かっていないようですが、魔王様なら解明できるのではないでしょうかね」
魔女「できるできる。あたしたちも協力するし」
竜人「……もし魔王様が心の底からそれを願っていて、後悔しないと誓うのなら、私たちは止めませんよ」
竜人「人間になっても構いません」
魔王「え……」
魔王「……なにを言っている?」
竜人「そうしたら魔王は私か魔女が継ぎますので、後のことは御心配なさらず」
魔女「ジャンケンで決めるからいいよー」
竜人「ちゃんといろいろ考慮して決めます!」
魔女「人間になったら、いっしょに生きて、いっしょに老いていけるよ」
魔女「結婚もできるしね」
竜人「先代の魔王城の廃墟に行ったあの日から……」
竜人「魔王として、本当によく頑張ってくれたと思います」
竜人「でも、もうそろそろご自分の幸せをお考えください」
竜人「魔王様」
魔王「……しかし……私は、人間……になんて」
竜人「分かってます。今日は我々の気持ちを伝えたかっただけですので。
魔王様もごゆっくりお考えください」
竜人「ところでおかわり召し上がりますか?作りすぎてしまったんですよね……」
魔王「……」
魔王「……うん」
竜人「もし私の力が必要なら、いつでも仰ってくださいね」
魔王「うん……」
竜人「なんなら今から恋敵を暗殺して参りましょうか?」
魔王「それはやめろ」
――――――――――――――――――――――――――
280 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 20:51:38.12 ID:Okf816dvo
* * *
ダバーーン
男「うっ ヒィィィィイ」
勇者「おらあああ!てめーかここらへんで麻薬ばらまいてるっつー組織の頭はよーー!!
とっとと白状しやがれってんだケツから剣ぶっさして奥歯ガタガタ言わされてーんか アァン!?」
男「何故ここがバレてくそぉ用心棒やっちまってくれえ!」
兵士「勇者様お気を付け下さいその用心棒に我々の仲間が何人もやられ」
勇者「どけゴラァ!!!俺はそっちの奴に用があんだよ」
用心棒「げへぇッ」
勇者「でやってねーのかやったのかやったのかやったのか、どっちなんだ?
3秒以内に答えなければ人として大事な器官を諸々潰す。 3、」
男「やりました」
勇者「よし」
勇者「隊長!ボスを捕まえたぜ。もう暇をもらっていいか!?」
隊長「感謝する勇者!しかしすまん、今度は南の方で連続放火事件が」
隊長「それがすんだら北で貴族の娘が誘拐され」
ドカッ!!
勇者「おい放火魔くそ野郎てめーなにしくさっとんじゃコラ現行犯逮捕牢屋にブチ込むついてこい暴れんな」
男「うわなにするやめ」
バギャーン!!
勇者「ここが誘拐犯が隠れ住んでる家だなオイ無事か貴族の娘ー!!」
娘「無事です犯人はこいつです」
勇者「てめーかくそったれ大人しくお縄につきやがれ余計な手間かけさすんじゃねえよクズが」
男「くく来るなコイツがどうなってもいいのかー!」
勇者「人質のハンデくらいで俺に勝てると思ってんのか片腹痛いわオラァァ!」
――――――――――――――――――――――――――
281 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 20:56:50.15 ID:Okf816dvo
勇者「隊長おおおっ!!全部捕まえたぜ暇をもらってもいいか!?!?」
隊長「は、はやいな。オーケー全部片付いた、もう……」
勇者「おっしゃ!!!」
兵士「隊長!ちょっと……ひそひそ」
隊長「む?なに?」
勇者「あああっもうオーケーもらっちゃったしその後に何があっても俺はもう転移魔法使っちゃうわけだから関係ないね!」
勇者「じゃっお先失礼しまーす!!」
隊長「待て勇者!」ガシ
勇者「ああああああ勘弁してえええ」
隊長「国王陛下がお呼びだそうだ。すぐに宮殿に向かえ」
勇者「いやだ」
隊長「……」
隊長「いやだじゃない!!さっさと行け!!!」
勇者「うわああああああ!!!ちきしょおおおーーーーーっ!!!」
――――――――――――――――――――――――――
282 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 20:58:22.76 ID:Okf816dvo
王都
勇者「勇者参りました陛下!!何か御用でございましょうかっ!!」
国王「ああ、来てくれたか。忙しいところすまないね」
勇者「全くです!!」
戦士「これっ 勇者」
騎士「勇者さん目が血走ってますけど大丈夫ですか?」
国王「今日来てもらったのは……ちょっと気になることがあってね」
国王「妖使いがさっき私の元を訪ねてきて……というか本人もいまこの場にいるのだけど」
妖使い「どうも。俺の使い魔の妖孤が未来予知をしたんだよ」
勇者「は?予知?妖孤もできるのか?」
妖孤「ええと……たまにです。たまに」
国王「妖孤の予知を信じるとだね……」
国王「もうまもなく世界が滅亡するらしいよ」
国王「具体的に言うと、あと8日ほどで」
勇者「…………は……?」
――――――――――――――――――――――――――
283 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 20:59:00.83 ID:Okf816dvo
勇者「滅亡って……でも創世主はあの時確かに倒したぜ」
妖孤「でも見たんです……世界がどんどん闇に呑まれてゆく様を」
妖孤「信じたくはないですけど……」
勇者「……」
勇者「またあの影が出るってのか?」
戦士「今のところ王都周辺では異常はない。ほかの地域でも現在情報収集中だ」
騎士「図書館地下の扉も消えたままです」
妖使い「やっぱさ、創世主は倒せてなかったんじゃないの?
あれはただの暇つぶしのお遊びで、彼が言ってた通りひとつの劇だったりして」
妖使い「もしくは創世主を倒したことによる世界の崩壊とか」
勇者「……後者だったら俺のせいだな」
勇者「しかし、影が出るなら……またあいつに魔法を使ってもらわなきゃいけないのか」
勇者「それで原因を突き止めて……でもあと8日だって?いくらなんでも時間がなさすぎる」
――――――――――――――――――――――――――
284 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 21:00:08.81 ID:Okf816dvo
国王「宮廷の預言者たちはこのことについて何も視てはいないんだけど
……確か魔王も未来予知の力があったよね」
国王「勇者。魔王にこのことを知らせに行ってくれるかい。もしかしたら彼女も何か感じているかもしれない」
妖使い「うーん……それはどうだろうな」
国王「どういうことだ?」
妖使い「今の魔王に未来予知の力があるかは疑問だよ」
妖孤「たぶん……魔王さんはいま、未来を視ることはないと思います。
未来を怖がっている方に予知の力は宿りませんから」
勇者「…………」
姫「いいえ」
騎士「姫様!?どちらから……」
姫「彼女は未来を怖がってなんかいませんわ。
勇者、私もいっしょに連れて行きなさい。あなた一人ではまたこじれそうよ」
勇者「……分かりました!」
勇者「とにかく魔王にこのことを知らせてくる。その後また戻ります!」
――――――――――――――――――――――――――
285 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 21:01:37.07 ID:Okf816dvo
* * *
月の町 魔王の家
魔王「んん……」ムク
魔王「朝か……」
魔王「顔を洗いに行かねば」
バシャバシャ
魔王「……」
魔王(なんだか城が騒がしいな……あとで下に降りよう)
魔王「……寝癖を直してから」
魔王「……?」
魔王「…………!?」
――――――――――――――――――――――――――
286 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 21:05:00.38 ID:Okf816dvo
ヒュン
勇者「おっしやっと来た!!うおおおおおおおあああああああ」
チリンチリンチリン
勇者「俺だ!!10秒以内に応答がなければ勝手に入るぞ!!10中略0おじゃましまーす!
魔王いるかーーっ!!緊急事態だ大事な話がある逃げるなよ!!」
勇者「姫様。ついてきて頂いて大変恐縮なのですが、少しだけ二人で話させてもらってもいいですか」
姫「ええと……今の様子を見る限りとても不安ですが、分かったわ。行ってらっしゃい」
勇者「魔王ーーーっ どこだ!?」
ダッダッダッダッダ……
バターン
勇者「魔王!!!ここにいたのか!!!」
魔王「……!?」
勇者「大変だ。落ち着いてよく聞いてくれ」
勇者「もう間もなく世界が滅亡するかもしれないんだそうだ」
――――――――――――――――――――――――――
287 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 21:06:46.43 ID:Okf816dvo
魔王「……」
勇者「……」
魔王「……」
勇者「なあ聞いてるか? なんでタオルで顔隠してるんだよ」
勇者「こっち向……」
魔王「……」パサ
勇者「なっ お前、それ……どうした!?」
魔王「どうやら、この世界に何らかの異変がまた現れたのは間違いないようだ」
魔王「……大変だ。落ち着いてよく聞いてくれ」
魔王「私は人間になってしまった」
勇者「……ええええええーーーーーーーーーっ!!」
――――――――――――――――――――――――――
288 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 21:08:39.01 ID:Okf816dvo
魔王「うう……どうしよう」ガクッ
勇者「どうしようってお前……どうする」
魔王「私は……私は本当に人になりたいなんて……おも……おも……」
魔王「そうだ妖使いはどこだ? あやつの仕業では?」
勇者「妖使いなら王都にいたが、あの様子だと関係ないと思うぞ」
魔王「聞いてみなければわからん!とにかく王都に行ってくるっ」
魔王「転移魔法……ああっ 人間になってしまったから魔法が使えないっ」
魔王「わあああああああっどうしようどうしよう!魔法が使えない魔王などただの豚ではないかっ」
勇者「お、落ち着け!しかし一体なんだってこんなことに…… ん?待てよ」
勇者「……火炎魔法」
シーン
勇者「……」
勇者「うわああああああああ俺も魔法が使えなくなってる!!!さっき転移はできたのに何故だ!?」
勇者「魔法が使えない勇者なんてただの豚じゃねえか!!!」
魔王「……そういえば先ほど8日で世界滅亡と言ったがそれは本当なのか」
勇者「妖孤が未来予知で視たんだ」
魔王「あと8日で世界滅亡なのか」
勇者「らしいんだ」
魔王(世界滅亡の危機に、魔法が使えなくなった魔王……)
勇者(世界滅亡の危機に、魔法が使えなくなった勇者……)
魔王「まずいのでは?」
勇者「まずいな」
――――――――――――――――――――――――――
289 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 21:10:48.36 ID:Okf816dvo
魔王「ほかの魔族の様子を見てくるっ」
勇者「俺も行く」
姫「えっちょっと何事……あら?魔王さん……その目と耳は……?」
勇者「姫様もいっしょに来てください!割と一大事です!!」
勇者「竜人と魔女は!?」
魔王「分からない。町の中にはいるはずだが」
勇者「俺は上を見てくる!魔王と姫様は一階と城の外を頼む!」
魔王「はあ……はあ……」
魔王「…………?……」
魚「……」ビチビチ
魔王「…………」
魔王「……まさか……魚人…………?」
魔王「……今日城に来ると行っていたがまさか……」
魔王「よく見ると顔が似ている……ような」
魔王「そんな……」
――――――――――――――――――――――――――
290 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 21:13:14.49 ID:Okf816dvo
魔王「まさかそんなことあるはずない」
魔王「……そうだ!竜人ならこの時間いつもキッチンにいるはずだ」
魔王「キッチンに行ってみよう」
魔王「竜人!!」
魔王「りゅ…………」
魔王「……ええ……っ」
トカゲ「……」チョロチョロ
魔王「……まさか竜人なのか……?」
魔王「魚人は魚に、竜人はトカゲになってしまったのか……?」
魔王「わああああああああああっ」
――――――――――――――――――――――――――
291 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 21:16:59.67 ID:Okf816dvo
姫「魔王さん!?一体なにが!」
勇者「どうした!いまの悲鳴はなんだ!」
魔王「竜人が……竜人がぁ……」
――――――――――――――
―――――――――
――――
勇者「なにい! しかし魚人が魚になるのはまあ分かるとして、
竜人がトカゲはおかしくないか!あいつドラゴンだろ!」
勇者「トカゲだったら竜人じゃなくてリザードマンだろ!」
魔王「でもでもっ……竜はトカゲに似ていなくもないと言える」
魔王「それにキッチンにトカゲが入り込むなんてこと滅多にない。
竜人がいつもこの時間には朝食を用意してくれて……」
トカゲ「……」チョロチョロ
魔王「ああっこんな姿になってしまって……!今の私には元に戻すだけの力がない」
魔王「竜人!口うるさくてたまに剣呑な光を瞳に宿すけれど、
いつも私のためを思って行動してくれていたのにっ」
勇者「過去に絶対人を何人か殺してるだろお前ってくらいの殺気を出すけど、
料理だけはやたらうまい竜人!なんてこった!どうにかできないのか!?」
姫「ま、まさか本当にこのトカゲが竜人さんなんですの……?」
姫「竜人さん!私が分かりますか……!?」
トカゲ「……」チョロチョロ
勇者「あ、逃げる」
魔王「うう……どうしよう……元には戻せないのか……」ペタン
姫「……………………あの……」
姫「一つだけ……思い当る方法があります」
魔王「それはなんだっ?」
――――――――――――――――――――――――――
292 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 21:21:52.90 ID:Okf816dvo
姫「こういうおとぎ話知りませんか?」
姫「ある日どこぞの国の王子が魔法でロバ変えられてしまうの。
王子を元の姿に戻すことができるのは……たったひとつだけ」
姫「……そのぉ……王子を好いている者からの……愛情あるキスだとか何とか」
魔王「本当に!?そうなのか 姫?」
姫「でも本当はどうかは全然分からないのですけど!!ロバだし!!トカゲではないし!!」
魔王「いや試す価値は大いにある……」
魔王「あっでもだめだ!竜人に恋人はいないのだっ……
キスで、その上愛情あると銘打つからには友情ではだめなのだろう」
魔王「……っ」
魔王「こんなことに……なってしまうなんて……わ、私がしっかりしていなかったからぁ……うっぅ……」
勇者「魔王しっかりしろ!あいつならトカゲでもたくましく生きていくさ 心配いらない」
魔王「そんなのだめだあっ」
魔王「ああ、どこかに竜人のことが好きな者がいないだろうか……
ちょっと私は探してくっ ぶにゃっ」ドテッ
勇者「落ち着け!!大丈夫か!
それなら中身を知っているここの魔族より、外見だけしか知らない奴を探した方がいい!」
勇者「外面だけはいいから!!!!中身はただの元ヤンだから!!!」
姫「……魔王さんも勇者もちょっとお待ちなさい!!」
――――――――――――――――――――――――――
293 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 21:31:23.80 ID:Okf816dvo
姫「…………わた……私が……条件を満たしていると言える可能性がなきにしもあらず」
魔王「……えっ……そうなのか?」
魔王「でも、友情ではだめなのだぞっ。愛情ではないといけないのだ……っ」
姫「は……はい」
魔王「では姫は竜人を性的な目で見ていると考えていいのか!?」
姫「はえっ……え……まあ言い方を変えれば……そうかもしれません」
魔王「姫は竜人に性的魅力を感じていると考えても!?
彼と接吻やそれ以上も行えると考えていいのか?」
姫「あ……あわわぁ……!?」
勇者「ちょ、ちょっと魔王さん落ち着こう……」
魔王「どうなのだ姫。はっきり答えろ。君の全てを彼に捧げることができると言うのか」
魔王「さらに竜人の身も心も長所も短所も受け入れて生涯添い遂げることができると言うのか!?」
姫「ひええええええ……っ」
勇者「もうそろそろやめて差し上げろ!!」
姫「…………っっ 破廉恥なことはまだ考えたことはないですがっ
この気持ちは偽りなどではありません!本物です!」
姫「私が彼を元に戻せるというのなら、キキキキスでもなんでもするわ!」
勇者「姫様……じゃっお願いします。はいこれどうぞ」
魔王「ありがとう。では頼んでもよいか!」
姫「は、はい……で、で、ではいきますよ……っ」
姫「……ふ……っ」
――――――――――――――――――――――――――
294 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/06/05(木) 21:36:43.61 ID:Okf816dvo
――バタンッ!!
魚人「てーーへんでい、てーへんでい!!オレっちなんと魚成分まるっと抜けて人間になっちまったよ魔王様!!」
竜人「魔王様!こちらにいらっしゃいましたか……探しましたよ!」
竜人「非常事態です、私含め全ての魔族が人間になって魔法が使えなくなりました」
魔女「空飛べないよーーーっ どうしよう魔王様ーーっ 箒がただの清掃グッズになり果てちゃったよー」
魚人「あれっ勇者に姫様も来てたんかい!!キッチンに座りこんでなにしてんだあ?」
魔女「あ、やっぱ魔王様も人間になっちゃってるっぽいね」
竜人「これは一体なにがどうしてこうなってしまったのでしょう」
竜人「……? どうしました? というか本当になにをしていたんですか」
魔王「……」
勇者「……」
バリーーーーンッ!!!
勇者「姫様あああああああああああああぁぁぁっ!!!一国の姫がガラスぶち破っちゃだめです!!」
ダッ!!
勇者「姫様どちらに行かれるのですかーーーーーーーーーーっ!!!」
魔王「姫! すまなかった、戻ってきてくれっ!」
勇者「今しがたのことは俺も魔王も記憶から消しますからっ!!
くっ さすがあの国王の妹、足が尋常じゃなく速いっ!!追ってくる!!」
魔女「うわ、トカゲ入ってきてるし。だれよ窓開けっぱなしにしたの」
竜人「あなたしかいないでしょう」
201 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/25(日) 22:38:57.67 ID:0pa6hmm8o
勇者「あー!?ロールケーキか何だか知らないが、戦いで決着がつくなら有り難い!」
魔女「レアチーズケーキだかアップルパイだか知らないけど、さっさと姿現しなよ」
竜人「ロールプレイングですよ。二人とも話ちゃんと聞いてました?」
戦士(ロールプレイングって何だ……とは聞けない雰囲気)
騎士(家帰ったら辞書引こうっと……)
ザッ!!
スタッ……
忍「何か来ますよ!」チャキ
――キィンッ!!
戦士「むっ!! ぐ……くっ!なんて力だ!こいつは……!?」
魔女「え……!?これって」
勇者『……』ググ
魔女「勇者!?」
勇者『ははは……勝てるかな?』チャキ
騎士「魔女さんあぶなーい!!」ズサッ
――――――――――――――――――――――――――
202 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/25(日) 22:40:18.66 ID:0pa6hmm8o
妖使い「きっさまぁ!!寝返ったのかこの裏切り者!!死に晒せ!!」
勇者「ま、待て!俺はここにいるぞ!あれは偽物だ!!」
竜人「これは……困りましたね。どっちの勇者様の首を折ってしまうか分かりません……」
勇者「怖いこと言うなよ!!ちゃんと本物じゃないか確認しろよ!?」
忍「これは好都合!死ねえぇぇぇぇぇオラァァァァァッ」
勇者「ちょっとは戸惑って!」
ドカーン
勇者「無傷か。じゃあ俺が相手だ!自分くらい倒せるに決まってんだろ!」キン
勇者『……』ガッ
キィンッ ザザッ キンッ ザシュ
騎士「うわ……す、すごい」
戦士「俺たちも援護するぞ!」
騎士「はい!正直自分場違いな気がしなくもないですが、はい!!」
――――――――――――――――――――――――――
206 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 21:20:35.84 ID:RsnkkEoCo
勇者「ぐっ、強い……さすが俺。なかなか強いぜ。はあはあ」
勇者『……』スッ
バキャアァァッ!!!
妖使い「なにぃっ!うわあ!! 妖孤をとっさに盾にしたおかげで俺は無事だが、みんな大丈夫かあー」
妖孤「主様に温かい人の血は通っていますか~~? 死ねボケ主」
魔女「わあなんて破壊力。ていうかこれ魔法じゃないの」
竜人「斬撃に魔力を纏わせたのですね」
勇者「なにっ? そんなことできんのかよ?」
竜人「魔法が上手な勇者様となると……これは……」
忍「本物の勇者様より手ごわいですね!」
勇者「くっそ~~俺が気にしていることを~~!俺のコンプレックスを抉り抜いてきやがってぇ」
勇者「つーかそれなりには魔法だって使えるし!魔王の隣にいるから下手に見えるだけだし!」
勇者「うおおおお!こうなったら何が何でもお前を倒す!!」
妖狸「きゅう……」
なめこ「旦那……あっしはもうだめでさ……さよなら……」
妖使い「妖狸!それになめこ!!大丈夫か!?」
妖使い「な……なめこ!!なめこーーーーーーーーーーーーっ!!!」
妖使い「なめこ死んだわ。ギャグ枠次なにいれよ」
忍「若!ふざけてねーで戦ってください!」
妖使い「合点でい!」
――――――――――――――――――――――――――
207 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 21:22:09.18 ID:RsnkkEoCo
ガキィン!
勇者『勝てるわけないじゃん。創造物が創造主に勝てっこないって』
勇者『あはは。今の悪役っぽい台詞だろ。そしたら君はたぶんこう返すんだ』
勇者『そんなのやってみなけりゃ分からないだろー とかなんとか』
勇者「……!」
勇者『あはは』
ザシュッ!!
勇者「うおっ!?」ヒョイ
勇者「……!!」
勇者『まあ、楽しかったよ』ヒュッ
トン
魔女「麻痺魔法っ」
勇者『おっと……危なかった』ブン
騎士「魔女さん!!下がっててください!」パッ
騎士「ぼ……僕があなたをお守りいたしますので!」
魔女「誰だっけ?」
騎士「ひどいっ!!騎士ですよぉ!!」
――――――――――――――――――――――――――
208 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 21:23:36.75 ID:RsnkkEoCo
戦士「ぐぅっ……ぐああああ!!」ズダンッ
勇者「戦士!大丈夫か!」
戦士「勇者の姿にやられると尚更腹立たしい……!ぐはあ」
勇者「すまん!」
妖使い「どらああああ!なめこの仇じゃボケーーー!!去ねぇ!!」ダッ
勇者「馬鹿、こっちは本物の俺だ!!あっち向かえあっち!!」
妖使い「臨兵闘者皆陣列在前!封!」バシッ
妖使い「よーしこれで敵の力を封じたぞ勇者!いまだ、畳みかけろー!」
勇者「ふっざけんなテメーーーーーーーーーーっ!!!なにしてくれてんだよ!!?」
勇者『あはは。コント?おもしろいな』ズバッ
勇者「ぎゃーーっ」
勇者(……!)
勇者『……』ビッ
勇者「くっ……うっ このやろっ!」
勇者『その剣もらい』ヒュ
ヒュンヒュンヒュン……カッ
――――――――――――――――――――――――――
209 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 21:32:59.46 ID:RsnkkEoCo
勇者「うおらあ!」ガシッ
勇者「ふんっ」グル
勇者『あれ?』
勇者「せえええええいっ!!」
忍「おお、見事な一本背負い!」
ビュン
勇者『……投げてどうなるんだ?』クルッ
ゴオッ……
竜「空中でお前を捕まえられる」ガパ
勇者『……あー 確かに』
ガブッ!!
ズダン……ッ!!
勇者「う……自分が竜に噛まれてる姿はあまり見て楽しいもんでもないな」
――――――――――――――――――――――――――
210 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 21:35:39.93 ID:RsnkkEoCo
ギチギチギチ……メキメキ
勇者『……』
竜(骨を砕いているのに、こいつ痛みがないのか?)
竜「ぐっ……しぶとい奴め」ギギ
勇者『いまのはおもしろかったよ』ガッ
忍「よーし今のうちにこいつの口に火薬つめとこっと」
魔女「よーし今のうちにこいつに毒麻痺睡眠スタン下痢混乱魔法かけとこっと」
魔女「ついでに触手も」
騎士「な、何故!?」
竜「馬鹿力め…… 勇者様!私がおさえているうちに……!」
勇者「待ってろ、いま行く!!」
戦士「……むっ 皆気をつけろ!!上方から何か来る!!」
勇者「えっ」
ズズン……!
勇者「なに……っ!?」ガク
妖使い「うわっ」ビタン
騎士「ぐぐぐ……なんだこれ!?体が重い!」
勇者「これは……!重力魔法だ!」
勇者「俺が知ってる中でこれを使えるのはあいつしかいないんだが……まさか」
――――――――――――――――――――――――――
211 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 21:37:01.24 ID:RsnkkEoCo
スタッ
竜「……え!?」
魔女「! 魔王様!?」
魔王『……うん』
勇者「いや、偽物だ。魔王があんな高いところから竜の背に飛び降りれるわけないだろ!」
勇者「あんな運動神経ある奴は魔王じゃない!!」
魔女「確かに」
戦士「確かに」
勇者「竜人逃げろ!」
トン
魔王『――……』
竜「!! ガフッ……」
――――――――――――――――――――――――――
212 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 21:38:45.65 ID:RsnkkEoCo
魔女「うわっ 竜人がやられた!!」
勇者『……』
魔女「ってあたしもピンチ! えい、睡眠魔法!」
勇者『……』バチッ
魔女「ええ……斬られた……そんなんアリ?」
魔女「うわぁっ……!」
ドサッ……
魔女「えっ?」
騎士「魔女さん……お怪我はないですか……ゴフ」
魔女「えっ!……えっと……えっと……」
騎士「騎士です……」
魔女「騎士!!大丈夫!?なんであたしを庇ったの」
騎士「ひ……ひとつ……お願いがあります……」
魔女「なに?」
騎士「僕は影が薄くて……モブ同然ですが……」
騎士「できたら僕の名前を……覚えて……くださ……」ガクッ
魔女「騎士ーーーーーーーー!」
忍「ああっ なんだかこれはさすがに不利なんじゃ」
妖使い「あ」
忍「え?」
バチバチバチバチ……
魔王『逃がさないよ』
忍「あー……」
妖使い「あの俺、絶縁体じゃないから……」
――カッ!!
アーーーー…
勇者「忍ーー!妖使いーー!」
――――――――――――――――――――――――――
213 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 21:42:40.37 ID:RsnkkEoCo
魔女「く。騎士の死は無駄にはしないよ。仇は討つからね!」
勇者「あいつ死んだの!?」
戦士「勝手に殺すな!まだ息はある。ほかの者もな」
勇者「しかしあっという間に数減ったな……あと残ってんの3人だけか」
勇者「あいつ一人だけでも手こずるのに、それに魔王が加わるのは……
さすがにちょっとまずいな……」
勇者『2対3くらいが妥当だよね。一人を大人数で叩くなんてかっこ悪いよ』
魔王『そうだそうだ。いっけないんだー』ピョンピョン
勇者「……っ……く……。その喋り方かわいいな……」ガク
戦士「おい……このメンツでお前までふざけだすと、俺はどうしていいか分からん」
魔女「でもほんとに困った!勇者はともかく魔王様の姿だとやりづらいよ」
勇者「確かに。俺はともかく魔王はちょっと戦いづらい……!」
戦士「勇者なら別に全力で斬りかかれるんだがな……!」
勇者「お前らほんとに俺に遠慮がないな」
魔王『重力魔法』
戦士「来るぞ!避けろ!」
魔女「あたしは箒乗って空から呪文かけるね」ヒョイ
魔女「魔王様に沈黙呪文きくかわかんないけどやってみる!」
――――――――――――――――――――――――――
214 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 21:45:50.92 ID:RsnkkEoCo
勇者「俺はまずこいつの動きを止める……!!
戦士は魔女の援護を!」
戦士「分かった!」
勇者「かかってこい偽物……!」
勇者『……ははっ』
ジャリッ ガッ!!
――――――――――――――
――――――――――
――――――
ズガッ ガガガガッ!!
勇者「はあ……はあ…… ぐっ またそれか!」
勇者「おりゃあ!」ザシュ
勇者『そろそろ死ぬ気になった?』
勇者「なんねーよ!」キィン
勇者「お前この世界を大昔につくったんだろ?
なのになんで今更壊そうとするんだよ」
勇者「この世界の存在理由ってなんだよ」
勇者「なんで俺たちを消したいんだ」
勇者『ああ?てめーらには関係ねーよ』
勇者『とっとと消えろ!!』
勇者『見るだけで……思い出すだけで苦しいんだ。
この世は呪いそのものになってしまった』
勇者『どうせ遅かれ早かれこうなることは分かってた』
勇者『消えろ――……』スッ
勇者(ん!? 上段、突き、フェイントからの振りおろし……俺がよく使う攻撃だ)
勇者(そうか、こいつは俺の分身だから、それを逆手にとれば……!)
勇者(次はどうくる?)
――――――――――――――――――――――――――
215 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 21:46:32.36 ID:RsnkkEoCo
勇者「……」サッ
勇者(水平斬りか!俺だったらその後、相手が避けたら体勢を崩すために下段を狙う。
相手が防御したらそのまま押し切る)
勇者(やっぱり足元狙ってきたな……じゃあ次は突きの連続が来る)ガッ
勇者(そしたら……振り下ろし、袈裟切り……次は)
勇者(袈裟切りからの左切り上げか、フェイントか……どっちだ!?)
勇者(……フェイント!!)
ギインッ!!
勇者「と見せかけての切り上げだーー!!」ズバ
勇者『……!』
勇者『……あーあ。やられちゃったな』ドサッ
ハラハラ……
勇者「はあ……はあ……黒い水……こいつもか」
勇者「自分が馬鹿で助かった……すごい攻撃読みやすい」
勇者「俺のフェイントあんなに分かりやすいのか。まだまだだな……気をつけよ」
――――――――――――――――――――――――――
216 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 21:53:59.93 ID:RsnkkEoCo
魔王『氷の槍と大地の波』
バキバキパキ……パキッ
ベキベキベキ
戦士「うおおっ……」
ズズズズズッ
戦士「うおおおおおお!!?」ダダダダッ
戦士「ぐっ これでは全然近づけんではないか!
しかしこれで俺に注意を引きつけて、魔女が空中から沈黙呪文をかけられれば!」
ズガンズガンズガン
戦士「がーーーっ こんなもの叩き切ってやるわい!
大剣使いの戦士とは俺のこと…… おっ?」バキッ
戦士「……氷を斬った剣が……凍りついて……」
戦士「これじゃ使いものにならん!! くそっ!!」
戦士「魔女!!早くしてくれーー!俺が死ぬ前に!!」
――――――――――――――――――――――――――
217 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 21:54:35.68 ID:RsnkkEoCo
魔女「うう、でも空中からでも全然近づけないんだよー」
魔女「氷の槍がこっちにもびゅんびゅん飛んでくるしっ!」
魔女「……!なっ……」
魔女「攻撃の片手間に、土魔法でつくったオーブンと火炎魔法で……クッキーを焼いているだとぉっ」
魔女「もっと注意ひきつけて戦士!暇をもてあました魔王様がクッキー焼きはじめてるよー!」
戦士「ク、クッキー!?もっと注意をって……
無茶言うでない!地上は地形がどんどん変わって逃げ回るのも一苦労なんだぞ!」
戦士「ハッ……!?」
戦士「しまった、挟み撃ち!」
魔女「戦士ーー!」
戦士「くうっ!」
魔女「戦士の犠牲は無駄にしないよ」
戦士「見切りが早すぎるぞお前……!」
バキッ!!
戦士「なっ!お前ら大丈夫なのか!?」
騎士「まだまだいけます……!」
竜人「少し意識が飛んでしまっただけです」
魔王『増えたー』モグモグ
――――――――――――――――――――――――――
218 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 22:06:15.56 ID:RsnkkEoCo
竜人「魔王様の姿を借りるなど不届き千万……極刑です」
竜人「あいつの元までなんとか切り開きましょう!3人いればいけます」
騎士「い……けますかね?100人いても無理そうなんですが」
戦士「弱気になるな騎士!それでも国王直属の騎士か?」
魔女「がんばってー騎士!あたしの礎になってー!」
騎士「な……!?魔女さん……僕の名前とうとう覚えてくれたんですか!?」
騎士「……僕やります。僕が先陣を切ります!!」
竜人「礎とか言われてますけどいいんですか」
戦士「しっ。本人が幸せそうなんだからほっとけ……」
騎士「うおりゃあああああああああ」バキッバキッ
ズバッ!
――――――――――――――――――――――――――
219 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 22:08:08.37 ID:RsnkkEoCo
魔王『……』ブツブツ
竜人「ん!?」
魔王『火鳥 雷虎 氷獅子 岩土竜 風狼』
騎士「うぎゃーーーーーーーーーーーーーーーー」
戦士「なんだあれは!?」
竜人「囲まれたらアウトですね」
騎士「なんですかこのオンパレードはーーー
魔王さんも勇者さんも恐すぎなんですけど!!」
騎士「どんだけポテンシャル秘めてんですかーーーっ」
ズガンッ!!ビュンビュン バリバリバリ……ピシャーン! ゴォォォォ……
魔王『あはははは……』
騎士(僕死ぬなコレ)
魔女「しめた!地上がもはや地獄絵図だけど、これで魔王様もどきがあっちに気を取られた!」
魔女「一気に接近して……!」ビュ
――――――――――――――――――――――――――
220 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 22:10:11.95 ID:RsnkkEoCo
魔女「沈黙呪文っ」
魔王『……』チラ
バチッ!!
魔女「うそ、防がれた……」
魔女「だけじゃない!?はねかえされっ……!?」
魔女(うっそ!あたしが沈黙になっちゃった!)
火鳥「ピィィィ」バサバサ
魔女(いやーーーー助けて本物の魔王様ーー)ビュン
竜「魔女!こっちに!」
竜「なにやってんですか」
魔女(失敗しちった)
竜「ん? 勇者様の方は片付いたようですね」
竜「……魔女、まだ箒は使えますよね」
魔女(使えるけど)
竜「じゃああちらを頼みますよ。私はこっちを」
魔女(オッケ)
――――――――――――――――――――――――――
221 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 22:13:08.39 ID:RsnkkEoCo
騎士「くっ……この!」ブン
騎士「うわっ 熱……!!」
戦士「気をつけろ!近づきすぎると一瞬で丸こげになるぞ!」
戦士「……普通に斬って倒すのは難しいな。なんとか……あいつら同士をぶつけられれば」
竜人「それがいいと思います」
竜人「あれは魔王様の姿をしていますが、とても及びませんね。
魔王様だったらこんなでたらめな魔法の使い方はしません」
竜人「あの火の鳥と氷の獅子を誘導して、衝突させればうまくどちらも消せるはずです」
戦士「なるほどな。同じように岩と雷も誘導してと……」
騎士「あっ また重力魔法きますよ、気をつけて!」
ズシャッ
戦士「騎士!!おまっ……自分で注意喚起しといて自分だけ逃げ遅れてどうする!?」
騎士「うぐっ 僕のことは構わず先にあっちを! ぎぎぎぎぎ……」
竜人「今日どんだけ死亡フラグたてるんですか!」
ズズズズ……
騎士「うわーーーああ」
戦士「騎士ぃぃーーーーっ 馬鹿者!」
――――――――――――――――――――――――――
222 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 22:19:07.86 ID:RsnkkEoCo
魔王『はははは……!』
魔女「よおし、いまだ!」ビュン
魔王『分かってるよ?』
シュルシュル
魔女「! ……行ってきて、勇者!」
勇者「ああ!」バッ
魔王『ん?』
勇者「このやろうっ!!覚悟しろっ!!」チャキ
魔王『また君か。いい加減飽きたよ』ズズッ
――キィン!
勇者「空中から剣を!?」
魔王『折れない魔法の剣だよ』ヒュッ
勇者(はやっ……)
魔王『どうしたの?さっきより遅いよ。斬らないの?』
勇者「斬るに決まってんだろ!お前は……本物の魔王じゃない!」
魔王『本物なんてこの世界に何一つなかったよ。最初から』
魔王『全部にせもの』
グイッ
勇者「……!」
魔王『雷魔法っ』
カッ……!
魔女「勇者!!」
――――――――――――――――――――――――――
223 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 22:21:31.69 ID:RsnkkEoCo
―――……
魔女「うっ……目が……チカチカして」
魔女「勇者は……!?」
戦士「いまのは!?」
竜人「く……雷魔法? どっちのだ?あいつか……勇者様か……」
戦士「あんなのを食らったら、どっちも消し炭だぞ……」
魔王『あれっ……まだ生きてる。なーんだ、足らなかった?』
戦士「! まさか、勇者……!」
魔王『勇者?死んじゃったけど。じゃ、そっちも終わらせてやるよ』
竜人「また重力操作やるつもりですよ。離れてください戦士さん!」
戦士「分かってる!」ダッ
魔王『次は逃げ場なんてない』
魔女「勇者!生きてるんでしょ? どこ?」
ゴゴゴゴゴ……
魔女「……? なにこれ…… どわっ!!」
魔女「箒から落ちっ……わあああああああっ!!」
戦士「ぐおおお……! 何故だ、ここまで離れたにも関わらず……体が……ぐうう!」ガク
竜人「こんな広域を範囲設定できるなんて……」
魔女「体が重いよ~~」
――――――――――――――――――――――――――
224 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 22:26:41.56 ID:RsnkkEoCo
スタスタ
魔王『潰れろ』
魔女「あう」ビタン
竜人「ぐっ…… 貴様ぁ……!!」ググ
魔王『潰れちゃえ』
ミシッ ミシミシ……!
騎士「うう……」
戦士(息が……!)
魔王『消えろ。死んじまえ』
魔王『死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね』
魔王『あっははははははははは!!』
ザッ
魔王『……!』
魔王『あれ?』
ガッ!!
――――――――――――――――――――――――――
225 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 22:38:14.07 ID:RsnkkEoCo
ギギギ……
魔王『死んだんじゃなかった?』
勇者「……俺の唯一得意な魔法は雷魔法だ。
お前が俺をつくったんだろ?忘れたのか?」
魔王『はは! んなのもう覚えてねーよ』
魔王『そっか。僕が雷を放つと同時に、自分の体に雷を纏わせて電流を地面に受け流したってことね』
タンッ
魔王『でもやっぱり僕には勝てないよ』
勇者「そんなの――『やってみなけりゃ分かんない』だろ」
魔王『あはは……』
勇者「いくぞっ!」
――――――――――――――――――――――――――
226 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 22:40:07.42 ID:RsnkkEoCo
魔王『防御結界』
パキッ……!
魔王『これは、君には』
魔王『絶対に破れない』
ガキン
勇者「破ってやるよ」
勇者「それでお前を倒す!!」
勇者「偽物じゃない……本物のあいつがあっちで待ってんだよ!」
勇者「あいつの目を覚まさせてやんないといけないんだ!!」
勇者「ほんっと毎度毎度無茶しやがって!!起きたら絶対文句を言ってやらないと気が済まない」
勇者「……こんなものが何だって言うんだ!!!」グググ
勇者「ぶった斬ってやる!!どりゃああああああああああああっ」
ピキピキ……
勇者「っく……うおーーーーーっ!!」
バキッ!!
魔王『………………!』
――――――――――――――――――――――――――
227 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 22:50:25.70 ID:RsnkkEoCo
――――ドッ……
魔王『そっか』
魔王『じゃ、君の勝ちだ。おめでとう』
魔王『けっこうおもしろかったよ……』
魔王『さよなら』
ハラハラハラ……
勇者「こいつも……黒い水に……」
勇者「……終わったのか……」
――――――――――――――――――――――――――
228 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 22:51:17.62 ID:RsnkkEoCo
勇者「おいお前ら大丈夫か!?」
魔女「大丈夫じゃないよ、骨何本かイッてるよ」
魔女「おまけにお気に入りのブーツがこんなに泥だらけだよ……ショック」
竜人「生きてるだけで僥倖ですよ。みな無事です」
戦士「妖使いも忍も騎士も、気絶しているが生きている」
勇者「そっか……よかった。すぐ帰ろう。みんなも待ってると思うし」
勇者「これでもう影は出ない……」
勇者「世界が終わることもない」
勇者「やっと夜が終わって朝日が拝めるな」
――――――――――――――――――――――――――
229 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 22:55:31.90 ID:RsnkkEoCo
―――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――
ガチャ
少年「ふー……ただいま。起きてるか?」
少女「おきてるよ」
少女「おかえり。お兄ちゃん」
――――――――――――――――――――――――――
230 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 22:56:32.77 ID:RsnkkEoCo
少年「今日休みなんだけど、シスターのところ行ってみる?」
少女「いいの? いきたいっ」
少年「今日は風がそんなに冷たくないし、少しなら平気だろ」
少年「お前もずっとこの部屋にいたらつまんないよな?」
少女「そんなことないよ。でも外にでかけるのすき……」
少女「ちゃんとマスクしたよ。いこ……お兄ちゃん」
少年「マフラー忘れてる。……これでよし。行こうか」
少女「あ……草はえてる。草……なんていうしょくぶつ?」
少年「さあ。名前なんてないんじゃないか。偽物だよ」
少女「にせものでもきれいだね……あっ 石がある」
少女「石、もってかえってもいい?」
少年「石なんて持って帰ってどうすんだよ」
少女「かざる……」
少年「ええ? 飾ってもしょうがないだろ。ただの石っころだぞ」
少女「今日のきねん」
少年「なんだそれ……外なんて、病気治せばいつでもこれるよ。
そしたらもっときらきら光る石がある場所に連れてってやる」
少女「でも……この石はこの石できれいだよ」
少年「……ま、お前がいいならいいけどさ」
少女「うん」
――――――――――――――――――――――――――
231 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 23:03:30.96 ID:RsnkkEoCo
――――――――――――――――
―――――――――――
――――――
少年「シスター、また変なことやってたな」
少女「えくそしすとってなに?」
少年「悪いお化けをやっつける仕事……でも空想上の職業だよ」
少年「また頭のネジが一本抜けおちたな、ありゃ」
少女「でもシスター……やさしいよ」
少年「優しいけど変人だ」
少年「今日は咳でなかったな。よかった」
少年「毎日薬ちゃんと飲んでるからだ。苦いのにえらいぞ」
少女「にがくないよ」
少年「この調子なら、きっともうすぐ完治するな!」
少年「元気になったらまず何がしたい?どっか遊びに行こうか?」
少女「………………げんきになったら……お兄ちゃんといっしょにはたらきたいな」
少年「…………」
少年「……馬鹿、お前はそういうこと気にしなくていいんだ」
少女「でも」
少年「いいんだっ!!」
少年「……いいんだよ」
少年「さっ……帰ろう。もう暗くなるよ」
―――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――
232 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/28(水) 23:06:09.09 ID:RsnkkEoCo
* * *
魔王城
ちゅんちゅん……
魔王「…………」
魔王「……」パチ
魔王「…………」ムク
魔王「……」
ガシ
魔王「……?」
勇者「もういいよ」
魔王「……」
勇者「もう魔法はかけなくていい。朝のままでいいよ」
魔王「…………?」
勇者「全部終わったからさ。ゆっくり休めよ」
魔王「……」
魔王「いいの……」
勇者「いいよ」
魔王「…………うん……」
魔王「……」
魔王「ゆ……」
勇者「……ああ。ここにいるから」
勇者「おやすみ」
――――――――――――――――――――――――――
238 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 20:40:31.96 ID:LLwP8/i3o
パァ……
子ども「朝だ。朝だー!」
母親「ああ……ほんとね」
女主人「夜明け…… この目が痛い感じも久しぶりだわ」
女主人「……やれやれ」
仮面「なんとかやってくれたなぁ あいつら」
仮面「じゃっ俺は帰るかね」ギイ
仮面「うお、眩しいなこりゃ。やっぱ夜の方がいろいろと都合がいいや」
女主人「あんたまだ盗賊業やってんじゃないだろうね」
仮面「やってねーよ!!」
――――――――――――――――――――――――――
239 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 20:41:49.15 ID:LLwP8/i3o
一週間後
元神官「じゃあ、私は元いた村に戻って教師を続けます」
勇者「いろいろありがとな。また会おうぜ」
戦士「気をつけて帰れよ」
元神官「いろんなことがありましたが、3人で旅をしていたときのことを思い出して
ちょっとだけ楽しかったですよ」
元神官「……でも創世主って結局何者だったのでしょうね。
あんなことをした理由もいまだ謎のままですし……姿も見せませんでしたし」
戦士「さあな。地下のあの扉ももう消えてしまったし、確かめる術はないだろう」
勇者「ちょっと引っかかるけど、まあ終わりよければよしとしよう」
勇者「穴は開いたまんまだけど影はあれから出てこないし」
勇者「もう脅威は去っただろう」
元神官「そうですね。世の中の事象全部が全部明かされるわけではないですよね」
――――――――――――――――――――――――――
240 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 20:49:08.67 ID:LLwP8/i3o
* * *
騎士「陛下。各地の穴の埋め立て作業も、見たてによれば半年ほどで終了するようです」
国王「予算捻出だけが問題だよ。また今日も会議だ」
国王「まあ誰か落ちたら危ないしね」
国王「……君たちには本当に感謝してるよ。よくぞ世界を守ってくれた」
国王「褒美と感謝の品を今度渡そうと思うんだけど
とりあえず今は私からの男女平等キッスでいいかなぁ」
戦士「死んでも要りません」
騎士「右に同じ」
姫「お兄様?」
国王「冗談です」
国王「……消えた国民は……戻ってこなかったね。
そうであればいいと……心の底では思っていたんだが」
国王「彼らのためにも早く再建しなくては」
――――――――――――――――――――――――――
241 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 20:50:38.74 ID:LLwP8/i3o
* * *
魔王「……」
魔王「まかせきりになってしまってすまなかった」
魔王「そうか……終わったか」
魔女「あーんやっぱ本物の魔王様が一番」スリスリ
魔王「暑い」
勇者「お前も無事目が覚めてよかったよ」
勇者「……心配したんだからな!!」
魔王「すまなかった。十分寝たから、あと3日は徹夜で起きてられそうだ」
勇者「寝ろ」
魔王「それで結局、鍵はどこにあったのだ」
魔女「え?魔王様が教えてくれたじゃん?」
魔王「え?」
勇者「覚えてないのか? 一瞬だけ起きて、お前が教えてくれたんだぞ」
魔王「え……何だそれは。こわい……」
魔女「魔王城の七不思議だねー」
――――――――――――――――――――――――――
242 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 20:52:09.14 ID:LLwP8/i3o
魔女「鍵は『おかえり』だったんだよ」
魔王「ふーん……『おかえり』」
魔王「……」
勇者「どうかしたか」
魔王「眠っている間、長い夢を見ていた気がしたんだが……
なんの夢だったか忘れてしまった」
魔王「もやもやする」
勇者「あーそういうのあるある」
魔王「自分でやっていたとは言え、やはり夜より太陽の光の方が心地よいな」
魔王「いい天気だ」
忍「ですね!」スタッ
妖使い「いやあ一件落着で清々しい昼下がりですね」ガタン
勇者「うわっ お前らどっから現れた!」
妖使い「創世主無事倒せてよかったね。全く一時はどうなることかと思ったさ、あっはっは」
妖使い「で?契約する?」
魔王「もう問題は解決したのだから、ここにいる必要もないだろう。
君はいつ帰国するのだ。明日か?今日か?1時間後か?」
妖使い「どんだけ帰ってほしいんだよ、傷つくよ」
妖使い「ま、せっかく遠路はるばるこっちまで来たことだし、
留学生としてしばらく滞在しようかな!君たちの魔法もまだまだ興味あるしね」
魔王「えーっ……帰った方がいいと思うが……」
魔王「……本当は帰りたいのだろう? ん?」
妖使い「ちょっ 催眠魔法かけようとするのやめてえ」
忍「それはいいですね若。私もまだ勇者様に剣で勝ってませんし」チャキ
勇者「ほんとにもう帰れよお前ら!」
――――――――――――――――――――――――――
243 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 20:55:02.48 ID:LLwP8/i3o
魔女「まあまあまあ、妖使いもなかなかいいところあるんだから
あとちょーっとだけ置いてあげれば?ちょっとだけー」
勇者「なあ魔女……その手にあるのは何だ?」
妖使い「俺の差し入れ。一升瓶」
勇者「お前っ、あっさり買収されてんじゃねえよ」
魔女「今日は魔王様の快気祝いにぱーっと飲み会しようか!!
島の桜も咲いたし!!ね!!」
妖使い「へー こっちにも桜あるんだ。
いいね!いとをかし!花見酒としゃれこむかあ!」
魔女「わーい!ねっいいでしょ魔王様ーーー魔王様も行こうよーーー!!」
魔王「分かったから、魔女、もう少し声を低く……」
――――――――――――――――――――――――――
244 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 21:05:32.08 ID:LLwP8/i3o
竜人「魔女?中庭にいるんですか? 暇なら洗濯手伝ってくださいよ、もう」
竜人「あとそろそろ部屋片付けてください。虫でますよ……」
竜人「…………魔王様!?!?」
魔王「いや違う。幻覚だ。残像だ。まやかしだ」
竜人「なにを仰っているんですか!?何故外に出ているんです。
まだ横になっていないとだめじゃないですか!!」
竜人「また寝室を勝手に抜けだしてっ!!
それにそんな薄着で外に出て、また具合悪くなったらどうするんですかっ!!」
魔王「でも……もう平気だ。寝室にいてもつまらん。外にいたい」
竜人「だめです。ほら戻りますよ!!今度こそ許しませんからね」
魔女「あー。見つかっちゃったね魔王様。どんまい」
勇者「あはは、竜人に見つかったらもうだめだな。大人しく寝てろ。また今度な」
魔王「でもっ本当にもう平気だって……外に出ていいよって……言ってた……たぶん」
竜人「そんなの一体どこの誰が言ってたんです!!」
魔王「……それは……えっと…………勇者くんが」
勇者「えーー……?」
竜人「おどれか」
勇者「えーー……!?」
勇者「…………」
勇者「……」ダッ
竜人「待て」ダッ
――――――――――――――――――――――――――
245 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 21:07:34.27 ID:LLwP8/i3o
* * *
勇者(しばらくたって……何事もなかったように俺たちは日常に戻った)
勇者(あの穴は時の女神がいなくなったせいで発生した時空の歪みっつーことだったけど
あれから新しい穴は発見されてない)
勇者(時の神殿はなくなったままだけど……何とかなったのだろうか)
勇者「……考えても仕方ないか……神様の事情なんて分かんないし」
勇者「ん? あそこにいるのは妖使い」
エルフ「違うよやっぱあそこはキマイラ先生が言う通り……」スタスタ
ヴァンパイア「だからそっちが間違いなんだって僕は……」スタスタ
ドン!
妖使い「うお」
エルフ「ぶえっ!いてて……あ!すみません!」
ヴァンパイア「すみません!」
妖使い「ああいいよ別に。それよりこれ落としたよ」
エルフ「やべっ 大事な本なのに。ありがとうございます」
妖使い「魔術書読みながら歩くのもいいけど気をつけて」
ヴァンパイア「はい!」
エルフ「あの人だれだ?見かけない顔だな」
ヴァンパイア「東国から来たって人じゃなかったっけ?」
勇者(……)
勇者(あいつ、俺たちといないときは大分まともなんだな)
勇者(使い魔うんぬん言わないし……)
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246 : ◆TRhdaykzHI [saga]:2014/05/30(金) 21:22:49.89 ID:LLwP8/i3o
サキュバス「ふんふんふーん」スタスタ
サキュバス「……ああっ」グキ
サキュバス「いたぁっ!! うー……やっぱりこの靴だめだったわ……」
妖使い「平気?」
サキュバス「え……」
妖使い「立てるかい」
サキュバス「…………だ…………」
妖使い「へ?」
サキュバス「だれかーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
サキュバス「助けて襲われるケダモノーーーーーーーーーっ!!!」
妖使い「ええっ!?いや別にそんなつもりは毛頭」
サキュバス「ひいっ こっちこないでええっ」
妖使い「いやちょっと待って……あれ!?なにこれ」
シュルシュルシュル
妖使い「ちょっ離して」
魔王「貴様ぁ…………また性懲りもなく。魔族に手を出すなと言ったろうが」スタスタ
妖使い「誤解だって…………いってぇぇ!!!」ビタン
妖使い「ストップストップ話しっゴハ 合えばっイタッ わかるはずっ ブホエ」バチン
妖使い「あのさ一旦しゃべらせて?」
サキュバス「魔王ちゃん……!!」
サキュバス「……魔王ちゃあああん!この男の人がぁ……男の人がっ……
うえーん怖かったよーー」ギュッ
魔王「この下衆……」
妖使い「だから違うんだって、その子が勝手にさーー」
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